怪・その20
「お盆の海」
お盆が来ると思い出す話があります。
大学生の時に付き合っていた彼は、
当時ヨット部に入っていて、
2人乗りのヨットに乗っていました。
当然夏は合宿やら試合やらで、
ずっと海の近くにいました。
そんな離れ離れの夏でしたが、
合宿から真っ黒になって戻って来た時、
旧盆に練習した時の話を、
ボソボソと話しにくそうに話してくれました。
お盆の日も普段通りヨットの準備をしていたら、
通りかかった漁師のおじいさんに、
今日はやめろと言われたそうです。
でも試合も近いし、
気にせず数廷のヨットで沖に出ると、
波は穏やかだったのに、
突然先輩のヨットが転覆しました。
しばらくすると、海に落ちた先輩が、
真っ青な顔をして彼のヨットにしがみついてきたそうです。
その様子があまりにも異様だったので
急いで引き上げると、
体をガタガタ震わせて泣いているので、
とりあえず岸に引き返して話を聞きました。
海に脱げ出された時、自分の足元の海底を、
防空頭巾を被った小さな子供たちが
2列に並んで静かに歩いていたそうです。
お盆は海に入ってはだめというのは
本当だったんですね。
その日はすぐに練習をやめて、
合宿場のおじさんに教えてもらったお寺で
お経をあげてもらったそうです。
(眞)