ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2010-02-09-TUE

紙面をにぎわすふたり。

ロナウジーニョとバロテッリ、
ミラノのサッカーで最も愛されると同時に、
最も世論にのぼりがちなこのふたりが、
いまも、ぼくらを退屈させることがないほどの
騒ぎをおこしています。
冬のカルチョ・メルカートが終って、
新聞のトップページに返り咲いた彼ら。
それも、スポーツ紙だけでなく、
政治的な記事に重きを置く
日刊紙にまで登場しているのです。

ロナウジーニョは夜の主役?

まずロナウジーニョですが、
インテルとのダービーで非常に良くないプレイをし、
ペナルティーキックさえ外したのですが、
そのわけが分かりました。
彼は今、ミラノで、
フェリーニ監督の映画『甘い生活』の
マルチェロ・マストロヤンニのような、
夜の主役を張っているらしいのです。
たしかに当時のローマの快楽的な夜の生活を、
現代のイタリアで最も裕福な街であるミラノは、
再現させる条件を持っているのですけれどもね。

ミラノ・ダービーの前の週の水曜日、
彼は自分と友人たちのために、
VIPが宿泊することで知られるホテル
ホテル・プリンチペ・ディ・サヴォイアに
複数のスイートルームを取りました。

franco

そして「甘いパートナーたち」と共に
水、木、金と3日(!)をホテルですごし、
インテルとの難しい対戦に向けて
チームが準備をしていた
ミラネッロ・スポーツセンターに、
酷いコンディションで姿を現します。

franco

その3日間がどんなものだったかなんて
誰も知りようがありませんが、
彼がホテルに支払ったとされる
7万5000ユーロという金額を見れば、
キャビアや川のように流れるシャンパンが、
たやすく想像できます。
この知らせは、
ミラノの主要日刊紙コッリエーレ・デッラ・セーラ紙の
トップページに載り、
案の定、スキャンダルに発展しました。

ACミランの副会長である
アドリアーノ・ガッリアーニは、
それは個人的なことであるとしてコメントを避け、
ロナウジーニョは彼のホームページで、
「甘い生活」のようなお祭り騒ぎに
参加したとは言わないまでも、
ホテルで3日間をすごしたことを否定しませんでした。
いっぽう、「甘い生活」を遠ざけたことのないであろう
ACミランのベルルスコーニ会長は、
「インテルからアタッカーのマンシーニを
 買ったものの、役に立っていない」と
ガッリアーニを咎めて、ほこさきを逸らしました。

モウリーニョとバロテッリの関係は‥‥?

さてACミランがゴシップ記事の主役なら、
インテルも引けを取りません。
対フィオレンティーナ戦で
バロテッリが交代させられた時、
彼はピッチから真っ直ぐに更衣室へ向かい、
モウリーニョ監督の前を通り過ぎながら
酷い言葉を投げかけたのです。
「おまえは何者でもないが、
 おれはチャンピオンだ」と。

franco
モウリーニョは、バロテッリが止まったまま
次の動きをしないことを責めたのですが、
じつはこの時バロテッリは、
落ちたコンタクトレンズを草の中から
探していたのでした。

franco

もはや、この2人の関係は破綻しており、
どちらかがシーズン終了後に
インテルを去るのは確実でしょう。

監督については、
モラッティ会長はすでに
ボルドーのローラン・ブランと
合意しているようでもあり、
事実上、モウリーニョの運命は、
UEFAチャンピオンズ・リーグ決勝トーナメントの
対チェルシー戦にかかっています。

franco

バロテッリは今シーズン中に
何度もモウリーニョ監督とぶつかっています。
彼はまだ19歳の若者ですが、
モウリーニョは本当にもうガマンできないのです。
でもこの1人の選手と1人の監督の話が
どう終わるのかを見届けるには、
6月まで待たねばならないでしょう。

両者間にはついに「愛情」が芽生えないのか、
いや忘れられているだけなのか、いずれにせよ、
このままでは2人が別々のチームに離れるしか、
解決法は無いようです。

franco


訳者のひとこと

イタリア語は、
日本語ほどには尊敬語や謙譲語、
ていねい語などの使い分けがないのですが、
「あなた」と「きみ/おまえ」にあたる
使い分けはあります。

バロテッリがモウリーニョに言ったセリフ、
フランコさんの原文では「おまえ」の方を
使っています。
これはよくあることで、
ごく親しい関係や仲間であれば、
相手が年上でも「おまえ呼ばわり」も
失礼にあたらなかったりします。

例えばキリスト教の祈りは、
「私たちの父なる神さま」と呼びかけるので、
イタリア語だと、
親しみのこもる「おまえ呼ばわり」を使います。
日本人の感覚ではちょっとビックリで、
最初に「主の祈り」をイタリア語で聞いた時には、
これは良いなぁと嬉しくなったものでした。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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