糸井 じゃあ、いまは、新しいプロジェクトが
どんどん
立ち上がっているような状況ですね。
西條 最近は
家電のプロジェクトも、はじめました。

家のなかを見回すと、
なにかしら
使ってない家電があるじゃないですか。
それらを
全国から集めて、被災地に送るんです。
糸井 おお、いいですねぇ。
西條

これも、考えかたはシンプルなんですよ。

たとえば自治体ベース、学校ベース、
なんでもいいんですけど、
「ここに、こういう家電が
 これぐらいの分量、集まりますよ」と
知らせてくれれば、
すでに運送業の青年組織の方々と
ネットワークができあがっているので、
全国どこからでも、
直接、被災地に運んでしまうんです。

糸井 おおー‥‥!
西條

第一弾はニーズの高い
冷蔵庫や掃除機、炊飯器といった家電を
東京で集めて
石巻の半壊地区で配りました。

準備期間が1週間しかなかったので
大変でしたが
運送業界の佐久間さんや、
中妻議員をはじめとするスタッフのおかげで

短時間で大量の家電を、
届けることができたんです。


被災者の皆さんは
本当にみんな嬉しそうで、
やって良かったと思いましたね。

糸井 そうですか。
西條 そのとき、家電を受け取るのに必要なのは、
罹災証明書のコピーだけにする。
で、そのデータを管理して、重複を防ぐ。
糸井 つまり、誰に何を配ったかだけを
データベース化して、
「どんどん配っちゃう」んですね。
西條

はい、次は早稲田大学でも実施しますが、
やる気にさえなれば、どこでもできます。

他にもいくつか経路はあって
たとえば
被災地のど真ん中の拠点となる
倉庫や避難所に、
直接送ってもらって
被災者の方に取りにきてもらうんです。

こうした仕組みはできあがっているので、
あとは、周知さえできれば。

糸井 微力ながら、今、周知しました。
西條 あ、ありがとうございます(笑)。

もっといえば、僕らの仕組みを通さなくても
津波の主被災地に近い市町村なら
近所で家電を集めて、

半壊地域の個人避難宅エリアなどに行って
露天商みたいに
どんどん配っちゃえばいいんです。

糸井 紙芝居のオヤジみたいなもんだ。

でもそれって、被災地が
家電を配れるような状況になってきた‥‥
とも、言えるわけですね。
西條 ええ、電気が復旧し始めましたから。
けど、電気は通っても、家電がない。
糸井 そうか、そうか。
西條 ぼくら、
何百カ所と支援物資を配っていますけど、
欲しいもののリストの
「ご飯」の下に「テレビ」って書いてあると
被災地以外の人には
なんか「ぜいたく」に思われちゃうんです。
糸井 絶対に必要なものなのにね。
西條 テレビがなければ、
情報を得ることができませんから。

で、家が全壊して仮設住宅に入居する人は
テレビ、冷蔵庫などの「6点セット」を
もらえるんですけど、
たとえば自宅の2階が無事で
そこで暮らしてる人には、配られない。
糸井 そうなんだ。
西條 もらうこともできるんですけど、
そうすると、
なけなしの「35万円」の義援金から
天引きされちゃうんです。

糸井 うーーん。
西條

重要な家電がある「1階」部分は、
津波で全滅しています。

赤十字は半壊した家にも
家電を配るべきだと思うんですよ。
そのために
みんな募金したわけですから。

糸井 ほんとに、そうですよね。
西條

家と家電を失った人には
仮設住宅と家電を与える。

ならば
家電を失った人には、家電を与えなければ
筋が通らないので、
被災者も支援者も
もっと声をあげた方がいいと思いますね。

とはいえ、巨大な組織が動くのを待っていても
被災地は待ったなしです。
だから、みんなで家電を送ってあげないと。

糸井 余ってるわけだからね、全国に。
西條 ふんばろう東日本支援プロジェクトの
全体の目的は、
「物資を送ること」ではなくて、
「すべてを失った人たちが、
 もういちど、
 前を向いて生きていこうと思えるような
 条件を整えること」なんです。
糸井 ええ、ええ。
西條

そのためには、
ただ「がんばれ」と言ったって、ムリです。

がんばる出発点として、
家電などの生活必需品は絶対必要ですから。

じゃないと手洗いも大変だし、

食品の保存もできないし、ごはんも炊けない。

糸井 そうですよね‥‥。
西條 でも、家電の場合、
どうやって「質」を担保するかが
重要なんですね。
糸井 つまり、動くかどうか‥‥ってこと?
西條 そうです。

もちろん、
直接、通電を確認できればいいんですが
それを必須にするのは
現実的ではないので‥‥。
糸井 ‥‥どうするんです?
西條 家電を入れた箱に
送る側の「名前・住所・電話番号」を
書いてもらうんです。
糸井 そうか! 送る側が「責任感を持つ」んだ。
西條 そうそう、そうなんですよ。

