楽しきこともなき人生に、 いかがですか、ご馳走は。  堺雅人さんと、満腹ごはん。
第13回 行ってください。あなたはお若いんだから。<
糸井 そういえば、堺くんの
『アフタースクール』も観ましたよ。
あれもおもしろかったよね。
堺 ありがとうございます。
糸井 ああいう作りってさ、
ぼくね、『キサラギ』から──。
堺 『キサラギ』ね、そうですね。
糸井 『キサラギ』、『アフタースクール』、
要するに、縦軸、横軸を
完全に上手に埋めていってっていう、
そういう映画を作る人が
どんどん増えてってるような気がして。
堺 かもしれないですね。
糸井 で、この間の『スラムドッグ$ミリオネア』。
堺 ぼく見てないんです。
糸井 あれも実は、
『キサラギ』型なんですよ。
堺 へ〜え!
糸井 織物だとすれば、
縦糸はこう、横糸はこうっていうことを
すっごい知的なゲームとして
完全に俯瞰で作っていて、
気の毒なインドの現実みたいなことを言わせない
何かスカッとした部分があった。
「俺はこんなこと言えた義理じゃない」
っていう監督の遠慮があるんですよ。
そこは清潔感があるんですよね。
あれ、『キサラギ』だと思った。
堺 『キサラギ』の前にあったんですか。
『キサラギ』的な何かっていうのは。
糸井 あれでしょ、
『レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs)』でしょ。
堺 ああ、そうか、そうか。
糸井 それからコーエン兄弟の
殺人間違えてやっちゃって、
死体を隠す話(『ファーゴ』)だとか、
結構コツコツと。
堺 あるんですね。
糸井 でも、おおむね『レザボア・ドッグス』で、
それのバリエーションで、
『パルプ・フィクション(Pulp Fiction)』。
でも『キサラギ』は、
もうくどいくらいよくできてたよね。
堺 そうですね。そうですね。
糸井 うわーっなんて言ってね。
堺 『アフタースクール』撮った内田けんじさんは、
ぼくの1コ上なんですけど、
サンフランシスコの映画学校で勉強してるんですよ。
高校卒業して、向こうの大学行って。
で、西海岸ですから、
スノッブさがないんです。全然。
「好きな映画は、ジャッキー・チェンの
 『プロジェクトX』だ」とか、
言ってるような人だったりするから。
糸井 なるほどね。
内田けんじさんって、あとなんでしたっけ?
堺 『運命じゃない人』。
あれも、『キサラギ』的ですね。
糸井 要するに、神の場所に
ちゃんと立とうっていうことですよね。
堺 ああ、そうですね、
そうです、そうです。
糸井 アニメーションってそうだと思うんですよね。
アニメーションって、
脳の中のないものは何も映らないじゃないですか。
で、その意味では、
アニメーションの作り方っていうのと、
影響を受けあってるような気がするんですよ。
「ないものはないんだから、作れよ」っていうさ。
堺 空虚にちゃんと立ち向かってるところはありますね。
糸井 そうしたら、ここで矛盾が生じるっていうのを
ひっくり返してもいいし、そのまま通してもいいし。
そこの、その若い世代を感じたよね。
堺 内田さんはすごいなと思いましたよ。
西海岸を照れずに西海岸してるっていうのかな。
で、それはやっぱり
アニメとは異なるかもしれないですね。
糸井 あぁー。もう1個、あれもそうだったな。
『アヒルと鴨のコインロッカー』。
堺 『アヒルと鴨』の監督と
今、やってるんですよ。
中村義洋監督。
糸井 『ゴールデンスランバー』ですね。
舞台も仙台で。
堺 そうです。原作が伊坂幸太郎さんで。
糸井 そうか、そうか。
それはきっとおもしろいだろうね。
‥‥おっと!
榑谷 たまねぎのチヂミです。
飯島 新たまねぎを使ったので、
ちょっとしっとりして、外側がカリッと、です。
是非。酢醤油をちょこっとつけて。
堺 たまねぎだけのチヂミ?
飯島 ちょっと貝柱とネギを入れています。
糸井 へ〜え。(食べる)うめっ!!!
飯島 本当ですか。やったー。
糸井 (口に運びながら)うーん!
飯島 一見チーズに思える歯ごたえのものは貝柱です。
堺 なるほど!
いろんな味がする。
糸井 旨い。ああ、食べちゃうなぁ。
これは、今日の料理の中で
口に入れたときに、一番、味を探す料理ですね。
旨い。うまーい。
堺 これは深い。
糸井 このモチモチしてるのは。
飯島 上新粉と、ちょっと小麦粉を
たまねぎに混ぜて、
それにホタテの水煮缶を
汁ごと入れて。
それに、ニンニクのすり下ろしたのと、
すりゴマと、ちょっと塩を入れています。
糸井 食べちゃうな、これ。
まずいな、これは。
まだ先があるぞ。
堺 ここは止めたほうがいいですか。
糸井 行ってください。あなたはお若いんだから。
ぼくは最後の調節が効かなくなるのが怖い!
堺 (笑)。
糸井 あなたはお若いんですから。
堺 でも、やっぱりなすといい、たまねぎといい、
なんかこういうホクホクした野菜に
ぼくどうも飢えてますね。
糸井 そうだね。そうだね。
堺 どうもそういう生活なんでしょうね。
それがない生活をしてたんでしょうね。


(つづきます)

2009-09-02-WED


(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN