第6回 @東京 被災地の強さ。

糸井 いま、気仙沼へ遊びに行った人が
「どこへ行ったらいいか」
という地図を、つくってるんです。
西條 ほう。
糸井 あの、「気仙沼のほぼ日」は単なる支社で
案内所じゃないので、
道に迷っても来ないでほしいんですが‥‥。
会場 (笑)
糸井 その代わり、ぼくらのつくった地図は
あちこちの店に
置いておけるようにしたいと思います。
西條 それは、どんなかたちで?
糸井 はじめは紙ベースでスタートして、
ゆくゆくは
DSとかiPhone、iPadなんかでも
立体的に見れるようにしたいなぁと。

ま、あわててやってもしょうがないんで
コツコツ地味にやってるんですが。
西條 落語会もやるんですよね。
糸井 ええ、立川志の輔さんにOKをもらいまして。
「さんま寄席」をやろうと思ってます。
西條 気仙沼で。
糸井 1000人くらい収容できる大きなホールで
やるんですが、
これは、いわゆる「慰問」じゃない。

気仙沼以外の場所、
東京とか大阪とか名古屋とかの人に
「わざわざ行きたくなる旅行パック」にして
売りつけようと(笑)。
会場 おおー(笑)。
糸井 というのも、
あの「目黒のさんま祭り」のさんまって
毎年、気仙沼から送ってるんですけど
その費用も
ずっと気仙沼が負担してきたんですって。
西條 そうなんですよね。
糸井 以前、気仙沼の市長さんと話したとき、
「ことしも、
 これまでと同じようにやりたい」と
おっしゃってたんです。

で、以前にも気仙沼で落語会をやって
その費用をサンマ代に充てたことがあるって
聞いたので
「じゃあ、
 志の輔さんに聞いてみましょう」と。
西條 それは‥‥最高ですよね。
糸井 演目には「目黒のさんま」もあります。

さんまの本拠地で
さんま祭りの代金を捻出するために
志の輔さんが落語をやるから、
全国のみなさん、
どうぞ、お金を使って来てください、
僕らといっしょに稼ぎましょう‥‥という
そういう企画なんです。
西條 落語を聞いて、さんまを食べて‥‥
世界遺産になった
平泉を見物して帰ったっていいし。
糸井 これ、たとえば、5月にやっていたら
顰蹙を買ったかもしれないけど
今ならもうやれるし、
何より「やりたいん」ですね、ぼくら。
西條 「ガレキが撤去されて、
 交通網が整備された」ということも含めて
無理のない、素晴らしい企画ですね。
糸井 でも、何よりの資産は気仙沼の人たちです。
西條 はい。
糸井 もう、本当におもしろい人ばっかり。

あの人たちに道を案内されたり、
あの人たちの店で買い物したり。
西條 あの町に渦巻いてるエネルギーは、
ものすごいですよね。
糸井 「ガレキ見たいんですけど」って
リクエストしたら
「だったら、ついておいでよ」って
案内してくれますよ。
西條 あの、強さ。
糸井 うん。

「なんで、 そんなに笑ってるんですか?」
と聞いたら
「本当に困ってる人は、笑うんです。
 なまじ遠くにいたら
 笑えないのかもしれないけど
 笑ってると、復興が進むんですよ」
と言って
美味しいサンマを出してくれる人たちです。
西條 ものすごい悲しみを抱えながら。
糸井 それはもう「前提」ですよね。
西條 でも、ぼくらは、笑っていいんですよね。
糸井 うん、最近じゃ
気仙沼にはじめての人が来たときなんか
「ここ、望まれてるな」ってポイントで
キュッと悲しい話したりしてくれますし。
会場 (笑)
糸井 あのテク、すごくなってる(笑)。
西條 はい(笑)。

‥‥あの、被災地の企業を支援する意味で
「復興デパートメント」
というプロジェクトが立ち上がったのを‥‥。
糸井 ええ、知ってます。
西條 これ、ヤフーさんに事務局があって
「ふんばろう」も
パートナーとして参加しているんですが、
現地のお店を
「復興デパートメント」という
ネット上の百貨店に集める試みなんです。
糸井 うん、うん。
西條 すごくいい支援だと思うんです。

