糸井 | (清水さんのCD『バッタもん』を前にして) 何枚目ですか、こういうものをつくるのは。 |
清水 | これで8枚目です。 |
糸井 | おそらくぼくは全部持ってると思うんです。 |
清水 | ほんとですか。 わぁうれしい。 でも、人って今、意外と CD、聴かないもんなんですよ。 |
糸井 | そのことを、聴きながらいつも考えてます。 CDを聴かないっていうか、 歌じゃないものは聴かないよね。 で、こうやってふざけちゃうと、 歌でも歌じゃない扱いになりますよね。 |
清水 | そうですね。 |
糸井 | 語りになっちゃうもんね。 だから、届かないんだよねぇ。 だけど、おもしろいんだよねぇ。 で、確実に聴きたい人はいるんだよね。 |
清水 | そういうもんですよね。 |
糸井 | つくってる最中がわかったのは、 今回ぼくははじめてなんですよ。 いまやってますっていうのが。 それはネットのおかげですよね。 清水さん、ブログで、 いま、こういうことしてますっていうのを、 中身を言わないようにしながらも、 しゃべってたじゃないですか。 |
清水 | うんうん。 |
糸井 | あれのおかげで、 「出るんだぁ!」 と思って待ってたんです。 |
清水 | ネットのおかげ。 でも、それは「ほぼ日」のおかげですよ。 ほんと。 ブログ続いたのは。 |
糸井 | そうかそうか! |
清水 | ブログの先駆者ですよね。 |
糸井 | うん‥‥ ブログがはじまる前は、 ホームページを自分でやるのたいへんだったから、 いろんな人をゲストに呼んでたの。 ブログになっちゃって、 自分ひとりでどんどんできるでしょ。 |
清水 | そうですそうです。 |
糸井 | だから、いま店子は、 ほとんどいないんですよ。 ぼくが清水さんに いらっしゃいませって言ったときには、 店子がいたんですよ。 うちがパルコみたいなもんで。 だって自分であれやるの、 たいへんじゃないですか。 みんながオレがやったみたいに やろうとしたらたいへんじゃないですか。 |
清水 | うんうん。 |
糸井 | だけど、書く場所があればいいから。 こちらも読んでくれる人が いればいいわけだから。 で、いらっしゃいな、 って言った第1号は 清水さんじゃないかなぁ。 親戚以外でははじめてじゃないかな。 |
清水 | え、ほんとですか! へぇー! |
糸井 | それまで、文章って書いてたの? |
清水 | ああいう形では、 もちろんはじめてでした。 でも、あんとき、 「糸井さん、ヘンなことはじめるなぁ」 って感じだったのに、 いま、あたりまえですね。 |
糸井 | ぶっ(笑)。 |
清水 | 「糸井さん、ヘンなこと興味持ったぞ」って。 その興味の持ち方に、 内側から燃えるようなものを感じて。 |
糸井 | へぇー! |
清水 | 「オレはやる」って感じがした。 でも「ほぼ」ってついてるから もう少し楽にやるのかなと思ったら ずーっと続いてるので、びっくりしました。 |
糸井 | ぼくらが3人ぐらいでやってたとき、 もう清水さん連載してたものね。 「文章がうまいってこういうことを言うんだよ」 って、よく言ってたんだよ。 |
清水 | ほんとですか(笑)?! |
── | はい、よく。 |
糸井 | 本人は照れちゃうかもしれないんだけど、 なーんでこの人はこんなに書けるんだろな、 と思ってて。 |
清水 | へぇー‥‥。 |
糸井 | みんなに説明してたのは、 「書く前に思ったことがあるんだよ」 ということ。 清水さんは、思ったことを書いてるだけだよ、 まずは思ってるから、書けるんだよって。 |
清水 | ふーん! |
糸井 | 思いもしなくて、 書ける人は山ほどいるけど、 思ったものをそのまま書けば こんなにおもしろくなるんだよって、 いつも言ってましたよ。 「見習え!」ぐらいのこと言ってた。 |
── | 言われました。 ほんとです。 |
清水 | へぇー! でも、わたしもあれが、 毎日この字数で、 お金こんなにたくさんくれるからね、 って言われたら、 たぶん‥‥「思う」ことが難しくなる。 |
糸井 | 仕事になりますよね。 |
清水 | そうですね、うん。 |
糸井 | あの当時は「ギャラ払わないんですよ」 っていうのも、 ほんとは半分は言いにくいことでした。 |
清水 | そうですよね。 |
糸井 | うん。 で、いまだとブログという形で 自分で払わないのをやってるわけで。 |
清水 | うんうんうん。 |
糸井 | そんな時代が来るっていうのは、 ぼくは決めてたけど、 半分の人は疑ってたでしょうね、きっとね。 |
清水 | うんうん。 |
糸井 | タダでやりやがってさ、 って言われたことあるもん。 |
清水 | あっはははは。 |
糸井 | それはねぇ、うん、 わかんないんだろうなぁ と思いながら聞いてた。 不思議なものでしたよね。 3、4年ぐらいやってもらったのかな。(*) *「ほぼ日」での連載 「清水ミチコの試供品無料進呈」は 1998年10月から2003年7月まで連載がつづきました。 その後2005年7月に2週間だけ、 スペシャル版で復活しています。 |
糸井 | 仕事の時間と日常の時間っていうのは、 分けてるんですか、清水さんは。 |
清水 | 分けてないです、ぜんぜん。 |
糸井 | まったく一緒なんですか。 |
清水 | そうだと思いますね。 ただ、やっぱり、お化粧すると──、 お化粧して、分かれちゃう感じ。 自分で分けようとは思ってないんですけど、 お化粧するとやっぱり、しゃんとしますね。 |
糸井 | 買い物に行くときは? |
清水 | なしなし。 買い物とラジオは、なしです。 |
糸井 | ラジオもなし。 |
清水 | ラジオも、 お化粧を落としてしゃべりますね。 気持ちが楽だから。 |
糸井 | じゃ、いまは お化粧をしてるバージョンですか。 |
清水 | いまは、たまたまね! このあと、仕事があるからね(笑)。 |
糸井 | あ、なるほど。 ほんとはどっちでもいいんですか。 |
清水 | ほんとは、糸井さんとは、 お化粧なしのほうがしゃべりやすいです。 南(伸坊)さんとか、 三谷(幸喜)さんも。 |
糸井 | ああー。 |
清水 | 別に、「ほんとのわたしを愛してぇ!」 じゃないですよ(笑)。 |
(つづきます) |