原丈人さんと初対面。 考古学から『21世紀の国富論』へ。ベンチャーキャピタリストの原丈人さんと 糸井重里が会いました。 最初、コンテンツにしようなんて 考えてなかったのですが そのときの話が、とにかくおもしろかったのでした。 考古学者のたまごから 世界が舞台のベンチャーキャピタリストへ。 一歩一歩、「現場」をたしかめながら歩んできた 原さんの「これまで」と「これから」。 そこにつらぬかれている「怒り」と「希望」。  ぜひどうぞ、というおすすめの気持ちで おとどけしたいと思います。 ぜんぶで10回、まるごと吸いこんでください。 あなたなら、どんな感想を持つでしょう。


第7回 ベンチャーキャピタルって、考古学と似てる!
当時、スタンフォードには、
アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズが、
しょっちゅう来てたんですよ。

当時、設立されたばかりでしたけど。


糸井 ああ、そいう時代なんですね。
アップルなんてヘンな名前だなぁって‥‥。
なんで、コンピュータなのにアップルなんだと。

リンゴのマークがついてるし、
コンピュータだとわからなかったやつが
冷蔵庫にしまっておいただとかね、
そういう話がいっぱいありましたよ、当時。
糸井 なるほど、はい、はい。‥‥ほんとかな?(笑)
そのほかにも、スタンフォードには、
なにやらヒッピーみたいなね、
わたしとあまり歳格好も変わらないような
若い創業社長が、
けっこう何人も出入りしてたんですよね。
糸井 そこで「オレにだって、できる!」と?
うん、こいつらがやれてるんだったら、
わたしにもできるはず。

少なくとも、こっちのほうが、きちんとしてる。
だいたい、やつらはいいかげんだし‥‥なんて(笑)。
糸井 うん、うん(笑)。
でも、そのときに不思議だったのは、
彼らの会社って、
2年や3年で大会社になっちゃうんです。

もちろん日本にだって、
本田宗一郎や松下幸之助をはじめ
偉大な創業者はいるけれど、
ホンダや松下が
あれだけ大きな会社になるまでには
何十年と、かかってるわけじゃないですか。
糸井 なにがちがうんだ、と。
はい、で、調べたんですよ。

そうしたら、
経営のイロハなんて知らないんだけれど
すぐれた能力や夢を持ってる若者を見い出して、
彼らに経営力と資金を出してる人たちがいる‥‥
ということが、わかったんです。
糸井 それが、ベンチャーキャピタルだった。

そのとおりです。

すぐに百科事典で
「ベンチャーキャピタル」という言葉を引いた。
でも、載ってない。

そこで、たしか、ベンチャーは「冒険」だし、
キャピタルは「資本」だな、と。

「冒険資本」なんて言葉は聞いたことないけど、
ひょっとしたら、
わたしが知らないだけかもなと思って、
こんどは国語辞典にあたってみた。

でも、やっぱり載ってない‥‥。
糸井 それじゃ、なんなんだ、と。
図書館にいっても、わからない。

ベンチャーキャピタルに関する文献なんて
まだない時期ですから。

それでも、なんとか調べだして、
だんだんだんだん、
これは‥‥たいへんおもしろいぞと。
糸井 こんどは、その場所が。
ええ。つぎは、そこに行こうと。

‥‥でも、決め手はね、
考古学と似てるなと思ったんですよ。
糸井 ほう‥‥。
たとえば、わたしがおもしろいと思って、
なにかを掘り出したり、
なにかを見つけたりしたとするじゃないですか。

で、そんなもの、どこがおもしろいんだと、
いわれちゃうとしますよね。

でも、それが「ルーブル博物館」へ入ったら?
みんな‥‥「すごい!」というんです。
糸井 なるほど(笑)。
ベンチャーキャピタルもいっしょ。

わたしが、見込みがあると思った企業を、
なんの条件もなしに評価する
オピニオンリーダーとか学者なんて、
ほとんどいないんです、その時点では。

でも、たとえばバングラデシュの会社が、
創業から2年で250人の従業員を雇用して、
業績も上向きになりそうだとなると‥‥。

IMF総会のモデルケースとして
とり上げさせてほしいと、こうくるわけですよ。

そうなると、もう、
遺跡のカケラがルーブル博物館に入るのと
いっしょでね。
糸井 バングラデシュの会社って、
もう軌道に乗ってるんですか?

2年のスピードで?
ええ。だから、これはおなじ職業じゃないかと。
糸井 そうだ。たしかに(笑)。
ますます、わたしにもできるじゃないかと
思ったんですよね。

だから、
ベンチャーキャピタルをやろうというのも
ビジネススクールにはいって
3〜4カ月めぐらいには、もう、決めてましたね。

2007-11-28-WED

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN