ジョージさん、 俺の人生を 香らせてください。 男たちのフレグランス。

ジョージさんのお勉強篇 その1 はじめまして、松原さん。


シェフ 整理しますと、「コスメブランド系」、
カルバン・クラインやシャネルなどの
「ファッションブランド系」と来て‥‥。
ジョージ 「メゾン系」の香りが出てくるの。
香りを専門とするの高級ラインが「メゾン系」ね。
いま、伊勢丹さんに行くと、
メゾン系の香りがずらっと並んでいるのよ。
西本 今、香水を選ぶのって、
けっこういい時期だと思うんです。
というのは、加齢臭以外のもう一つの理由があって、
それが子供たちなんですよ。
まだ5歳と7歳なんですけど、
僕が「親父のにおい」と思った
アラミスとかMG5的なものにかわるにおいを、
つくっておきたいんです。
シェフ それが今のところローズミストなわけだ。
親父のにおいって、ローズだったんだよ」
って何十年後かに言われる‥‥。
それも面白いけど、やっぱり50年後ぐらいに、
西本っちゃんが死んじゃったあとにさ、
「うちの親父、香りのセンスは良かったな」
みたいに言われてみたいよね。
西本 そうそうそう、そういう感じ!
ジョージ 香りのセンス「は」(笑)。
いいかもしんなーい。
張り切って探しましょっ!!
あのさ、香水の瓶が
ずらぁぁーっと並んでるのを見ると、
男の世界だとネクタイっぽくない?
シェフ そうですね、整然としていますし
カラフルですし。
ジョージ 目的はおんなじでしょ。
首に巻くネクタイ。
身体にまとう香り。
で、どちらも、選ぼうと思うと、
山ほど商品があるでしょ。
西本 ありますね。
ジョージ ネクタイってどうやって選ぶ?
西本 僕、日常的にはネクタイをしないので、
誰かの結婚式に行くたびにシャツとネクタイを
お店の店員さんに選んでもらいます。
「このシャツに合うネクタイを探してください」って。
3年にいっぺんぐらいです。
ジョージ そうよね、あれって選んでもらうものよね。
自分で選ぶとおんなじ色で
おんなじパターンのようなものしか選ばなくなるもん。
きっと香水もそうなのよ!
また伊勢丹さんの力を借りましょう。
シェフ ところでジョージさんご自身は
何系の香りがお好きなんですか。
ジョージ たとえばボク自身はわりとさっぱりとしたライム‥‥
ジンライムみたいな匂いが好きなの。
英国系の感じ。
シェフ 意外です。もっと
「ムンムン」系かと思っておりました。
ジョージ そのイメージ払拭したいの!
たまに香水の頂き物とかするのよ。
大抵が海外行ってきた人が
免税店で買ってきてくれるのネ。
「こういうの好きだと思うよ」ってくれるんだけど、
それが、大抵、甘いのよぉー。
西本 あぁ!
ジョージ 甘くてこってりしてて、
ベースで動物のにおいが
のたうちまわってるみたいな感じなの!
シェフ そういうイメージがあるんですよ。
ジョージ そう。で、それは自分にとって苦手なにおい、
というだけじゃなく、
「周りの人ってボクをそういう人だって見てるんだ‥‥」
って思うと、なんだか心外で。
そう‥‥、たぶん「ムンムン」なのよね、ボクって。
昔、シャネルのアンテウスが大好きで、
ムンムンの時代もあったのよ?
でも、どんどん枯れていくわけよ。
シェフ 他人からの印象と
自分の主張したい香りは違う‥‥。
ジョージ 西本っちゃんだって同じよ?
「他の人から見てこのにおい」っていうのと
「自分が好きなにおい」が
違ってたりとかするかもしれないし。

