怪・その1

「深夜の電話」



20代の頃、毎晩のように入り浸っていた
飲み屋さんの女将さんから聞いたお話しです。

そこの店舗を設計してくれた、
秋山さん、という方が亡くなられ訃報を受けました。

そういえば最後に会った時、確かに元気がなかったなあ、
という印象があったそうです。
そして、当時の秋山さんのことを
もう少し気にかけてあげたら良かったなあ、
という気持ちになったそうです。

程なくして、ある晩、お店を締めて深夜2時くらい、
一人でお店に残っていると、
なんだかわからないけれど、
ものすごく嫌な感情に襲われて、
同時に誰かいるような怖さを感じたそうです。

直感的に、
これは一人でいてはまずい、と感じて、
深夜2時でも起きていそうな友人に、
携帯電話から電話をかけたそうです。

友人と電話が繋がり、最初は普通に話していましたが、
だんだん混線してきて、
声が聞こえづらくなってきたと思ったら、

友人の声が、機械のような、
宇宙人のような抑揚のないトーンになっていき

「もしもし、yさん(女将さんの名前)ですか?

秋山です」

と聞こえてきて、
怖くなってすぐに電話を切ったそうです。

その後はお店からすぐ出て、近所のコンビニに入って、
明るくなるまでそこにいたそうです。

後日、電話相手の友人は、
yさんの声がただ聞こえなくなっただけで、
秋山さんの声は聞こえなかった、ということでした。

それとは別の、秋山さんを知る
共通の友人の携帯電話に同じ時刻、
着信履歴に秋山さんの名前があったそうです。

けれど、その友人の方はぐっすり眠っていて、
電話があったことも気づかなかった、と。

起きていたら、話したかったなあ、
と呑気に言っていたとのことでしたが、
女将さんは、もう怖いからやめて欲しいと思ったそうです。

その後、特に秋山さんからは電話はないそうです。

(t)

こわいね!
Fearbookのランキングを見る
2024-08-01-THU