糸井 | いま、気仙沼へ遊びに行った人が 「どこへ行ったらいいか」 という地図を、つくってるんです。 |
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西條 | ほう。 |
糸井 | あの、「気仙沼のほぼ日」は単なる支社で 案内所じゃないので、 道に迷っても来ないでほしいんですが‥‥。 |
会場 | (笑) |
糸井 | その代わり、ぼくらのつくった地図は あちこちの店に 置いておけるようにしたいと思います。 |
西條 | それは、どんなかたちで? |
糸井 | はじめは紙ベースでスタートして、 ゆくゆくは DSとかiPhone、iPadなんかでも 立体的に見れるようにしたいなぁと。 ま、あわててやってもしょうがないんで コツコツ地味にやってるんですが。 |
西條 | 落語会もやるんですよね。 |
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糸井 | ええ、立川志の輔さんにOKをもらいまして。 「さんま寄席」をやろうと思ってます。 |
西條 | 気仙沼で。 |
糸井 | 1000人くらい収容できる大きなホールで やるんですが、 これは、いわゆる「慰問」じゃない。 気仙沼以外の場所、 東京とか大阪とか名古屋とかの人に 「わざわざ行きたくなる旅行パック」にして 売りつけようと(笑)。 |
会場 | おおー(笑)。 |
糸井 | というのも、 あの「目黒のさんま祭り」のさんまって 毎年、気仙沼から送ってるんですけど その費用も ずっと気仙沼が負担してきたんですって。 |
西條 | そうなんですよね。 |
糸井 | 以前、気仙沼の市長さんと話したとき、 「ことしも、 これまでと同じようにやりたい」と おっしゃってたんです。 で、以前にも気仙沼で落語会をやって その費用をサンマ代に充てたことがあるって 聞いたので 「じゃあ、 志の輔さんに聞いてみましょう」と。 |
西條 | それは‥‥最高ですよね。 |
糸井 | 演目には「目黒のさんま」もあります。 さんまの本拠地で さんま祭りの代金を捻出するために 志の輔さんが落語をやるから、 全国のみなさん、 どうぞ、お金を使って来てください、 僕らといっしょに稼ぎましょう‥‥という そういう企画なんです。 |
西條 | 落語を聞いて、さんまを食べて‥‥ 世界遺産になった 平泉を見物して帰ったっていいし。 |
糸井 | これ、たとえば、5月にやっていたら 顰蹙を買ったかもしれないけど 今ならもうやれるし、 何より「やりたいん」ですね、ぼくら。 |
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西條 | 「ガレキが撤去されて、 交通網が整備された」ということも含めて 無理のない、素晴らしい企画ですね。 |
糸井 | でも、何よりの資産は気仙沼の人たちです。 |
西條 | はい。 |
糸井 | もう、本当におもしろい人ばっかり。 あの人たちに道を案内されたり、 あの人たちの店で買い物したり。 |
西條 | あの町に渦巻いてるエネルギーは、 ものすごいですよね。 |
糸井 | 「ガレキ見たいんですけど」って リクエストしたら 「だったら、ついておいでよ」って 案内してくれますよ。 |
西條 | あの、強さ。 |
糸井 | うん。 「なんで、 そんなに笑ってるんですか?」 と聞いたら 「本当に困ってる人は、笑うんです。 なまじ遠くにいたら 笑えないのかもしれないけど 笑ってると、復興が進むんですよ」 と言って 美味しいサンマを出してくれる人たちです。 |
西條 | ものすごい悲しみを抱えながら。 |
糸井 | それはもう「前提」ですよね。 |
西條 | でも、ぼくらは、笑っていいんですよね。 |
糸井 | うん、最近じゃ 気仙沼にはじめての人が来たときなんか 「ここ、望まれてるな」ってポイントで キュッと悲しい話したりしてくれますし。 |
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会場 | (笑) |
糸井 | あのテク、すごくなってる(笑)。 |
西條 | はい(笑)。 ‥‥あの、被災地の企業を支援する意味で 「復興デパートメント」 というプロジェクトが立ち上がったのを‥‥。 |
糸井 | ええ、知ってます。 |
