糸井 | 西條さんの「ふんばろう」プロジェクトには 「解散」のイメージって、あるんですか? |
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西條 | うーん‥‥難しいところですね。 プロジェクトごとに 被災地での「ニーズ」や「ウオンツ」は 違うので。 解散するわけではないですけど、 次の「3月11日」が ひとつの節目になるだろうな‥‥とは 思っています。 |
糸井 | このあいだ気仙沼でもしゃべったんだけど、 そのあたりまでに 「ふんばろう」の体制を 「脱中心的な方向に整備していこう」と。 |
西條 | はい。 大きな方針としては「現地の独立化」です。 個々の支部ごと、 あるいはプロジェクトごとの独立を高めて 個々の判断で「回して」いけるように。 そのほうが機動性も高まるし、 無理もないし、 だいぶコストが減ると思うんですよね。 |
糸井 | うん、うん。 |
西條 | テレビやラジオといったマスコミへの露出も 3月11日を過ぎたら できるだけ各プロジェクトのリーダーなどに 任せたいと思っていて。 |
糸井 | はじめて対談したときに 「自分がいなくなるのが目標」って。 |
西條 | はい。 いかにぼくがいなくても機能する体制を作るか、 ずっとその体制作りをやってきたといっても、 いいぐらいです。 最近は、各チームのリーダーさんたちが‥‥ といっても何十人といるわけですが(笑)、 かなりいい感じに回してくれているので、 ようやく イメージしていた体制になってきたかなと。 |
糸井 | 現在の課題は? |
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西條 | 3月11日以後、活動を続けていくためにも 最低限の資金は必要だということですね。 なので、月々1000円から定額の寄付ができる ふんばろうサポータークラブをつくって。 |
糸井 | なるほど。 |
西條 | あの‥‥糸井さんが立ち上げた 「気仙沼のほぼ日」って 「2年」という期限付きではじめたって おっしゃってたじゃないですか。 |
糸井 | はい。 |
西條 | そのことが ずっと、気になっていたんですよね。 |
糸井 | そうですか。 |
西條 | はい‥‥どうして「2年」なのか。 「1年」でも、「3年」でもなく。 |
糸井 | まぁ、僕のやることですからね、 まずは「直感」です。 |
西條 | んー‥‥。 |
糸井 | ‥‥なんですけど、適当にやってたら、 1年でたぶん「飽きる」んですよ。 |
西條 | ‥‥ほう。 |
糸井 | 自分の動機が、そのままでは続きにくくなる。 1年目は、春になったら桜の話ができるし、 春が終わったら 「夏休みが来るぞーっ」って書けるんですね。 |
西條 | ええ、ええ。 |
糸井 | でも、季節がひとめぐりしちゃうと、 つまり「2年目」に入ると、 去年と同じこと、書けないじゃないですか。 そこに 新しい「ニュース」なり「アイディア」が 載っかってないと。 |
西條 | なるほど‥‥。 |
糸井 | そういう「2年目」を 誤魔化さずにやっていけるかどうか‥‥が、 知恵を絞るポイントなんです。 だから、1年でやめちゃったらダメ。 |
西條 | じゃあ「3年」でもない理由は? |
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糸井 | 3年目については 「あとは、自分らでやってねーっ!」って 言いたいから。 だって 僕たちが「主人公」じゃないですもん。 |
西條 | ‥‥なるほど。 |
糸井 | もし「2年」であるていど利益を生むような やりかたが見つけられたら、 それを渡して、使ってもらいたいんです。 なんというか 「半完成品のプロジェクト」を置いて 「さらば」って言いたいんですよ。 |
西條 | 先日、お会いしたときに「義足論」と。 |
糸井 | そう、そういう発想って、「義足」とか 「補助輪」とか「エンジン」とか、 そんなようなものかなって思うんですね。 |
西條 | あくまで「走る」のは、現地のみなさん。 |
糸井 | うん。 |
西條 | この間も、すっごく感じたんですが‥‥。 |
糸井 | ええ。 |
西條 | 5月とか夏ごろ‥‥とか、定期的に お会いさせていただいてるんですけれど、 糸井さんのパワーが どんどん上がってるのを感じるんですよ。 |
糸井 | ほんとですか(笑)。 |
