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糸井 |
「楽しく食べなさい」って言われるじゃないですか。
だとしたら、黙って食うわけにいかないじゃないか、
っていうのが、俺、言い訳なんだけど(笑)。 |
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堺 |
うん。
でも、食べながら演技するって、
実はものすごい品が悪いことなんですよね。 |
糸井 |
勿論そうですよ。
それを両方言われるわけですよね。
「もっと和気あいあいとにぎやかに食べながら、
笑ったりしてないで食べよう」って。
どっち取ればいいんだって思うんですよ。
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堺 |
そうなんです。品よく交われって
言われてるようなもんで。 |
糸井 |
実際には、本当に黙って食べてるのは辛いよね。
どんよりしますよね。 |
堺 |
あ、そうですか。
でも、ラーメンかなんか出てきて、
無口になって、無心な瞬間っていうのは
ありますよね。 |
糸井 |
ある、ある。
ラーメンは黙ってます、ぼく。
ラーメンは無理です。
(みんなに)ラーメン、無理だよな。 |
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── |
無理ですねえ。 |
堺 |
『南極料理人』の中でも、
ラーメンがあって。 |
糸井 |
あるあるある。 |
堺 |
結局黙っちゃったんですよね。
しゃべれなくて。
「伸びちゃうよ」しか言えなかった。
糸井さんでもラーメンは黙るんだ。 |
糸井 |
無理。
黙るっていうか、無理。 |
堺 |
(笑)吸う作業ですからね。
吐きながら吸えないですもんね。 |
糸井 |
鼻でしゃべるしかないよね(笑)。
あ、でも、やればできるね。
つまり、落語で『時そば』ってあるじゃない。 |
堺 |
そうですね。今ぼくも思いました。
「そば」ですね。 |
糸井 |
だから、やればできるね。
タコは相当きついよ、やっぱり。 |
堺 |
タコ、なんだろう。
なんでこのしゃべりにくさは。 |
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糸井 |
本当に噛む必要があるんだろうね。 |
堺 |
(笑)本気でね。 |
糸井 |
(むしゃむしゃ食べながら)
この納豆コールスローはすごいね。
イギリスパンの薄いトーストかなんかをこう、
カリッとやって、
で、またこれやって、みたいな。
ガーリックトーストにしてもいいし。
でんぷんは少なめだけど、
ご馳走にしちゃえば、これ、
いくらでも食えますね。
ちっきしょう。
なあ、ずっと食ってたいよな。
コールスローって元々俺、好きなんだよね、実は。
すごい量のキャベツでしょ、これ? |
一同 |
(やっぱり食べながら喋ってる‥‥) |
飯島 |
この後は、焼きそばに合うメニューとして
唐揚げも。 |
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一同 |
おぉ〜! |
堺 |
(うれしそうに)
焼きそばに唐揚げ?! |
飯島 |
あとですね、
玉ねぎを焼いた‥‥ |
糸井 |
(うれしそうに)
玉ねぎを焼いた?! |
飯島 |
玉ねぎにホタテの水煮缶を汁ごと入れて、
混ぜて、それをチヂミみたいに
ちょっと焼いたもの。
練りからしと塩で。 |
糸井 |
(目をつぶって天を仰いで)
あぁー! |
飯島 |
あと、レモンパイを作りました。 |
糸井 |
(ちょっとくねくねと)
んもう、余計なことを〜。 |
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堺 |
糸井さん、糸井さん(笑)。 |
飯島 |
ちょっとずつですけれど。 |
糸井 |
まずいなぁ。
踏み込まれたら捕まっちゃうよ! |
堺 |
『南極料理人』の撮影のおわりに
飯島さんたちと記念撮影をして
それを糸井さんに送ったんですよ。
そのメールの返事が、
悔しそうでしたもんね。 |
糸井 |
悔しかった! |
堺 |
文面から本当に、
ただただ悔しがってるんだ、この人は、
っていう気持ちが伝わってきました。 |
糸井 |
だって、ぼくは、何度、
用がないのにここに来たことだろう。 |
堺 |
(笑)。 |
── |
用、ありますよ。 |
糸井 |
いや、用があるフリをしてね。
食い物は人を引き付けるよね。 |
堺 |
そうですね。
ぼくもここで食べたいろんなものの味、
結構覚えてます。 |
── |
堺さん、ここで練習したんですか。 |
堺 |
ここで練習しました。 |
糸井 |
それは幸せな。
羽生善治の家で将棋を習った、みたいなね。 |
堺 |
(笑)ここ、ぼくの初アオリが
成功した現場です。 |
糸井 |
ふーん!
