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糸井 |
堺くんがおにぎりを握るのがうまいっていうのは
やっぱり褒められる場所ですよね。
ああいうのは、監督とかわかってくれるのかしら、
「うまいですね」みたいな。 |
堺 |
いや、あんまり‥‥。 |
糸井 |
そういう会話はないんですか。 |
堺 |
監督に、おにぎりは褒められてなかったな。 |
糸井 |
そうですか。
でも32歳の監督が、
なかなか人を褒めるのは難しいですよね。
下から上に褒めるわけでしょう、つまり?
「お父さん、偉いね」みたいなことでしょ。 |
堺 |
(笑)嫌ですね。 |
糸井 |
「きたろうさん、演技うまいですね」
みたいになっちゃうでしょ。 |
堺 |
きたろうさんもそうだし、生瀬さんもそうですけど、
やりたがるのを抑えるほうに、抑えるほうに
監督は動いていましたね。
思い出しましたが、プチトマトのシーンは、
アドリブでした。 |
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糸井 |
あ、ありましたね。 |
堺 |
頼まずにあれをやりたがる人なんですよね、
きたろうさんは。 |
糸井 |
頼まずに、はいはいはい。 |
堺 |
「普通に食え」って言ってるのに。 |
糸井 |
あれはやっちゃった、やっちゃったのね。 |
堺 |
(笑)やっちゃった系ですね。 |
糸井 |
でも、あのくらいはあっていいんだよね、
お客さん的にはね。
禁じて禁じて吹き出すものはOK、
っていうことなんだろうね。 |
堺 |
(料理を見つめて)
うーん。もうちょっと食べようかな、
ちょっとペースが掴めないな。 |
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── |
これから唐揚げと、焼きそば2種類、
デザートも来ますよ。
もうキッチンでは麺を‥‥なにかしています。 |
糸井 |
音とか、ジャージャー言わないのね。 |
飯島 |
それは今からです。
まず、アサリを蒸してたんですけど、
その汁を麺に吸わせてから、
ごま油とニンニクで炒めて。 |
堺 |
パスタの話してるみたいだね。
焼きそばなんだね。 |
糸井 |
焼きそばって、ところで、何、あれは?
ラーメン? |
飯島 |
ソース味の焼きそばっていうのは
もう「焼きそば」としか言いようがないですよね。
中国のものとも思えないですよね、
あのソースの感じが。 |
糸井 |
ラーメンの麺と何が違うんでしょうね。 |
飯島 |
だいたい一般的には蒸した麺に油をまぶして、
パックして売ってるんですけど、
今日はラーメンの麺を茹でて、
それで作ってみました。 |
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堺 |
へえ! |
糸井 |
え? 今日は、
焼きそばの麺じゃなくて、
ラーメンの麺なんですか。 |
飯島 |
はい。 |
糸井 |
それはイコールでいいんですか。 |
飯島 |
はい、多分。 |
糸井 |
本当ですか(笑)。 |
飯島 |
私もそれについては悩んでたんです。
製麺所に焼きそばの麺を売ってるんですけど、
生もあって、蒸して油をまぶしたのもあって。
で、蒸したところがちょっと違うんですけど、
もとは同じでした。 |
糸井 |
たしかに焼きそばの麺を
ラーメンに使ってみたくなるね。
でもなんか過剰に黄色い気がするんだ、
市販の焼きそばの麺は。 |
飯島 |
確かにそうですね。黄色いですね。
でも、広尾の中華屋さんで、
この間何気なく食べた焼きそばが
すごくおいしかったんで、
「この麺はなんですか」って訊いたら、
「このラーメンと同じ麺だよ」って言われて。 |
堺 |
同じのを! |
飯島 |
なるほど、そうかと思って、
ただ製麺所の麺は手に入り難いので
『LIFE』では、
一般的に「焼きそば」として
売られている蒸した麺を使う予定です。 |
糸井 |
ところで切り干し大根について
一言も述べてなかったんですけど、
おいしいです(笑)。だしが効いてて。 |
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堺 |
すごくあっさりしてますよね。 |
糸井 |
流れの中で食べる量は少なかったんですけど、
おいしいです。 |
堺 |
これだけでご飯いけますね。 |
堺 |
「役者はミョウガを食べると、
台詞を忘れるから、食べない」って、
佐藤浩市さんが現場でおっしゃってたんですけど、
いろんなタブーがあるんですね、俳優って。 |
糸井 |
ミョウガは忘れるっていうのは言われるよね。 |
堺 |
うん。あと、大根は食べない、
ていう人もいるし。 |
糸井 |
大根役者?
そういうことか。 |
堺 |
食のタブーってあるのかな、他に。
‥‥おっとっとっと。
来た、来た、来た。 |
糸井 |
これは! |
堺 |
アサリの! |
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糸井 |
いただきます! |
堺 |
はい、いただきます! |
糸井 |
焼きそ〜ば(「そ」にアクセント)! |
── |
焼きそ〜ば(「そ」にアクセント)? |
堺 |
(気にしないで)
すごい! なんかさっぱりしてて。 |
糸井 |
ね!
焼きそばという飯島さんの空間が
埋められちゃったね。堺くんのせいで。 |
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堺 |
(笑)そうか、ついに。
無心に打った球だったんですけどね。 |
糸井 |
打った球が、
心臓に当たっちゃいましたよ。
どやねん。どないだっ。 |
堺 |
おいしい! |
飯島 |
アサリ味です。 |
糸井 |
中国に来たみたい! |
堺 |
飯島さんの完成形ではないかもしれませんが、
始まりの焼きそばっていうことで、
いいんじゃないですか! |
糸井 |
うん、うん、うん。
旨い。旨い、旨い。
この、もやしの加減がまた絶(ゼツ)ですな。
うん。うみゃい。 |
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堺 |
立派なアサリですね。 |
糸井 |
アサリね。これアサリ。
ディス イズ アサリ! |
── |
(食べながらほんとによく喋るなぁ)。 |
糸井 |
アサリ。日本語で言ってみよう。
あさり。あさり(笑)。
俺、うるさいっ。 |
堺 |
(静かに)これ、うまいですね。 |
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糸井 |
うん。更にこれを改良する意思があるわけでしょ。 |
飯島 |
ラーメンの麺は大丈夫ですか。 |
堺 |
全然、なんの違和感もありません。 |
飯島 |
私、焼きそばが好きなあまりに、
「もうちょっと焼きそばに
敏感になったほうがいいんじゃないか」って
言っちゃったりするんです。 |
堺 |
焼きそばに敏感に(笑)。 |
飯島 |
どんだけ焼きそば好きなんだって。 |
堺 |
いやいやいや。
これ、ぜんぶ食べちゃっていいんですか。 |
糸井 |
どうぞ。 |
堺 |
これ、旨いなぁ。 |
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糸井 |
こっから更に進化していくんだと思うと
恐ろしいね。どっちに行くんだろう。 |
── |
これを進化させるのではなく
『LIFE』はソース焼きそばでいきたいと。 |
糸井 |
これ、じゃあ、秘密の焼きそばね。 |
飯島 |
はい、秘密の。
(つづきます) |