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西條 | いや、何が言いたいかというと いまの状況は 「糸井さんのフェーズ」になってるんだろうなぁと 思ったんです。 |
糸井 | ‥‥なるほど。「俺的な人」の。 |
西條 | そう、震災が起きた直後は とにかく「ガテン系」の人のはたらきが 重要だったわけです。 パワーのある人たちが先頭切ってくれて、 ガレキを撤去して‥‥。 |
糸井 | ものすごく重要な役割でしたよね。 |
西條 | そういう人たちの活躍で、 どんどん、ガレキが片付けられていって‥‥ 先日、陸前高田を通りかかったとき、 一瞬、気づかなかったんですよね。 |
糸井 | ほう。 |
西條 | そこが「陸前高田」だってことに。 |
糸井 | つまり「風景」が変わっていて。 |
西條 | こんな広い場所、あったかなぁ‥‥と。 そのくらい状況が変化してきてるいま、 やはり次は「仕事」をどうするか というフェーズに入ってきてると思うんです。 |
糸井 | 「ふんばろう」も 「雇用創出」の方向へ舵を切ったし。 |
西條 | そうすると、糸井さんみたいに 知恵とか行動力とかアイディアを持った人に 地域の経済を サポートしていただくことが重要かなと。 よその大企業がポンポン入ってくるのは いやだな‥‥というのが たぶん、現地の本音だと思うんですよね。 |
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糸井 | そうですよね。 |
西條 | 瀕死の重体になった状態から 必死に立ち上がろうとしている中小企業が たくさんあります。 そこへ、無傷の大企業がバーンと入ってきて 競争原理がはたらいたら‥‥。 |
糸井 | ええ。 |
西條 | だから、可能なかぎり地元に根づいた企業を サポートしていくという 道すじをつけていかないことには。 |
糸井 | 大企業が 「お金持ってるから、これをやってあげます」 といって入ってても 次に繋がらないし、循環していく気がしない。 |
西條 | うん、うん。 |
糸井 | 西條さんの言う「仕事」について思うのは 今の局面って 僕は「誇りの時期」になったなって。 |
西條 | 誇り、ですか。 |
糸井 | たとえば、打ち合わせで気仙沼に行ったりすると、 とうぜん僕らなりに気は使ってんですが、 「ごちそう」されちゃうんです、現地の人たちに。 そのことについて、やはり考えるわけです。 |
西條 | 逆なんじゃないか、と。 |
糸井 | そう、で、もう友だちになっちゃってるから 「なんでキミらは、ごちそうするんだ!」 と、言ったんですよ。 |
西條 | ええ(笑)。 |
糸井 | そうしたら、 「そういうことをしたくて生きてるんだ!」 って、逆に言い返さちゃって。 |
西條 | なるほど‥‥。 |
糸井 | 「東京から気仙沼に来てくれることが 嬉しいんだから、 ごちそうしたいに決まってるじゃないか。 それをやめろっていうのは、 何か物くれってねだるよりひどいぞ」と。 |
西條 | ええ、わかります。 |
糸井 | だからもう、弱っちゃうんですけど 「‥‥美味いね」って言うしかないんです。 |
会場 | (笑) |
西條 | いや、本当にそうだと思います。 |
糸井 | その意味での「誇り」がひとつ。 もうひとつは、 たとえば「歌を聴いてもらう」にしたって、 きちんとお金を取れる人が来て、 歌ってくれるのが 嬉しいじゃないですか、やっぱり。 |
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西條 | 糸井さんのおっしゃる 「ニーズ」ではなく「ウォンツ」ですね。 |
糸井 | うん、それは「支援される側の誇り」と 言い換えられるんだと思う。 |
西條 | ‥‥なるほど。 |
糸井 | だから、自分に何ができるのかわからないという 問いに対しては いちばん簡単なことで言うと 「被災地を 野次馬として見に来てくれていい」 というのは、全員が言いますね。 |
西條 | そうですね。 |
糸井 | 「行ったり来たりの交流がはじまれば、 少なくとも オレたちは『忘れられてない』ことが よく分かるから」って。 |
西條 | うん。 |
糸井 | 「こりゃひどいですね〜と 笑ってくれても、かまわないくらいだ。 そしたら 笑えないような場所を見せてやるから。 ワハハハハ!」 みたいに、笑って言ってますから。 |