おとうさんたちの、うちのコじまん。 竹山ジャックと 糸井ブイヨン。 カンニング竹山 × 糸井重里

糸井

竹山さんは、お酒は飲まれますよね？

竹山

はい、好きですね。

糸井

竹山さんが酔っぱらって帰った時に、
ジャックが面倒なことをしたりはしませんか。

竹山

いや、犬がめんどくさいっていうよりも、
最近気づいたことがあります。
酔っぱらった人間にさわられるのが、
相当嫌だと思うんですよね。

僕が飲みに行って帰ってくると、
妻はいつもジャックと先に寝ているんですよ。
でも、僕もちょっと遊びたくなるから、
自分がいるリビングにジャックが来ると、
ちょっと遊んだりするんです。
でも、ジャックはすぐにまた、
妻のところへ寝に戻って行っちゃう。
最初はね、きっと眠いんだろうなあ、
ぐらいに思っていたんです。

糸井

はい。

竹山

酔っぱらいが嫌いなんだってわかったのは、
妻が飲みに行っている時です。
僕とジャックが先に寝ていると、
12時とか１時に妻が帰ってきて、
ガチャガチャって音がする。
一瞬ね、「帰って来た！」みたいな感じで
ワンワンって吠えて玄関に行くんですよ。
でも、妻の顔だけ見て確認したら、
すぐに僕の布団の中に戻ってきちゃう。

妻も犬に会いたいから、寝室に来て
「ジャックはいないの？」とか言うんです。
「布団にもぐっちゃってるから」って言うと、
妻は布団をめくって犬にさわろうとする。
でも、そうするとジャックは、
僕の足に、グッとしがみつくようにして唸るんです。
妻がお酒を飲んで帰って来た時にだけ、
布団に潜り込むんだよなって思っていましたが、
犬は嗅覚がすごいから、相当クサイと思うんですよ。

糸井

アルコールは敵ですね。

竹山

人間が犬をかわいがる時に、
「よーしよーし」ってやりますよね。
僕たち人間だって、
酔っぱらったおじさんとか、おばさんに、
「よーし」ってやられたら、たまらないですよ。
犬からしたら、これの何百倍というニオイだから、
自分がいくら信頼しているふたりだとしても、
嫌でたまらないと思うんです。
それも、やっと寝だしたという時に‥‥。
だから、酔っぱらった人間のことが、
すっごく嫌いだと思うんですよね。

糸井

その家独自の発見がありますよね。
竹山さんちのワンちゃんは、
どちらと寝るかは決まっているんですか。

竹山

うちは寝室にベッドがふたつ並んでいるので、
両方に行けるんですけど、
夜は僕のところで寝はじめるんですけど、
朝起きると、妻のベッドで寝ていますね。
ただ、これがかわいいことに、
僕が２、３日の間、家を開けて帰ってくると、
朝起きた時にね、
ジャックが僕のベッドで寝ているんです。

糸井

ああ、かわいいねえ。
竹山さんが「俺のところへおいで」
ということもあるでしょう？
その時は、すぐに来てくれますか。

竹山

ええ、来てくれますね。
でも、僕が寝静まったら、
妻のところへ行っちゃいますけどね。

糸井

うちも長いこと、竹山さんちと同じでしたけど、
最近は、僕のベッドで寝てますよ。
うちの奥さんは、寝ている時に
誰かが隣にいるのが嫌みたいで。
とにかく自由に寝たいから、
横に誰かがいると、寝苦しいんだそうです。

竹山

そうなんですか。

糸井

おかあさんは嫌がるけど、
おとうさんは嫌がらないんだから、
僕は、こっちにおいでって連れてくるけど、
起きてみたら、おかあさんのベッドにいる。
それはもう、しょうがないと思っていました。
ところが最近は、
おかあさんのベッドに行こうとするけど、
未練がましく見ているんですよね。
それから、僕のところへ来る。

竹山

女性と寝たほうが、
母のぬくもりみたいなのがあるんですかね。
昔、実家でマルチーズを飼っていた時も、
やっぱり母と寝ていましたね。
父のベッドでは、あまり寝ていませんでした。

糸井

そうか。おかあさんっていう動物なんだ。
おとうさんは出かけて行く人だしね。
家にいるということからしたら、
おかあさんのところにいても、おかしくない。

竹山

そうですね。

糸井

竹山さんの家のワンちゃんは、
テレビを見たりはしませんか。

竹山

いやあ、テレビはそんなに見ませんね。
僕が出ているテレビを見せて、
僕がしゃべっているところを見せてみても、
いまいち、ピンとこなかったみたいです。
妻も同じことを、
僕がいない時にやってみたらしいんです。
それでもやっぱり、ピンとこなかった。

糸井

うちのコは、ものすごくテレビが好きなんです。
僕がソファで寝ていると乗っかってきて、
いっしょにテレビを見ることがあります。
子犬の頃から12歳ぐらいまでは、
ずっとテレビを気にしていましたね。
テレビの前に人が立っていたりすると、
「テレビが見れない！」という仕草をするぐらい。
僕は、犬が何をしていたかわかったんです。
ブイヨンは、見張りをしていたんです。

竹山

見張り？

糸井

つまり、テレビが窓なんです。

竹山

ああー、なるほど。
はい、はい、はい。

糸井

どうも、窓の向こう側で
いろんなヤツがうろうろしている。
家になんか悪いことしないだろうな、
と思って見張ってくれている。

竹山

ああ、そういうことですか。

糸井

馬とか犬とか、羊とか猿とか、
動物が出るとパーッと走って行って、
ワンワンワンワンワンって吠える。
大河ドラマの『新選組！』には、
犬が新選組の格好をして、
ゆかりの地を訪ねるコーナーがありましたが、
それにすらワンワンワンって怒っていました。
さらにすごい時には、
犬が出てくるコマーシャルがわかっていて、
そのコマーシャルの音楽が鳴ったら、
もうテレビの前で待機してました。

竹山

あはは。敵を覚えているんですね。
でも、ソフトバンクのコマーシャルには
奥さまも、犬も出てきますけど。

糸井

もちろん吠えてましたよ。
テレビに出てくる人間が、
おかあさんだろうが、おとうさんだろうが、
あんまり興味がないみたいです。
だから、喜んで行くことはないです。
でも、そんなにテレビを気にしていたのに、
もうプッツリと、テレビを見なくなった。
最近はボールを追いかけることもしなくなったし、
猟犬として、引退したんですよ。
テレビにしてもボールにしても、
「来たらやっつけてやれ」みたいなものは、
猟犬として磨かれてきた本能なんだと思います。
きっと、定年を迎えたんじゃないですかね。

竹山

自分の中で、体力の限界だと悟って。

糸井

「ボールか、懐かしいなあ‥‥。おしまい」
みたいな感じですね。

（つづきます）

2017-12-08-FRI