西本 そこが気になりますね、はい。
ジョージ アレでしょ、自意識としては
「カッコいいスポーツ好きなお父さん」でしょう?
シュッとした香りの。
西本 シュッとしたいです!
甘ったるい強い香りは苦手ですよ。
僕も昔そういうのに憧れた時期があって、
ハリウッドランチマーケットで
バニラの香りのするお香
とか買ってましたけど‥‥。
ジョージ それ、東京に出てきた若い男の子が
いちどは通る道なのよ。
今、気になってるブランド、ある?
西本 キールズっていうのがすごい気になります。
ジョージ キールズね。
パルファムラインを一種類だけ持ってるけど、
あれもムスクの匂いなの。
たしか60年代からずっとあるんじゃなかったかしら。
アメリカの人ってああいう香りが好きなのね。
シェフ オーストラリアのイソップはどうですか。
西本 イソップ、名前よく聞きます。
シェフ オーガニック先進国ですよね。
僕はけっこう好きですよ。
ジョージ ヨーロッパのオーガニックって草なのね。
だけどオーストラリアに行くと、
土まで遡っていく。
だからイソップには泥パックもあるし、
ソープバーなんかも泥とか炭とか入ってる。
「オーストラリアは泥まで健康的」なの。
シェフ だからヘルシーな感じですよね。
あ、でも、フレグランスがあんまりなかったような。
ジョージ うん。それも、香らないタイプなのよ。
自分が楽しむもの。
そう、香りには、自分が楽しむ香りの世界もあって、
イソップなんかはその代表格よ。
リフレッシュメントね。
ちょっとなんか自分の周りの空気が
重たいなぁっていう時にプシュプシュってやると、
自分の周りだけなんか香りの世界が出来上がっていく。
そういう使い方をするには、いいわよ。
シェフ そうか、だからそれこそ
シャンプーとかボディソープにイソップを使うと、
きっと、いいんですね。
ジョージ いい!
シェフ 最近のインテリア雑誌なんかだと
バスルームにはイソップ常備。
西本 そうすか!
シェフ くすり瓶みたいでかっこいいんだよ。
ジョージさん、伊勢丹のリニューアル前だったら、
西本っちゃんの香水、
やっぱりシャネルから選んでましたか?
ジョージ いや、この人はシャネルじゃなかったと思う。
むしろメンズ館に行って、
アクア・ディ・パルマを選んだと思う。
西本 アクア・ディ・パルマ‥‥って
どんな感じですか。
ジョージ イタリアのブランドよ。
ボトルもかわいいの、
ころぉーんとしてて。
香りは、柑橘とハーブ、
あるいはミントであるとかっていうのが
重なり合った爽やか系の香り。
西本 うんうんうん。
よさそうじゃないですか。
ジョージ アクア・ディ・パルマも、
最後はバニラの匂いで終わっていくのね。
西本 それが「ラストノート」ですね。
ジョージ そう。昔って香りが強かったんで、
つけると一番最初にバーンと立ち上がる香り、
それがトップノート。
それが徐々にいろんな必要のないものをなくして
中間のいわゆる心地よい香りがミドルノート。
それが最後、ろうそくが消える寸前のように
もう一回うわぁっとなるのがラストノートよ。
西本 もう一回なるんですか。
ジョージ そう。もう一回別の匂いがやってくる。
それがたぶん昔からの
香水の作り方だったんでしょう。
アクア・ディ・パルマもそういう作りなのよ。
一番最初は、レモンを絞ったみたいな爽快な香り。
「でもこれちょっと酸っぱすぎない?」
っていうのがなくなっていくと
ちょっとハーブっぽくなる。
レモンからライム、オレンジのほうに
香りが向かって行く感じ。
そして最後にバニラになる。
西本 バニラですか。
ジョージ たぶん西本っちゃんの好みではないと思うの。
こっちにしたってさ、
西本っちゃんっていう人には、
レモンライムの香る時に来てほしかったのに、
バニラに変わった途端に来られると、
「このオヤジ、バニラかよ」。
もちろんそれが似合う人もいるわよ。
でもアナタは‥‥違うと思う。
西本 そうですよね。
ジョージ なぜボクが英国の
バーバー(床屋)系の匂いが好きなのかっていうと、
一貫してずぅぅっとその香りがするからなの。
だから僕っていつもおんなじような
匂いしかしないじゃない。
西本 おんなじです、そうそう。
ジョージ でも西本っちゃんは床屋のにおいも違うだろうなぁ。
明らかにスポーツしてそうでない人なら、
たとえばエルキュール・ポアロが
床屋のにおいをさせてるのは素敵じゃない?
「いまシェーブしたんだろうな」っていう感じだけど、
でも、西本っちゃんが床屋のにおいさせてると、
なんかオヤジくさい方向に向かってくと思うの。
西本 わかりますわかります。
シェフ では次回、伊勢丹新宿店に
お買い物に行くということで
よろしいでしょうか。
ジョージ 行くわ!
西本 どうぞよろしくおねがいします。
















ジョージさんのメモ
父親のにおい

パパの匂いじゃなくて、父親の匂い。それって多分、生まれて最初に感じる「大人の男の匂い」なんだろうと思うのネ。特に男の子にとっての父親の匂いって、自分の未来の匂いでもある。夢があって。大きくて。あたたかくって、不思議とほっとする匂い。エネルギッシュで明るくて、そんな大人になれるといいなぁ‥‥、って感じてもらえる匂いをさせたお父さん。ボクがなりたくってもなれない存在。だから、日本中のお父さんに手に入れてほしくてしょうがない。オカマのボクを、羨ましいっ! って思わせて‥‥。




























ボクのムンムンの時代

もうモテモテで(笑)。しかも世界中でもてまくった時代があったの。フェロモン全開っていうのかしら。コッテリとした攻撃的な色気が無駄にだだ漏れしていた時代には、少々くらいのいい匂いでは持たないの。だからコッテリ、ムンムン系の匂いをまとってちょうどいいのネ。今の色気はいぶし銀。ムンムン系の匂いでは匂いの方が勝ってしまって、自分の色気が色褪せる。香りってね‥‥、自分らしさを際だたせるもの。だから年齢に応じて変わるモノなんだ‥‥、ってしみじみ思う。大人になったモノだわぁ‥‥。









ハリウッドランチマーケットと
バニラのお香

代官山のオサレの聖地。張り切り過ぎず、ほどよく力を抜いた自然な都会感を、手に入れるコトができる便利な場所がハリウッドランチマーケットって場所でござります。そしてそこには香りがあるの。都会の香り。それがバニラのお香の匂い。代官山の隣にロサンゼルスがあるんじゃないか‥‥、ってボクも昔は思ってた。







































床屋さんという紳士の愉楽

財布の入った背広を、なんのためらいもなく預けるコトができる場所。人間の体の中でもっともデリケートな、首を無防備にさらけ出す。そこにカミソリの刃を当てられながらも、あまりの気持ちの良さに思わず寝息を立てるコトができる場所。そこでつぶやくあらゆる愚痴も自慢話も、決して他に漏れることがない。よい床屋さんと馴染みになるコト。それは「社会に生きる男をひとり、誂えてくれる場所」を持つこと。ついでに髪を切ったり髭をあたってくれたりもする。なんとステキなコトでしょう。







(つづきます)

2013-03-08-FRI