── |
堀尾さんは、新感線の舞台もずいぶん多く
手がけてらっしゃるようですが。 |
堀尾 |
そうですね、
『メタルマクベス』『吉原御免状』
『SHIROH』『髑髏城の七人〜アカドクロ』
『髑髏城の七人〜アオドクロ』
『朧の森に棲む鬼』『花の紅天狗03』
『野獣郎見参』『阿修羅城の瞳』『西遊記』‥‥。 |
── |
はい、『朧の森に棲む鬼』。
あの作品はとくに舞台美術がすごかったような。
たいへんだったのではないでしょうか? |
堀尾 |
いや、どうでしょう、
そうでもなかったかもしれません。
|
── |
そうなんですか?!
あのものすごい舞台装置が、
それほどでもなかった。 |
堀尾 |
ええ。劇場そのものが新橋演舞場で、
歌舞伎の前例が蓄積されていますから、
水を使うことは過去にもあったので。 |
── |
ああ『朧』は水が、
というか「滝」がものすごかったです。 |
堀尾 |
ほんとはもっと水量を
増やしたかったくらいです(笑)。
たいへんということでいうと、
えらいことになりそうなのは『IZO』ですね。
(※取材はこの公演の直前でした)
脚本では、50のシーンがあるんですよ。 |
── |
50シーン!? |
堀尾 |
技術的にも予算的にも50は無理です。
30にしましょう、と。 |
── |
それでも30シーンもあるんですか? |
堀尾 |
ミュージカルは、
だいたい30シーンくらいありますから。
30なら平気なんです。
演出のいのうえひでのりさんも、
「50は難しいですよねえ」と。
結局、20シーンは映像で工夫します
ということになりました。
(※この舞台、観てまいりました。
怒濤の場面転換、すばらしかったです!) |
── |
新感線の場合は、
演出家から先に舞台美術の
注文のようなものがきたりするのですか? |
堀尾 |
まずはぼくが脚本をもらってからですね。
中島かずきさんは本が早いですから、
ひとまず受け取って、ぼくのほうで考えてみます。
それで提案するんですけど、
いのうえさんも、けっこうラフを描いてきたり
されるんですよ。
いつも鉛筆とコピー用紙もってきて、
「こんな感じで」みたいに。
それを大いにヒントにして‥‥
というかもう、頼りにしますね(笑)。
|
── |
一緒に考えるような。 |
堀尾 |
ええ、いのうえさんは、
ぼくにはないものを持ってますから。
まったく予測できない結果に
引っぱっていかれるたのしさがありますね。
三谷幸喜さんも野田秀樹さんも、
その意味では同じです。
自分が知らない世界に連れていかれる
たのしさがすごくあります。
|
── |
そうなんですよね、
堀尾さんは、ぼくらが観ている
三谷幸喜さんと野田秀樹さんの舞台も
たくさん手がけてらっしゃるんですよね。
三谷さんですとどんな作品を? |
堀尾 |
1997年の『バイ・マイセルフ』からずっとなので
もう10年以上になりますね。
『12人の優しい日本人』『オケピ!』
『バッド・ニュース☆グッド・タイミング』
『決闘! 高田馬場』『なにわバタフライ』
『コンフィダント・絆』『彦馬がゆく』
『You Are The Top』『マトリョーシカ』
『恐れを知らぬ川上音二郎一座』‥‥
などでしょうか。 |
── |
すごい‥‥いくつかは観ています。
三谷さんの場合はどうなんでしょう?
舞台美術は。 |
堀尾 |
脚本がぎりぎりの場合もあるので(笑)。
三谷さんは、
「頭に入ってるから大丈夫。安心してください」
と言われるんですが(笑)。
でも、ずっと同じ場所で場面転換しない
一場ものがほとんどなので、
50シーン! ということはないですね。 |
── |
なるほど、野田秀樹さんとはどんな作品を? |
堀尾 |
野田さんと初めてやったのは、
『真夏の夜の夢』です。
それからは、ずいぶんやらせてもらいました。
『贋作・罪と罰』『ロープ』『The Bee』
『キル』『ローリングストーン』『虎』
『TABOO』『ライトアイ』『パンドラの鐘』
『半神』『農業少女』『贋作・桜の森満開の下』
『透明人間の蒸気』『オイル』『研辰の討たれ』
『ねずみ小僧』『マクベス』‥‥いろいろです。 |
── |
そうですかあ、やはり観ている作品多数です。
大きな舞台では、ほかにどのような? |
堀尾 |
中島みゆきさんですね。 |
── |
え?!
‥‥ひょっとして、『夜会』を? |
堀尾 |
『夜会』は10回までぼくでした。
いまはコンサートと『夜会』を
交互にやらせてもらっています。 |
── |
え、じゃあ、この前のコンサートも‥‥。 |
堀尾 |
あれはぼくです。 |
── |
ああー! どうりですごいセットでした。
「ほぼ日」ではそのころに、
中島みゆきさんと糸井の対談も掲載してるんです。 |
堀尾 |
あのステージのテーマは、
「武士道」だったんです(笑)。 |
── |
武士道!
そ、それはわかりませんでした。
なんですか、こう、工場のような雰囲気で。 |
堀尾 |
そうそう(笑)。
いや、これもね、騙す方法なんですけどね。
みゆきさんが、「今度は武士道ですからね」
って言うんですよ。
「ああ、武士道ですか。任しといてください」
とぼくはこたえてね。
でもこれを、
武士道だからってそのまま「和風」にするとね、
みゆきさんはだめなんですよ。 |
── |
へえええ〜。 |
堀尾 |
だから、「あなたの武士道はこれです」
って言って出したのが、 |
── |
あのステージだった。 |
堀尾 |
もう、寂れた校舎というか、廃虚ですよね。
具体的ではないんです。でも、強さがある。
その模型を見せて、
「あなたの武士道はこれです」
|
── |
それでOKになったんですね。
‥‥奥行きがあって、
あれはなんていうんでしょう、
やはり演劇的なステージだったと思います。 |
堀尾 |
登場を舞台の奥にしたり、
舞台そのものをゆがませたり、
みゆきさん、好みなんですよ。 |
── |
そうですかぁ。
それにしても、
ことごとくぼくらの好きなステージを‥‥。
チケット入手が難しい公演ばかりですよね。
こうした大きな舞台を手がけるようになったのは
いつごろからで? |
堀尾 |
最初は野田秀樹さんのところですね。 |
── |
そうでしたか。
では、それまでは? |
堀尾 |
主にオペラの舞台美術でした。 |
── |
オペラ。 |
堀尾 |
ええ、オペラはいまでも
やりたくてしょうがないんです。
高校時代は新劇が好きだったんです。
|
── |
新劇。 |
堀尾 |
文学座、青年座、俳優座のような、
普通の現代劇です。
それがなぜか、野田さんのような、
なんだかスポーツみたいな
奇妙な舞台をやるようになってるんです(笑)。 |
── |
どういう経緯で、
野田秀樹さんに出会ったのか
とても興味があります。 |
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(つづきます) |