西條 | これ、ヤフーさんに事務局があって 「ふんばろう」も パートナーとして参加しているんですが、 現地のお店を 「復興デパートメント」という ネット上の百貨店に集める試みなんです。 |
糸井 | うん、うん。 |
西條 | すごくいい支援だと思うんです。 売上の3パーセントを 管理費として払いますが、出店料も無料だし。 まさに地元企業が立ち上がるための 「義足」として機能すると思うんです。 |
糸井 | いいですよね。 東北の被災地の「マーケット」というのは、 「東北じゃない」ですから。 |
西條 | ええ、さっきの「さんま寄席」がいい例で。 |
糸井 | そう、結局、どこからお金が入ってくるか を考えたら、 圧倒的に東京であり、大阪であり、 名古屋であり、その他の地域からなんです。 |
西條 | 被災地で物を売るのではなく、 知名度を上げて、商品の魅力を磨いて、 被災地の外の人に買っていただく。 そして、もうひとつは 実際に来て、お金を落としてもらうと。 |
糸井 | うん、うん。 |
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西條 | 潜在的ではあれ、応援してくださる人たちが 全国にいるというのは、大きな希望です。 だからこそ「忘れられる」のが、 いちばん「怖い」んです。 |
糸井 | たぶん、気を付けなければならないのは、 被災地の商品って ちょっと「ゲタ履いてる」んですよね。 つまり、同じようなタオルがあったら 被災地のタオルを買ってくれるんです、今は。 |
西條 | ええ。 |
糸井 | でも、1年経ち、2年経ったときに、 その「ゲタ」って? たぶんね、お集まりのみなさんのなかにも 「もう何回目だろ、寄付金を送るの」 みたいな人も、いらっしゃると思うんです。 |
西條 | はい。 |
糸井 | だから震災のことを「忘れないための何か」を どう工夫していくかが 西條さんやぼくらの、今後の課題でしょうね。 |
西條 | 糸井さんが、震災直後に 年間の支援の予算を立てちゃっというのも、 言うなれば 「忘れないための方策」なんですよね、つまり。 |
糸井 | そう、月々いくらいくらって決まった予算が あるわけだから、まぁ、使うんですよ。 |
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西條 | しかも名目が「研究開発費」。 |
糸井 | ええ、ぼくらは 東北に勉強させてもらいに行ってますから。 |
西條 | やはり、震災後半年を過ぎたあたりから、 雰囲気が急にトーンダウンしたんですけど、 そういうなか、きちんと行動されて、 続けている背景には、 「最初に決めちゃったから」があるんですね。 |
糸井 | 自分が「冷たい人間だ」っていうこと、 ぼくらは知ってるんです。 ここにいるみなさんも自問自答してみたら いいと思うんですけど、 被災地の人と できたばかりの素敵な「カレシ」と、 同時に呼び出されたら、どっち行きます? |
会場 | (笑)。 |
糸井 | ふつう、後者でしょ。 |
西條 | うん(笑)。 |
糸井 | 自分たちは「そういう人間だ」ということを 前提にして 計画を組み立てなきゃならないと思うんです。 |
西條 | でも、その発想はとても大事ですよね。 だって、かりに問題意識が下がってしまっても 支援活動には支障が出ないですから。 |
糸井 | そうですね。 |
西條 | ぼくらのサポータークラブのしくみもそうで、 参加していれば、 自分の問題意識に関わりなく つねに自分の代わりに動いてくれる人の 活動を支えることができます。 |
糸井 | うん、うん。 |
西條 | ただ、このしくみの欠点は 銀行で手続きをしなければならないために 資料請求した人の半分くらいしか 申し込んでもらえないことなんですが、 被災地のために何かできることはないかと 思っているかたには ぜひ、参加してほしいなと思います。 |
糸井 | なるほど。 |
西條 | 今後、「寄付」については どんどん「難しく」なってくると思っていて。 |
糸井 | どうしてもね。 |
西條 | ですから、ぼくたちも 宮本亜門さんがリーダーを務めてくださっている うれしいプロジェクトはじめ マンガ・イラストチャリティープロジェクトなど チャリティーを活かした体制に 移行しているところなんです。 |
糸井 | ええ、ええ。 |
西條 | やはり、時期によって 有効な「方法」は、どんどん変わっていくので。 |