怪・その27

「向かった先は壁」



僕がとある島の民宿で、
1か月間お手伝いをしていたときに
体験したお話です。

主な仕事は清掃や客室の整頓。
お仕事が終わった後にはご飯をご馳走になったり、
お風呂を使わせていただいたりと、
島での生活を体験していました。

そんなある日、
清掃が終わり、ご飯も済ませ、
お風呂に入っていた時のこと。

お風呂といっても
公衆浴場や温泉のように
大勢の人で入るわけではなく、
家のお風呂のような、
脱衣所と浴槽があるタイプ。

なので、誰かが入ると
脱衣所の内側から鍵を閉めてしまうので、
他の人は入れなくなります。

脱衣所の電気は消したままで、
浴槽の中の電気をつけて、入っていました。
頭と体を洗い終わったので、
浴槽からでようと扉に手をかけたとき、

足首より下、
右から左に白いシルエットが
歩いて行くのが見えました。

扉はすりガラスのようになっているので
ハッキリとは見えませんが、
誰かが通ったらシルエットくらいは見えます。
鍵を閉め忘れたから
誰かが入ってきてしまったんだ、と思い、

「すいません! 入ってます!」
と声をかけ、すぐに出ました。

しかし、そこには誰もいません。

脱衣所の扉も
内側からしっかり鍵が閉まっています。

それに、
足が向かっていった先は壁。
通り抜けることはできません。

このことを民宿の関係者にお話ししたところ、

「お父さんじゃない?」

という話になりました。

数年前に亡くなった、民宿のご主人。
もしかすると、いまだに民宿のことを
心配してくれているのかもしれません。

(a)

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2024-08-20-TUE