はじめに |
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まず、オーブンをあたためておきます。 |
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170℃でしたよね。 |
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そうですね、170℃。 |
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(セットする)はい、セットいたしました。 |
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ありがとうございます。
最初にちょっとだけ
お話をしたいのですが、よろしいでしょうか。 |
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もちろんです、
いつものワークショップのようにお願いします。 |
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はい。
わたしのクッキーの作り方は、
「手で作る」というのが大きなポイントなんです。
ふつうのバターを使ったクッキーは、
ゴムべらや、泡だて器などを使いますが、
わたしの場合、道具はあまりなくて、
ほとんどを手でつくります。
なぜ手で作るかというと、
上達が早くなるからです。
触ることによって生地の感触を
たしかめることができる。
昨日と今日の生地のちがいとか、
そういうことが手でわかるようになるんです。
ですからぜひ、
わたしのクッキーは
手で作ってほしいなぁと思います。 |
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それと、
クッキーを作るときは、
とにかくからだの力を抜くのが大事です。
力が入ると、
生地がギュッとかたくなるんですよ。
パンをつくるような場合は
力を入れてこねることで
グルテンを出すんですが、
このクッキーは薄力粉で作っていて
さくさくに仕上げたいので、
なるべく力を入れないようにします。
最初のうちは慣れないと、
どうしてもいっぱい触りたくなるし
力も入るんですね。
そうすると、かたくなったり色が悪くなります。
触れば触るほど、
クッキーの色は悪くなるんです。 |
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お寿司みたいですね。 |
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ほんとだ。
いい職人はネタを触りすぎない。 |
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そうですね(笑)、
クッキーも、上手な人ほど触らないです。
触れる回数がすくない。
陶芸家さんも、
やっぱり同じようなことをおっしゃってました。
「ちょこちょこ触ってると
どんどんだめになっていく」って。 |
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なるほどー。 |
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なるべくすくない手数で
力を抜いて作ってあげることで、
さくさくのやわらかいクッキーになります。
だからまずは、
とにかく肩の力を抜いてください。 |
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‥‥おもしろい。
そんなこと、ぜんぜん考えてなかったね。 |
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なるべく触らないなんて、思いもしなかった。 |
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「力を入れない」と
「触りすぎない」は、二大原則ですね。 |
生地作り(材料をまぜる) |
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実はきょう、
粉類、黒ごま、砂糖と塩は、
あらかじめ計量して持ってきたんです。
それを、ボウルに入れますね。 |
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なるほど、そこにもう、ぜんぶ入っている。 |
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はい。
みなさんがつくる場合は、
薄力粉、全粒粉、塩、きび砂糖、
そして黒ごまを
それぞれ計量しながら
こうしてボウルに入れるわけです。 |
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はい。 |
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計りたてのボウルの中の粉は、
ギュッとかたまっています。
かたまったままだと、
材料がなじみにくいので、
まずはこれを手で、よく混ぜてあげます。
お米をとぐようなイメージで、
手をこういうふうに猫の手にして。 |
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にゃー。 |
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そうですね(笑)、にゃー、ですね。
猫の手にして、こうやって、
ぐるぐるー、ぐるぐるーっと混ぜます。 |
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やさしく触ってますね。 |
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猫の手でやさしく、
ぐるぐるーっと混ぜていると、
かたかった粉が、
ほわっと軽くなるんです。 |
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ほわっと‥‥。
感覚でわかるんですか。 |
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わかります、わかるはずです、
ほわっとやわらかくなるのが。
やわらかくなった粉には、
これから入れる油と水が、
スッと入りやすくなるんです。 |
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受け入れ態勢ができる。 |
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軽く、くるくるーっと
混ぜるだけでいいんです。
粉をふるいにかける必要がないのも、
わたしのつくりかたのポイントです。 |
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ラクですよねー。 |
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ここで混ぜるときからもう、
触りすぎない方がいいんですか? |
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この段階ではまだ比較的大丈夫です。
ただ、そうですね、
あまりに混ぜすぎると、
粉自体が熱を持って
グルテンが出やすくなるので、
やっぱりこれも、すみやかに。 |
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すみやかに、ほわっと。 |
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そう(笑)、すみやかに、ほわっと。 |
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生地作り(油を入れる) |
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ほわっとしたら、次に油を入れます。
計量スプーンには
いろいろなタイプがありますけど、
こういう深さがあるスプーンが
わたしは計りやすいと思います。 |
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これで油を大さじ2杯。
この2杯を、しっかり守ってほしいんです。
きっちり一杯。
油を器に入れてから、計ると確かですね。 |
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ぴっちりと大さじ1杯。 |
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計ったら、ボウルに入れます。
粉の真ん中あたりに入れてください。 |
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スプーンに残っている油。
これも大事な分量の一部なので、
指でしっかりとこそげとって入れます。 |
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ここポイントですよね、太字にします。
スプーンに残った油は、
こそげとって入れる。 |
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油は大切なおいしさなので。
大さじ2杯をこうやってしっかり2杯、
入れてあげてください。 |
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油は大切に。 |
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そうしましたら手早く、
この油と粉をなじませていきます。
ここがしっかりできていると、
さくさくになるんですよ。 |
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油と粉がなじむと、さくさくになる。 |
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さっきみたいに、
お米をとぐように、力を入れずに混ぜますね。 |
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猫の手で? |