これが僕らの基本的なやり方で、
受け取る側のほうも
「ああ、どこどこの誰々さんが
 送ってくれたんだ」って、わかる。

そうすると「お礼」が行くんです。
糸井 はー‥‥やりとりが生まれるんですね。
西條 つまり、互いが「知人」になるんです。
そうしたら、
何かに困っていたら、また送りますよ。
糸井 つまり「家電の養子縁組」ですね。
西條 そうですね、言ってみれば。

このプロジェクトを全国展開すれば、
みんな、
震災が「他人事じゃなくなる」はず。
糸井 うん、うん、うん。
西條 家電のプロジェクトは、
その大きなきっかけになると思うんです。
糸井 その実名主義、痛快だなぁ!
西條 たぶん、支援物資を受け取るほうも
「あ、こういう人たちが
 応援してくれてるんだ」と思えたほうが
うれしいでしょうし。
糸井 それは絶対、そう思う。
西條 支援するほうも、
送ったテレビが誰に使われてるのか
わからない、
どこかに山積みになってるかも‥‥なんて
思ったら、
次から、送らなくなりますよね。
糸井 西條さんたちのプロジェクトには
つねに「人の理解」が根っこにありますね。
西條 はい、「人間の心」に沿っていれば
自然とうまくいきます。
そうじゃないと、
必ず無理が生じて、続かないんです。
糸井 なるほどなぁ。
西條 だから、ぼくらは
「人が人を支援する」という考えかたを
基本にしているんです。

人間は「忘れてしまう動物」ですけれど
人と人との間に縁が生まれれば
それが絆となって、
絶対に「忘れる」ことには、ならない。
糸井 うん、うん。‥‥他にも、なにかあります?
西條 「冷蔵庫」と「洗濯機」のふたつは、
大きすぎて
たとえば「近所でまとまって集める」
みたいなコミュニティベースだと、
大量に集めるのは難しいんです。
糸井 なるほど、なるほど。
西條 そこで‥‥。
糸井 また、アイディア?
西條 人が結婚をすると、
要らなくなる家電が出てくるじゃないですか。
糸井 つまり、ふたつあっても仕方ないもの。
西條

そうです。

洗濯機や冷蔵庫も、ひとつあればいい。
買い替えする場合だってある。


ですから、そうして不要になった分を
どうにかして
被災地に送れたらいいのにと思って
ツイッターでつぶやいたら、連絡が来たんです。

糸井 どこから?
西條 全国4万件以上の不動産を扱ってる会社と
つながりのある人から
その会社に情報を流せるかもしれないって。
糸井 あ、新婚さんは、新居を構えるから‥‥
なるほど、不動産会社かぁ。
西條 しかも、在庫を貯めておく場所だって
いくらでもあるんです。つまり‥‥。
糸井 不動産屋だから! なるほど!
西條 不動産屋さんのネットワークで集まった
洗濯機や冷蔵庫を
一時的に保管してもらって、
それを運送業者さんに運んでもらって
被災地で配れたら‥‥。
糸井 すごい。
西條

これを見て
「協力したい」という不動産屋さんが
いらっしゃいましたら
ツイッターやホームページから、
すぐご連絡いただきたいですね。

ともあれ、思いついたことをつぶやくことで
そういうような情報が
毎日、飛び込んでくる状況なんです、いまは。
糸井 ツイッターならではの展開だなぁ。
西條 いろいろな人がコメントをくれるので
アイディアを
実現するための情報を集めるのにも
役立ちますね。
糸井 なるほど。
西條

家電プロジェクトひとつとっても
目的を達成するための方法は、
いくつもあるんです。

他にも、ぼくらが独自に作ったサイトを援用して、
家電を購入して送るための支援金を募って、
扇風機などの新品を
被災者にどんどん送っています。

糸井 このページのことですね。
ただいま、微力ながら周知しました。
西條

あ、ありがとうございます(笑)。

糸井さんの「周知」って
すごい「被災者支援」ですよね。

「ふんばろう東日本支援プロジェクト」は
そもそも多くの人の
ツイッターをはじめとする「周知」によって
成り立っているので、
本当にありがたく思っています。

糸井 西條さんがやっているのは
内と外の境界線が明確な「団体」ではなく
何十万、何百万という人に支えられている
「プロジェクト」なんですもんね。
西條 そう、そうなんです。

中心となる「コア」みたいなものはありますが、
境界線はないので、
誰もが参加することができます。
糸井 ある方法がダメだと
無理だといって諦めちゃう人も多いけど
西條さんは、どんどん考え出しますね。
西條 はい、なければ作ればよいんです。
糸井 つねに「どうすればうまくいくか」を考えてる。
西條

はい、最初に
「このやり方じゃ無理だな」とか
「らちが明かないな」と直感したことは
やりませんが、

基本的な方向性として
「いける」と確信したら
「できるかどうか」という問いは立てません。

「無理だ」とかいって諦めることは、
いつだってできます。
だから、それは最後の最後でいいんです。

糸井 うん、うん。
西條

ですから
「被災者支援」だけを見つめて
「どうすれば、うまくそれを達成できるか」
という問いだけを、考えています。

ほとんどの場合は
うまくいくためのアイディアがないだけで、
うまい方法や仕組みを編み出せば、
実現できると思っているんです。

<つづきます>

2011-06-22-WED