糸井 もう、ぼくのほうの写真は、
だいぶスタミナが切れてきたね。
これはね、気持ち的には、
バクを撮ったときと似てるんですけど。
できれば、もうちょっと寄って撮りたかった。
石川 んん? これは?
糸井 ハゲた男性が歩いてたんです。
頭はハゲてるけど、下はスーツ。
石川 なるほど(笑)。
糸井 失礼を承知でいいますけどね、
やっぱりね、いいんですよ。ハゲって。
また、スーツなのがいいんです。
カジュアルじゃないっていうのが、
いろいろと考えさせられるというかね。
最初のほうに出した
「風車のおじさん」と違って、
この人からはいろいろと掘り出せるんですよ。
石川 あー、そうですね。
なんか、いろいろと汲めますね。
糸井 なんか、あるでしょう?
これは、ベンチに座りながら撮ったんだけど、
もっと近づけばよかったかな。
石川 じゃあ、ぼくもベンチで行きますね。
これはちょっとした枚数があります。
ぼくは、反対側から、ベンチを撮りました。
一同 おおおーーー。
糸井 ああーーーー!
わかる、わかる、わかる。うん。
これね、オレ、こういうのが
やりたくて、できなかったんだよ。
石川 これはもう、ベンチを取り巻く
人間模様に興味をひかれて
バシャバシャって、撮って回って。
糸井 いいねー!
(ベンチの)向こうに回ったんだね。
いいね、いいねー。これは、いいよ。
あらゆる「上野公園」が入ってるよ。
石川 こういう形で見せていっても
上野という場所の雰囲気を
とらえられるかなあと思って。
糸井 うーん、すごみがあるね。
しかも、ぼくが偶然出した
「ベンチ」にちゃんと応えてる。
この企画を象徴する対決かもしれない。
いいわー。
石川 ありがとうございます。
糸井 おもしろいねー。
この、ベンチの真ん中の仕切りが、
座る人によって意味が変わるんだね。
恋人どうしのふたりにとっては
仕切りがじゃまで。
石川 ああ、そうですね。
こっちのベンチは、仕切りの両側に
他人どうしが座ってますからね。
糸井 そうだねぇ。
石川 ホームレスの住みかになってたり‥‥。
糸井 いやぁ、すごいねー。
上野行ってよかったなって思うね。
これは、新宿や池袋じゃないね、やっぱり。
この後ろの緑の深さがね、またいい。
ふふふふふ。はぁー、お見事。
石川 ここに、ベンチからの風景として、
糸井さんの写真を置くと、
またおもしろいですよね。
糸井 ははははは。そうなんだよね。
ベンチに座ってる人たちは、
こういうものを見てるんだよね。
石川 まさに、そうです。
この距離感で見てると思う。
糸井 そうだね。
お昼が終わって、ちょっと時間があって、
ベンチにこう、座ってね。
「ハゲの男が通っていくなぁ‥‥」と
ぼんやり思ってたりするんだよね。
石川 (笑)
糸井 はぁー、よろしいねー。
恐れ入りましたねー。
これは、おもしろい。
今までのもおもしろいけど、
この量でバンっと見ると‥‥。
石川 枚数があると、やっぱり違いますよね。
糸井 ええ。職業的覚悟が感じられます。
今回は、我ながら、
いい負けっぷりだったと思う!
石川 はははははは。
糸井 ぼくの、どうしようもない写真を
ルアーにして、
大物を釣り上げた感じ(笑)。
  (続きます)
2007-12-06-THU