おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1119
事実の花が咲く時

何も知らない人が、
見てきたように話を作ってふれまわる、
聞いた人は無抵抗に信じる、

SNSを開くと、そんな光景に出くわす。

「見てないのに、よく断言できるなあ」

と、私は思っていた、でもまてよ!

「見てないからこそ、断言できるのだ。」

ほんの小さなことでも、
「自分で調べよう」となったら、
とたんに複雑で、わからなくなる。

先日、私は、LANケーブルを買い替えようとした。

いつもなら、有識者のおすすめとか、
人気ランキングとか、口コミとか、
数多く漁って最適解を出す、けどそれって、

「この人がこう言ってるから信じる」
「みんな言ってるから信じる」

で判断してるってこと。
今回は、自分で調べて自分で考えようと、
「カテゴリとは何か」「UTPとSTPのちがいは」
みたいなとこから、いちから自分で調べて行った。

恐ろしく「非効率」だ。

その方面の知識のベースがごっそり無いから、
1つ新事実が出てくると、小舟のように揺れる、
くつがえされる。

有識者のウケウリなら自信満々で語れても、
自分で得た知識じゃ、簡単には、ものが言えなくなる。

まるまる半日かけて、へとへとになって、
いちおう基礎は語れるようになったが、
詳しい人に話せば一笑にふされるていどの
ちっぽけな知識に過ぎなかった。

SNSの噂もそう。

「詳しそうなこの人がこう言ってるから信じる」
「みんな言ってるから信じる」
で判断する人の、なんとスピーディなことか。

それに比べて、

ちょっとでも自分で、事実を調べようとしたら、
複雑で、判断が揺れ、新事実1つで覆され、
カンタンには、ものが言えなくなる。

現場にいて、事実を目撃した人でさえ、
解釈が分かれたり、揺れたりする。

にもかかわらず、
その場にいない、見てない、調べてない、
なんの関係もない人が、
なぜ、確信を持って断言できるのか?

それは、

「ストーリーを紡ぐ」からだ。

人は、「わからない=空白」に耐えられないから、
空白を埋めようとして、詮索、憶測、噂をする。

例えば、「部長は、どうしてあんな
優秀なAさんを、異動させたのか?」

「Aさんが何か、やらかしたんじゃないか」
というように。

けど、断片断片の憶測をいくら寄せ集めても、
それは核心には至らないし、

「空白」は埋まらない。

そんな時、その場にいない、見てない、調べてない、
なんの関係もないのに、
確信を持って断言する人が出てくることがある。

「ストーリーを紡ぐ人」だ。

核心のない憶測の断片でも、
断片と断片をつなげば、ストーリー(=物語)になる。

人間は、ストーリーに弱い生き物だ。

ストーリーにされると、
するすると信じてしまう。

いったんはまると抜けだせない。

憶測の一つ一つは土でこねた団子のように脆くても、
つないで線になり、面になり、ストーリーにしたものは、

「鋼の先入観」

となる。

「部長とAさんは、同じ大学の同じ部活。
だから部長は当時からAさんに嫉妬していた。
それで左遷したんだ」、

例えば、そんなちゃっちい物語でも、
嫉妬という先入観がストーリーとともに、
いったん入ってしまうと、
集団は、「あの時のあれも」「これもそうか」、と、

先入観で過去から現在のあれこれを検索しては、
さらにさらに、ストーリーを太くする。

自分で調べてみた人が、いくら、
「部長とAさんは8歳差で、
大学時代、すれ違ってもいない。
おなじスポーツと言っても、
同好会を2年で辞めた部長と、
正式部活で全国大会に行ったAさんとは、
意識に大きなちがいがある」、と知っても、
集団心理の渦の中で、
「部長をかばうのか」と飛び火が来そうで、
なかなか声をあげられない。

こうした誤ったストーリーを貼り付けられた人は、
どうすればいいのだろうか?

私も、人から見ればささやかだが、
まったく身に覚えのないストーリーを貼られ、
苦しんでいる。

先日、

オンラインミーティングを終えようとした時、
クライアントの企業のご担当が、

「ズーニー先生に教わったことで、
ずーっと覚えていることがあります」

と切り出した。その担当者は、私が、大学で、
十年以上前に教えた、教え子だった。

教え子が立派になって、社会で活躍している。

それだけでも涙が出るほど嬉しいのに、
さらに、その方は、私が授業で言った
「言葉は氷山である」という話を覚えていた。

言葉になっているのは、
氷山にたとえると、水上に見えるほんの一角。

水面下には、何倍も大きな、
まだ言葉になっていないその人の想いがある。

その方は、その話をずーっと、
十何年と覚えていて、
その後の人生で、仕事で、人と向き合う時、

「この人の中には、
まだまだ言葉になっていない想いがある」
と、何度も何度も繰り返し思い出して、
いまも、接しているのだと言った。

自分の仕事が、ささやかでも一つ、
学生の中で生きて、羽ばたいている。

こんなに教師冥利につきることはない、
と思った瞬間、私の脳裏に、

小さな白い花を満開に咲かせた木々が、
いちめんに広がる風景が浮かんだ。

「事実の花」

と、思ったとたん、
深い感動がわきあがった。

いくら憶測と憶測をつないで、
黒いストーリーを紡ぐ人がいたとしても、
やっぱり「事実」が強い、事実には勝てない。

自分のことを、現実に、日々、
事実として、正しく見ている人はいるし、
それは年月の中でコツコツと積みあがっている。

点と点が線というより、それはもう、「歴史」だ。

この卒業生の大学一つをとっても、
1年で140人、20年で2800人の学生が、
コツコツコツ、と、私の仕事や、
正直な人柄を目撃している。

そういう人の中に、
私と出逢った意味がささやかでも
なにか一つ、生き続けて実を結んだなら、

「事実の花」

それは、その人の中で、
まぎれもなく現在進行形の事実だ。

そういう事実が、一つ、また一つ、と
歴史の中で花を咲かせ、
一人、また一人、と増えて、
いつか、あたりいちめん、
白い事実の花が広がれば、

鋼の先入観も溶けていくんじゃないか。

理屈で説得できなくとも、
そんな伝え方もある!

「あきらめてはいけない」

と私は思う。

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【満席御礼!】おかげさまで「表現クラス」は
満席でスタートしました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

●申し込めなかった皆さま、
キャンセル待ちに登録してくださった皆さま、
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お申込みは→こちら
お問い合せはすべて宣伝会議へお願いします。
(電話03-3475-3030 山田ズーニークラス担当者まで)
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お申込みは→こちら

お問い合せは→金城学院大学 入試広報部
TEL:0120-331791


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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
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宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
つけたりできる場を提供したい。」
という志に共感しました。
2時間×12コマで、
文章表現の本格的な基礎づくりから始まって、
相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
さらに、自分にしか書けない主題を発見して書く!
までを責任を持ってサポートします。
ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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