あおったんですね。 |
堺 |
あおったんです。
あれ、人んちのキッチンだとあおれるね。 |
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一同 |
(笑)。 |
堺 |
こぼしてもいいんだと思うと
あおれるんですね。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。 |
糸井 |
肉野菜炒め食べた? |
堺 |
肉野菜炒め? |
糸井 |
飯島さんの肉野菜炒め。 |
堺 |
食べてないですね。 |
糸井 |
それはね、ふふふふふ‥‥。 |
── |
焼きそばもそうなんですが、
『LIFE』の2巻に掲載するレシピなんです。 |
糸井 |
それが何でもないように見えるんだけど、
旨いんですよ。
なんて言っていいかわからない旨さなんだよね。
それこそ太文字がないのよ。 |
堺 |
ほぉー。 |
糸井 |
だから、『LIFE』で
「お父さんの」とかっていう言葉は、
太文字じゃない分を足してるんだよ。
飯島さん、きょうの焼きそばは‥‥、 |
飯島 |
まだ研究途中なんですが、
今日は2種類あって、
塩味のアサリ焼きそばと、
ウスターソースと両方。
書籍版はウスターソースです。 |
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糸井 |
へぇ〜! |
堺 |
すでに食べたい。
そちらのテーブルにはおにぎりが。
ちなみに、具はなんですか。鮭ですか。 |
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── |
鮭です。
これ、こちらは焼きそばが
少ないかもしれないのでと
作ってくださったんです。
おめしあがりになりますか。 |
堺 |
いや、ぼくはもう焼きそばまで、
がまんします! |
糸井 |
危険です。 |
堺 |
飯島さんのおにぎりは、
なんだろうっていう旨さでしたね。 |
糸井 |
あの映画の中におにぎり出てきたよね。 |
── |
飯島さんっぽいおにぎりでしたよ。 |
堺 |
これです、これです、本当に。
『かもめ食堂』もこれですもんね。 |
糸井 |
熱いご飯を握ったんだよね。 |
堺 |
握りました。 |
飯島 |
熱いですよね、本当に。 |
堺 |
ここで、最初におにぎりをつくったとき
本当に「ひやーっ」って言いましたね。
「うわっ」って。熱くて。 |
糸井 |
根性要るよね。 |
飯島 |
『かもめ食堂』でおにぎりをつくるシーンを
ワンカットで撮りたいと、
監督がとんでもないことを言い出して。
しかも「炊き立ての、
鍋を開けた瞬間の湯気が欲しい」って。
で、そのままクレーンで引いて、
そのままボウルに出して
すぐ握って、みたいな。 |
糸井 |
うわ〜! |
堺 |
もう本当に。火傷しそうなくらい熱いです。 |
飯島 |
でも、見てたら結構、もたいさんとか、
楽しそうになさってるんで、
意外に大丈夫なんだと思ってたら、
「カット」の声がかかったとたん、
みんな投げて(笑)。 |
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一同 |
(笑)。 |
飯島 |
やっぱり熱いんだ。
演技で、騙されました。 |
堺 |
ぼく、自分の隠れた才能を見つけましたね。
ぼくはおにぎりが握れる。 |
糸井 |
全体に、なんか上手そうだった。 |
堺 |
よかった。もうここで特訓ですよ、本当に。 |
榑谷 |
すごいんですよ。すごいきれいで、
すごいスピードでおにぎり握って。 |
堺 |
あれはメンズおにぎりでしたね。
このぼくの手の形。 |
糸井 |
いや、見事でしたよ。 |
堺 |
よかったです。
(つづきます) |