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はい、猫の手で。 |
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にゃーー。 |
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そうですね(笑)、にゃーですね、
ぐるぐるーっと全体を大きく混ぜます。 |
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油はボウルの、真ん中の底にたまりやすいので、
気をつけて混ぜてあげます。 |
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こんなふうに指がべたべたになったら、
ひとまず指についたのをとって
ボウルに入れます。 |
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こういうべたべたは、
さらなるべたべたをどんどん生んでいくので、
とってあげたほうがいいです。 |
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こうやって混ぜると、「そぼろ」というか、
かたまりができてくるのがわかります? |
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ありますね、そぼろが。 |
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白っぽいところと、
黄色っぽい部分があるのを
よく見ておいてくださいね。
(*太白胡麻油だと黄色くはなりませんが、
同様にしめったような色になります) |
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黄色いのが油の部分。 |
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はい、この黄色いそぼろを、
両手でほぐしてあげるようにして
すりまぜていきます。
ここも手早さが必要ですよ。 |
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両手ですくって、
やさしく、ほぐすように‥‥ |
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すりあわせて、下に落とします。
力は入れません。
力をいれてこすると逆に
かたまりがどんどんできてしまいます。
ふわっとすくって‥‥ |
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やさしく両手で、ほぐす。 |
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そうすると、
さっき白っぽいところがあった粉が、
全体に黄色っぽくなっているのがわかります? |
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うんうん。 |
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黄色い、黄色い。 |
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この色が、油が粉に
ちゃんと入った証拠なんです。 |
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なかしまさんは今、
かなり手際よくほぐしましたが、
この両手ですりまぜる時間は
何秒くらいやればいいんでしょう? |
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目安としては10秒くらいですが、
それはあくまでも目安なんです。
大切なのは、粉全体に油を行きわたらせること。
全体が黄色っぽくなるまで、
手早くそぼろをほぐすことが大事です。 |
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手早く、ササッと、全体が黄色くなるまで。 |
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そうなったら、ここはもうOKです。
次のステップまではこれ以上、触りません。 |
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「触りすぎない」の原則。 |
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全体に油がいきわたっていれば、
すこしくらい、
かたまりのつぶが残ってても大丈夫です。 |
生地作り(水を入れる) |
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そうしましたら、ここに水を入れていきます。 |
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あ、お水でいいんですか。 |
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本のレシピには、
豆乳と書いてあったのでそうしたんですけど。 |
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はい、豆乳だと味によりコクが出たり、
よりパリっとしあがりますが、
お水でもぜんぜん大丈夫です、
おいしく焼けますので。 |
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なるほど、なるほど。 |
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お水の入れ方ですが、
1箇所に入れずに、かならず、
全体に振り入れるように入れます。
お水って、粉がすぐに
ギュッと吸い込んでしまうんですね。
なので1箇所に入れると、
分量の水では
まとまらなくなってしまうことがあります。 |
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何も考えずに入れてたかも‥‥。 |
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では、全体にまぶすように、
水を入れますね。 |
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きょうは大さじで2だとちょっと多いので、
1.5入れます(入れる)。
そしたらここは、とくに手早く。
すぐ混ぜます。
やはりお米をとぐように‥‥ |
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にゃー。 |
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にゃーです(笑)。
猫の手で、ぐるぐるぐるーっと混ぜます。 |
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するともう、すぐに、
生地がまとまってきます。 |
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このくらいにまとまったら、もうOK。 |
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あとはボウルをこう、
生地で軽くこすってお掃除してあげましょう。 |
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そうすることで、
生地がまたひとつにまとまるので、
おそうじ分もこみで‥‥はい、できあがり。 |
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え? |
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これでもう、いいんです。
生地が完成。 |
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これでいいんですか。 |
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水を入れてから、10数秒? |
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ええ。
でもやっぱり時間は目安で、
手早くまとめたら完成ということです。
で、これ以上は触らない。 |
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ぼくが作ったときは、
もーっといじってました。 |
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わたしも、だーいぶいじってた。 |
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これが、ちょうどいい生地のかたさです。
ちょっと指で押してみてください。 |
一同 |
‥‥はい。 |
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一同 |
ああーーー。 |
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やわらかさとしては
自分のほっぺたくらいの
やわらかさを目安にまとめます。 |
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わたしのは、もっとかたかったかも。
豆乳の量がすくなかったのかな? |
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あの‥‥なかしまさんはさきほど、
「きょうは大さじ2だと多いので1.5入れる」
とおっしゃいましたが‥‥
たしか本のレシピには、
豆乳・大さじ2と書いてありましたよね。 |
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そうですね、本ではそうしました。 |
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きょうはなぜ、水をすくなくしたのでしょう? |