売上の3パーセントを
管理費として払いますが、出店料も無料だし。

まさに地元企業が立ち上がるための
「義足」として機能すると思うんです。
糸井 いいですよね。

東北の被災地の「マーケット」というのは、
「東北じゃない」ですから。
西條 ええ、さっきの「さんま寄席」がいい例で。
糸井 そう、結局、どこからお金が入ってくるか
を考えたら、
圧倒的に東京であり、大阪であり、
名古屋であり、その他の地域からなんです。
西條 被災地で物を売るのではなく、
知名度を上げて、商品の魅力を磨いて、
被災地の外の人に買っていただく。

そして、もうひとつは
実際に来て、お金を落としてもらうと。
糸井 うん、うん。
西條 潜在的ではあれ、応援してくださる人たちが
全国にいるというのは、大きな希望です。

だからこそ「忘れられる」のが、
いちばん「怖い」んです。
糸井 たぶん、気を付けなければならないのは、
被災地の商品って
ちょっと「ゲタ履いてる」んですよね。

つまり、同じようなタオルがあったら
被災地のタオルを買ってくれるんです、今は。
西條 ええ。
糸井 でも、1年経ち、2年経ったときに、
その「ゲタ」って?

たぶんね、お集まりのみなさんのなかにも
「もう何回目だろ、寄付金を送るの」
みたいな人も、いらっしゃると思うんです。
西條 はい。
糸井 だから震災のことを「忘れないための何か」を
どう工夫していくかが
西條さんやぼくらの、今後の課題でしょうね。
西條 糸井さんが、震災直後に
年間の支援の予算を立てちゃっというのも、
言うなれば
「忘れないための方策」なんですよね、つまり。
糸井 そう、月々いくらいくらって決まった予算が
あるわけだから、まぁ、使うんですよ。
西條 しかも名目が「研究開発費」。
糸井 ええ、ぼくらは
東北に勉強させてもらいに行ってますから。
西條 やはり、震災後半年を過ぎたあたりから、
雰囲気が急にトーンダウンしたんですけど、
そういうなか、きちんと行動されて、
続けている背景には、
「最初に決めちゃったから」があるんですね。
糸井 自分が「冷たい人間だ」っていうこと、
ぼくらは知ってるんです。

ここにいるみなさんも自問自答してみたら
いいと思うんですけど、
被災地の人と
できたばかりの素敵な「カレシ」と、
同時に呼び出されたら、どっち行きます?
会場 (笑)。
糸井 ふつう、後者でしょ。
西條 うん(笑)。
糸井 自分たちは「そういう人間だ」ということを
前提にして
計画を組み立てなきゃならないと思うんです。
西條 でも、その発想はとても大事ですよね。

だって、かりに問題意識が下がってしまっても
支援活動には支障が出ないですから。
糸井 そうですね。
西條 ぼくらのサポータークラブのしくみもそうで、
参加していれば、
自分の問題意識に関わりなく
つねに自分の代わりに動いてくれる人の
活動を支えることができます。
糸井 うん、うん。
西條 ただ、このしくみの欠点は
銀行で手続きをしなければならないために
資料請求した人の半分くらいしか
申し込んでもらえないことなんですが、
被災地のために何かできることはないかと
思っているかたには
ぜひ、参加してほしいなと思います。
糸井 なるほど。
西條 今後、「寄付」については
どんどん「難しく」なってくると思っていて。
糸井 どうしてもね。
西條 ですから、ぼくたちも
宮本亜門さんがリーダーを務めてくださっている
うれしいプロジェクトはじめ
マンガ・イラストチャリティープロジェクトなど
チャリティーを活かした体制に
移行しているところなんです。
糸井 ええ、ええ。
西條 やはり、時期によって
有効な「方法」は、どんどん変わっていくので。
<つづきます>
2012-02-24-FRI