忘れないうちに書いておかなくっちゃ。 ほぼ日リニューアル物語

第3回 挫折と8周年宣言
ミーティングは解散したものの、
止まってもらっちゃ困る、
リニューアルプロジェクト。

全員がはげしく落ち込んだミーティングから数日後、
再び白羽の矢が立ったのは
さまざまなコンテンツの編集を手がける永田と
ページのラフをデザインしたぐっさんのふたり。
大勢で、てんでに意見を出し合って混乱した反省から、
「最小メンバーでたたき台をつくる」
ということになったのです。

いまになって考えれば、
大勢あつまったあのミーティングも
ムダではなく、ほんとうに意味があったのですが
当時は、反省ムードをひきずっていて、
「このまま多人数で話し合いを続けていくと
 いつまで経ってもまとまらない」
というふうに切実に感じていたのです。

だったら、いっそ少ない人数で、
根本的なところから見直してみよう、と
まったく逆の方向に舵を切ることができるのは
零細企業ならではの、
フットワークの軽さとでもいいましょうか。

しかも、この「永田&ぐっさん」コンビは、
過去に数々の「ややこしい企画」を
会議を重ねるというよりは手を動かしながら
あうんの呼吸でなんとか仕上げてきたふたり。
きっと、なにかを形にしてくれるはず、と、
進行役のナカバヤシは信じていたのです。

ところが、です。
できあがったのラフは、
このようなおかしなもの‥‥。



なななな、なんですか、これは。
たしかに「根本的なところから見直そう」とは
言いましたけれども、これはいったい‥‥何?

じーっと見ていると、
こみ上げてくるものがありますね。
くくくくくっ。わっははははは!
あは、しっけい、しっけい。
わらっちゃいけないですね。
当時のことをふたりに訊いてみましょうか。

いやぁ〜、ひさびさに、というか、
はじめてかもしれないけど、
永田さんの言ってることがわからなかった。
だって、あの人、
「デザインのことはいったん忘れて
 イメージをかたちにしてみよう」
とか言うんですよ。
ボク、デザイナーですよ?
「デザインじゃなくてイメージ!」
って言われても、けっきょくは
それを形にしなきゃいけないんだから。
それでもふたりでいろいろいじってたんですけど、
だんだん‥‥無言に‥‥。

うん、ダメでした。
「あれ? 伝わらないの?」って感じでした。
表面的なことはおいといて、
こんなふうな感じさ! って話してたんだけど、
それをやるには、もっと自分の中で
イメージを固めておかなきゃいけなかった。
理想と具体を、いったりきたりしながら
説明してたから、ぐっさんも困っちゃったんだね。
でも、このラフ、個人的には、
いまの完成形に活きてるんですよ。
ひとことで言えば、
「まず『今日のダーリン』があって、
 『更新された個々のコンテンツ』が
 わかりやすくそれを取り巻いている」
というふうに考えていたから。

まあ、それぞれ、
当時はたいへんだったみたいですが、
この、非常におかしなラフを見た私は、
率直に言って目が点になりました。

そして、いいラフができなかったことよりも
もっともっと困ったことは、
それっきりふたりがリニューアルのことを
口にしなくなったことなんです。

しかも、「ほぼ日」は毎日更新ですから、
どんどんどんどんつぎの企画が動きます。
「ややこしい企画」を抱えがちなふたりは、
リニューアル会議の頓挫なんて
まるでなかったかのように、
ほかの企画を忙しく進めていきます。
そのようにして過ぎていく日々‥‥。

こ、これは‥‥!
大きな企画がなんとなく立ち消えになる
典型的なパターンではないか!

またしても、おろおろする私。
だって、進行役ですからね。
進行役は進行させるのが仕事ですからね。
ああああ、どうしよう?
と思っていたところ、再開のきっかけは
やや乱暴な形で訪れたのでした。

先日のリニューアルからさかのぼること
ちょうど1年前の2006年の6月6日。
「ほぼ日刊イトイ新聞8周年を迎えて。」
にて、糸井重里はこう宣言しました。


ぼくらなりの新しい「ほぼ日」を
再構築していく必要を、感じています。
増改築を繰り返してきた
古い温泉旅館みたいなものは、
少しずつなのか、一気になのか、
解体しようとしています。
変化をできなくなったら、
おしまいだと思っていますので、
必ず実行します。


わーーー! 言っちゃった! 書いちゃった!
まだぜんぜん形になってないのに!
やばいよ! マジだよ! なんとかしなきゃだよ〜。

ていうか、どうにかしなきゃ!
進行役は、進行させるのが仕事なんだから!
そう思いながらも、
もどかしく日々は過ぎていくのでした‥‥。


(つづく)




2007-09-20-THU