SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

シーマンの話 その1

「シーマン」のテレビコマーシャルが頻繁に流れていまして、
(見たくもないのに)目にされた方も少なくないと思います。
そう、宣伝のとおり、いよいよ11月15日(本日)、
PS2版の「シーマン」が発売されました。



PR活動に伴ってここのところ
「今回のバージョンはこれまでとどうちがうのか?」、
という質問を多くされるのですが、
雑誌などではなるだけ
「あまり変わっていません」と答えるようにしています。
実は、水槽の中だけで展開されていた
従来の育成環境と比べると、
今回は「海」や「熱帯雨林」など
育成環境に広がりをもたせました。
が、パッケージデザインも、タイトル名も、
わざわざ以前のものと変わらないものでいくことにしました。
この件についてパブリッシャーさんは
いつも怪訝な表情をしていましたが、
なぜ新しさをあまり言わないようにしているか、
についてお話します。
☆        ☆
ゲームというのは、
「XXモード搭載!! より高度な対戦プレイを実現」
とか
「通信機能搭載により、マルチプレイヤーに対応!!」
といったように、得てして従来品よりも高度で
複雑であることをウリにしてしまいがちです。
より複雑な要素というのは、しかし、
これからゲームを始めようとしているビギナーにとっては、
敷居が高いものでもあります。
極論すればマイナス要素といえなくもない。
これはゲームに限らず、音楽も映画も、
あらゆるソフト制作者がついつい陥りがちな
ジレンマのようです。
熱烈なファンレターやアンケートはがきを送ってくれる
ユーザーというのは、玄人的な、いってみれば
業界の視点で見ている人が多いものです。
本当の一般的な意見というのは、
私たち制作者の耳にはいってくることはあまりない。
つまり私たちが参考にしがちな意見というのは、
実はおのずと偏っていることが多いのです。
☆        ☆
かつて「ボンカレー」という
レトルトカレーの定番商品がありました。
「ずっと変わらぬ美味しさ」とうたっていた時期は、
地味ながらも細く長く支持されていたこの商品。
しかしやがては競争が激化し
「よりいっそう美味しくなりました」といいはじめた。
そうなると、引き返すことが困難になって、
やがては「ボンカレー・ゴールド」と名前を変え、
そして最近ではみかけなくなったわけです。
でも「シーマン」は、
「機能がすごいこと」をウリにしているタイトルではない。
「なんだよ、このバカバカしいのは・・(笑)」
っていわれるのが特徴です。
プレイヤーの腕を競うゲームではない。
そのぶんゲーム誌の評価も、いつも低い。
なのに、わざわざ急いで、「すごさ」を見せて
敷居を高くする必要はないのでは?
というのが制作者である私たちの意見でした。
☆        ☆
ゲーム産業というのも、損益分岐が高くなったせいか、
あるいは不景気のせいか、やけにせっかちです。
「なんとか初回出荷で資金回収を」となってしまう。
例にもれず「シーマンfor PS2」は初回出荷で20万本という、
大変な数字をパブリッシャーさんは作ってくれたようです。
これはこれでありがたいことですが、
いきなり消化不良をおこさないか、ちょっぴり不安です。
なんたって、ドリームキャスト版が55万本売れたといっても、
初回出荷はたった2万4000本だったんですから・・。
つまりほとんどの人は、
発売日からずいぶんたって買ってくれたわけです。
しかもその多くは、
いわゆるゲームユーザーではなかったそうです。
(発売前のこちらのコラムを読んでください。
 「シーマン」がいかに期待されていないタイトルだったかを
 窺い知ることができますヨ)
昔のマックのソフトみたいに、評判でじわじわと売れる、
というのが本来もっとも健全な売れ方のようにも
思えるのですが、
ほぼ日読者の皆さんはどうお考えになりますか?




次回につづく

2001-11-15-THU

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