メイキング・オブ・VOLUME(ボリューム)  アンリさんの手帳カバーができるまでの物語です。
 
第1回 「オーラ」を信じて。
 
糸井 まず、最初にぼくの感想なんですけど、
思った以上に「アトリエ」という気分が工場全体にあって、
ほんとに手で作ってるんだなって実感しました。
ほとんど、モーターの音がしてないでしょ。
それはびっくりしました、あらためて。
アンリ はい。
糸井 このぼくらが作ってきた手帳に、
いつかアンリさんのカバーをつけてみたいなって、
誰にも言わないで思ってたんですけど、
前に、アンリさんの、本のカバーが売ってたので、
買って、それをつけていたこともあります。
もし、ほぼ日手帳のカバーをアンリさんが作ったら、
こんなふうになるんだろうなって、想像してたんです。
だけど、それが実現してしまって、
ほんとのことを言うと、
今でもなんか、実感がまだ湧いてないんです。
アンリ ははは。
糸井 目の前で、作ってるのを見たのにね(笑)。
アンリ ははは。OK。いいですよ。
糸井 ありがとうございます。
最初にアンリさんにお訊きしたいのは、
今までいろんなコラボレーションが
あったかと思うんですけども、
これを引き受けてみようって思われた
きっかけみたいなものはなんですか。
アンリ そうですね、
コラボレーションはやったことはありますが、
やはり、コラボレーションは、
仕事ということだけではなくて、
人と人、人間性と人間性で決まると思います。
糸井さんの人間性があるからこそ、
こういういいものができたんだと思います。
まずコラボレーションできたことに対しても、
とても光栄に思っていますけれど、
わざわざ日本から、
この手帳カバーを作るところ、
最初から最後まで見たいという、
そういうリクエストというのは、
今まで、実際なかったもんですから、
ぼくには、新しい発見でしたし、
そのことも、とても光栄に思っています。
糸井 うれしいです。
アンリ みなさんがいらっしゃったことが、
これからぼくに、
つくる意欲というエネルギーを
あたえてくれることになると思います。
糸井 うれしいですね。とってもうれしいです。

では、この手帳カバーについてですが、
すぐにアイディアは決まりましたか。
自分なりにこの手帳カバーは
こんなふうにするんだってイメージは
すぐにできましたか?
アンリ そうですね。それは、ぼくひとりだけでは
たぶん、できあがらなかったでしょう。
もともとぼくのアイディアは、
ブックカバーと、あと、しおりの部分、
だけでしたから。
そこに、ペンさしが付いて、ペンをさして、
カバーを閉めることができるようになって、
これの完成度が、高くなったと思っています。
糸井 うんうん。
アンリ これは、カバーのことだけではないんですけども、
毎回、シンプルなものっていうのは、
とても難しいですね。
シンプルなものに、そこに息を吹き込んであげる
っていうことを、ぼくは、毎回、コレクションで
挑戦していることなんです。
このカバーについても、息を吹き込みたい、と。
それができたことだと思うんですけど、
どうですか?
糸井 うん。
アンリ こちらは、毎日毎日使うものです。
なので、使っていけば、使っていくほど、
持って行けば、持って行くほど、
ここに、あちこちに、傷ができるかもしれない。
だけど、それが愛しくなることを願っています。
糸井 うんうん。そうですね。
これからはじめてこの手帳カバーを出すので、
まだ、誰の手にも渡ってないんですけど、
手にした人が、まず驚くのは何だと思いますか。
アンリ たとえば、プレゼントされたりとか、
自分で買ったかたが、これを開けたときに、
まず見て驚いて、感激してくれるんじゃないですか。
そして、ひとつひとつをじっくり見て、触って、
また別の感情が湧きあがって、
ビーズを見て、また感激してっていう。
工業生産ではない、手で、ハンドで、
すべて、手作業でつくっているものなので、
絶対そういう感情っていうのは、
触った人に通じるものだと思います。
糸井 日本でよく流行ってる言葉で、
「オーラがある」っていう言い方をするんだけど、
それを信じていますよね。
アンリ はい。それは、もう、たしかにそうです。
ぼくの文化の中には、たぶん、今まで、
そういうものはなかったかもしれないけれど、
でも、ぼくは信じます。
その「オーラ」があるものに関しては。

手で作っているものなので、
手のエネルギーが、そのもの、
その、作られてるものにも通じていて、
別のかたが、この手帳カバーを買われて、
手で触ったときに、そのエネルギーが、
そのものを通じて、また伝わってくる、
というのを、ぼくは信じています。
糸井 うーん。
そのことについて、なぜだろうって
考えたことはありますか。
「オーラ」があるものとないものがあるでしょ。
アンリ やはり、まず、すべてにおいて
クオリティーが大切になってきます。
それは、素材を選ぶクオリティーと、
ものを作るときの愛情のクオリティーです。
時間をどれだけかけられるか、
時間もぼくにとっては愛情なので。



やはり、価格を気にしながら、
やらないといけないんですけど、
コストが高くなるのでこの素材は使えない、とか、
そういうことばっかりを考えた製品っていうのは、
やはり、手に愛情をかけた製品と比べると、
もう天と地ほどの差がついてきます。

やはり、すべてに精力をかけてやるものは、
「オーラ」が出てくるんだと思います。

〈つづきます。〉
 
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https://www.youtube.com/watch?v=bhcZWNMcbrQ
2009-12-01-TUE
(c) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN