Lesson1120
生成AIには決してできないこと
2025-03-26
自分が、いくら生成AIに頼んでも、
決してできないこと、それは、
「自分に問う」
ことだ。2025年1月、
私の今学期最後の授業の日、
約140名の学生が、4週にわたって、
発表してきて、その大トリ、
ひとりの女子学生が、
いま最も伝えたいことを文章にして発表した。
そこには、
まわりの学生たちが、生成AIに答えを委ね、
自ら考えることを放棄して、
楽な道を歩んでいることへの
強い拒否感が示されていた。
「とうとう恐れていたことが現実になった!」
と私は思った。
私は、この大学で20年近く表現の授業をし、
学生たちの心の叫びのような本心を聴いてきた。
学生たちは頭がよく、
インターネットやITに堪能、
生成AIも早くから使いこなしていた。
去年まで、学生たちは、
生成AIを肯定的に語ってきた。
それが2025年1月、初めて、
学生の表現に、「考えることを放棄」
「答えを委ね」「楽な道」と、
生成AIの負の側面が、ありありと登場した。
来年は、この傾向がもっと進んでいるだろう。
この流れは止められないだろう。
考える力・書く力の教育をずっとやってきた私は、
「いま伝えなければ!」という強い使命感にかられた。
生成AIに、
「山田ズーニーになって、
“おとなの小論文教室。”を書いてください」
と頼めば、するすると、
もっともらしいコラムが一本出てくる。
でも、私は、瞬時に嗅ぎ分ける。
「こんなの、ぜんぜん、私ではない。」
なぜ、嗅ぎ分けられるか、というと、
きょうで1120回、24年間、週1回、
毎回、毎回、自分の頭で考え、
自分の心底の想いを正直に書いてきたからだ。
私の文章と、そうでないものは、わかる!
ところが、自分の経験が浅い分野だと、
とたんに嗅覚は鈍る。
昨年暮れに、家族旅行を考えていた。
けど、コロナ以降、すっかり出不精に
なってしまった私には、
行きたいところ1つ浮かばない。
そこで、生成AIに、
旅行プランナーになってもらい、
県名や予算、人数、目的などを告げると、
瞬時に、プランをいくつもあげてくれる。
「1泊2日の観光日程表をつくって」
と頼むと、もっともらしいものがすぐ出てくる。
「これでいいじゃないか、
これが私の行きたいところなのかも」
と思う。けど、なんだろう、なんかちょっと、
ズレがあるようでモヤッとする。
で、次また1つAIが提案をしてくれると、
「これが私の行きたいところかも、
さっきより条件もいいし」
と思う。けど、なんかモヤッとする。
これを繰り返していくと、疲れてきて、
「もう、これが私の行きたいとこ、
で、いいじゃないか、
比較してもいちばん条件いいし」
と、心の底の違和感にフタをして、
AIの答えを自分の答えにしようとする
安直な自分がいた。
ゾッとして、やめた。
結局、その時は、
母の体力を考えて、
「自分は、家族とどう過ごしたいのか?」
そして、自分の人生で、
これまで旅したところを振り返り、
「自分は、家族とどこに行きたいか?」
自分に問い、納得感ある旅になった。
母も、おどろくほど歓びまくってくれた。
ゾッとしたのは、あの時、
人類の行く末を垣間見たからだ。
まだ、ろくに、自分の心底の想いを
文章に書き表したことがない人が、
いきなり、生成AIのこしらえた
もっともらしい文章に出くわす。
「もしかしたら、自分が書きたかったことは、
これかも?」
ちょっとずつ、ちょっとずつ、
違和感にフタをして、すりかえていって、
しまいには、AIが書いた文章を
自分が書きたかった文章のように思い込む。
「自分に問う」
を本気でやろうとしたら、
とたんに不安になる。
なかなか正解は出ないし、
自分で答えを出せば、
全責任が自分にふりかかる、恐い。
なにより面倒くさいし、タイパも悪い。
だから、この先、
自分に問うことをしないで、
AIの答えに委ねようとする人も、
どんどん増えていくだろう。
せめて1度でもいい、
自分の頭で納得いくまで考えて、
ほんとうに書きたいことを
自分の腹から導き出し、
文章に書き表して、
人と心底通じ合った原体験があれば、
その人は、書きたいことを、やすやすと、
AIには委ねない。
今年1月に東京表参道で始めた
社会人を対象とした、
「表現力専門コース山田ズーニークラス」の、
ねらいもそこで、想像以上の手ごたえを
実感している。
この3月、
私は、都立高校で、
高校1年生全員に向けて、探究学習の
2000字の論文の書き方の講演をした。
テーマから自分の心が向く問いを立てる技法や、
ストラクチャーを組む技法、
それを2000字に書く技法も、
高1生たちは、恐るべき集中力で聴いてくれた。
なかでもとりわけ、
「自分の頭で考える=自分に問う技法」
のところは、高校生たち、物音ひとつ立てず、
しーんと、目をキラキラさせて聴きいった。
より深く考えるための問い、
「何のために書くのか?」
「大事な点は何か?」
「本当にそうなのか?」
「別の見方はないか?」
「どういう流れでそうなった?」
「どんな関係があるか?」
「つまり、どういうことか?」
と、私が投げかけると、
生徒たち一人一人に、ものすごく響いている
手ごたえを感じた。
「この子たちは、小学校でも、中学校でも、
授業で“自分の頭で考える”ことをしてきている。
だから反応がいいんです」
と、先生がいった。
私が小論文編集者として、
高校生の「考える力」の教育に漕ぎ出した時は、
学校教育では、まだまだ絵に描いた餅だった。
それが、ここへきてやっと、時代の波が来て、
考える力の教育が、実践されつつある。
学校現場の「考える力の育成」がうまくいって、
自分の頭で考え、生成AIをうまくつかいこなす
若者がこれから増えていくか?
自分で考えた文章を一度も書かないうちに、
生成AIを手にしてしまい、
AIのもっともらしい、ズレがあるけど、
まっいいか、の答えを選び続け、
考える筋肉がやせ衰え、いざという時、もう、
自分の頭で考えられない若者が増えていくか?
いま、私たちは、
ほんとうに時代の岐路に立っている。
生成AIと共に生きるには、
「自分に問う」をしつづけなければならない。
「自分が本当に伝えたいことは何か?」
「自分は何がひっかかってるのか?」
「本当に自分はこれでいいのか?」
「で、結局、自分はどうしたいのか?」
「いま、自分は、どうありたいか?」
おこたらず、あきらめず、習慣づけて、
自分に問い続けていこう! と私は思う。
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【満席御礼!】おかげさまで「表現クラス」は
満席でスタートしました。
たくさんのお申込みありがとうございました。
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キャンセル待ちに登録してくださった皆さま、
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お申込みは→こちらへ
お問い合せはすべて宣伝会議へお願いします。
(電話03-3475-3030 山田ズーニークラス担当者まで)
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お問い合せは→金城学院大学 入試広報部
TEL:0120-331791
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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
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postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
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電話:076-445-3337(平日9:00〜17:00)「とやま就活」まで
【満員御礼!】この講座は満席になりました。
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たくさんのお申込みありがとうございました。
宣伝会議 表現力養成コース
編集・ライター養成講座20周年記念講座
山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く
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人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!
ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!
録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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