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まず、水の適量は、
その日の天候、湿度、粉の種類で前後します。
冬は乾燥しているから多めに、とか、
梅雨の湿気が多いときはすくなめに、とか。 |
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なるほど。 |
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それと、
レシピブックの大さじ2という水の量は、
あえてすこし多めに書いている数字なんです。 |
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へええー、そうなんですか。 |
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慣れないときには、
粉に油をすりまぜるところが
うまくいってないケースが多くって、
そこがうまくいってないと
水を多めにしないと生地がまとまらないんですよ。
実際、「生地がまとまらない」
とおっしゃる方は、
すりまぜが足りてない場合が圧倒的に多いです。
で、水を多く入れるので固く焼き上がるという。 |
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つまり、この生地は、
粉にしっかり油が入っているから
適量の水でまとまったんですね。 |
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そういうことです。
水の量については、
何度か繰り返して作るとわかってくると思います。
手で作っているので、
感触で「あ、これくらい」と。 |
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自分のほっぺたくらい。 |
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そう(笑)。 |
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なるほどー。
手で作ると上達しやすいというのは、
こういうことなんですねぇ。 |
成形する |
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完成した生地を、今度は伸ばしていきます。 |
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オーブンシートの上で。 |
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オーブンの天板の大きさに合わせて
あらかじめ切っておいたオーブンシートです。 |
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なかしま先生のクッキーは、
生地を寝かさないんですよね。 |
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そうなんです。
植物性の油の生地は、すぐに焼かないと、
油が表面にしみだして色や風味が悪くなるんです。
ですから、
食べたいときに生地をつくるのが
ひとつのコツですね。 |
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寝かさなくていいのも、ラクなのよねー。 |
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それでは伸ばします。
だいたい4ミリの厚さまで伸ばしていきます。 |
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力を入れすぎないように。
ここで力が必要な生地は、
あまりいい生地じゃないんです。 |
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伸ばした形は丸になっても、
四角になっても大丈夫なので、
気にしないでスーッと伸ばしてあげます。 |
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向きを変えてあげて‥‥。 |
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きちんと水分と油分が入った生地は、
力を入れなくても、すっと伸びてくれます。 |
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|
また向きを変えます。 |
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なるべくすくない回数、転がして‥‥。
‥‥はい、これくらいでOKです。 |
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うわーーー。 |
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感動的! |
一同 |
(拍手!) |
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そんな(笑)、伸ばしただけですよ。 |
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あっという間の出来事でした。 |
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わたし、この10倍は転がしてたわ。 |
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わたしも。 |
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やっぱり、力を入れずになるべく触らない、
なんですね。 |
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そうですね、
何度もゴロゴロやっていると、
焼き上がりの色が悪くなったり
食感が悪くなるので、
自分がイメージする厚さまで、
なるべくすくない回数で
伸ばしてあげるのがポイントです。 |
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あと、わたしの場合、
はじっこが薄くなって
そこからひび割れてきちゃったんですけど‥‥。 |
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はじっこだけ薄くなると、
そこだけ焦げてくるので
なるべく均等な厚さにしたいですよね。
めん棒を転がして、
「最後に」ぐっと力を入れると
はじっこが薄くなりやすいんです。
均等に伸ばすコツは、
最初と真ん中にちょっとだけ力を入れて、
あとは力を抜くんです。
もう、途中でめん棒を放すくらいの感じで。
いってらっしゃーい、と。 |
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そうすると、均等になります。 |
一同 |
へえええーーーー。 |
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あとはこういうカードとかナイフで
線を入れます。
下までぐっと突き刺す感じで。 |
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太さは自由でいいんですか? |
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はい、ここはもう、好みの太さに。
食感が変わりますので、
太いのや細いのを、
いろいろたのしんでいただければ。 |
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こんな感じですね。 |
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焼く |
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これをこのまま天板にのせて、
オーブンで焼きます。 |
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天板は、あたためておくオーブンに
入れておかないんですね |
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はい、入れておきません。
ここで生地と一緒に入れます。 |
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何段かあるオーブンなら、真ん中の段に。
熱が逃げないよう、すばやく閉めます(閉める)。 |
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170℃で30分、ですよね。 |
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そうですね、
きょうは25分で様子を見ましょう。
はじめてのオーブンなので。 |
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オーブンによってクセがあるんです。
何度か焼いて、
自分のオーブンの
クセをしってほしいですね。
片側だけ焦げるなら
途中で手早く向きを変えるとか、
表面だけ焦げやすいなら
温度を10〜20度下げてみる、とか。
クセを知れば、工夫ができるので。 |
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170℃っていうのは、
お菓子を焼く温度としてはわりと低いですよね。 |
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低いです。
すこし低めの温度でじっくり焼くことで、
中までしっかり火が通って、
風味がぐんと出てくるんです。
生地が厚かったり薄かったりしても
焼き時間が変わってしまうので、
4mmという厚さも大切ですね。
いずれにしても、
できるだけ同じ感じの生地を作って、
170℃で30分で焼くことからはじめてみて
いろいろ試してみるといいと思います。 |