糸井 さぁ、もうぼくは、あと2枚しかない。
2枚、まとめていっちゃおうかな。
これは、撮影を終わって、
ファミレスでご飯を食べたときに撮ったんです。
石川 ぼくですね。
ぼくと、フクちゃん
(同行した、リトルモアの編集者、福桜さん)。
糸井 これ、自分としては、
ポートレイトを撮ったつもりなんです。
なぜか、あそこでふと思ったんですよ。
「ポートレイトを撮ろう」って。
そんなこと思ったの、
じつは、生まれてはじめてなんです。
石川 ああ、そうなんですか。
糸井 あんまりね、正面から、
「その人を撮ろう」なんて
思ったことないんですよ。
で、「撮ってみよう」と思ったら、
すっごい、わくわくしたんです。
これは、いいでしょ。
石川 いいですね。
フクちゃんは、笑顔でいいけど、
オレはなんか‥‥半分白目‥‥。
糸井 はははははは。
でも、いいと思うよ。
白目でも、なんでも。
石川 ‥‥いいですね(笑)。
うどんをずるずる、吸い込んでますね。
おもいっきり。もう。
糸井 何枚か撮ったんですけど、
この、うどんを食ってる瞬間が
とくにいいと思ったんです。
こーんな、狭い世界に対して、
こーんなに一所懸命で。
石川 (笑)
糸井 たぶん、石川さんの友だちが見たら
「おまえはこういうヤツだ」って、
絶対言うと思うよ。
石川 そうかもしれない(笑)。
糸井 真剣なんですよ、妙に。
一方、福桜さんは、ですね。
3枚撮ったんですよ。
で、どれも笑顔で、つまり、
3種類の笑顔があったんですよ。
それぞれに、笑顔が違うというか、
ぼくとの距離が違ったんですけど、
なんていうか、この写真が、
いちばん「ほどよい感じ」だった。
石川 これは、なかなか
かわいらしく写ってる。
糸井 ピントもへったくれもないんですけどね。
でも、この2枚を撮ったことで、
オレ、これからは、ちょっと、
人を撮ってみようかなと思った。
あのとき、もちろんふたりとも、
ぼくが撮ってたのはわかってたけど、
かといって、どうしようもないから、
そのまま撮られてたじゃないですか。
石川 そうですね。
糸井 それが、この人なんだなぁと思ったのよ。
石川 まさにそうですね。
ポートレートは。
その人との関係性もでちゃうし、
出会い頭のあいさつみたいに
撮るのが実は一番よかったり。
糸井 で、オレは、
「カメラを向けた人をそのままにさせた」
という意味では、
ポートレイトがうまいかも?
って思った(笑)。
石川 そうですね。
構えさせなかったですもんね。
糸井 じつは、その後も、うちの社員とか、
何枚か撮ったりしてるんだけど、
我ながら、けっこういいんですよ。
石川 へぇー。
糸井 どう言ったらいいんだろう、
「おまえ、いいぞ」っていう
写真が撮れてるんだよね。うん。
だから、ちょっとがんばります。
じゃあ、石川さんの写真を。
石川 じゃあ、また複数の写真で行きます。
また、糸井さんと
逆の視点になるんですけど。
糸井 ああー、わかる、わかる。
いやー、いいなぁ。
はーーーー、おもしろいなぁ!
石川 これ、ちょっとだけ気に入ってます(笑)。
糸井 どれもいいわー。
さっきのベンチシリーズに
匹敵するくらい、いいね。
石川 これ、みんな、
西郷さんの像を撮ってるんです。
糸井 そうか、この向こうに西郷さんがいるんだ。
でも、こういう風景は、
世界中のいたるところにあるんだよね。
北極に行こうが、アフリカに行こうが
こういうことなんだね。
石川 そうですね。
糸井 これはいいわ。
まさに、いろんなものが
生まれる瞬間の写真だね。
石川 これが100枚集まれば、
またすごいことになるでしょうね。
枚数が増えていけば、増えていくほど。
糸井 そうだよね。
いや、この企画、やってよかったわ。
石川 ぼくも声をかけていただいて
よかったと思いました。
いつも通い慣れた公園でも、
立ち止まるといろいろなものが見えてくる。
上野公園はしばらく撮り続けて
いきたいなあ。
糸井 ああ、いいですねー。
石川 さっきのベンチシリーズといい、
この記念撮影シリーズといい、
限られた時間でどうやって見せるかって考えたら
こうやってひとつのものを
撮り続けるしかないんだな、と思って。
糸井 シリーズがふたつ、
できたじゃないですか。
石川 ええ。ありがとうございます(笑)。
糸井 ほかに、出してない写真は?
石川 あとは、中途半端な写真なんですけど。
これは、神社の中にあった監視カメラ。
糸井 「撮る側を撮る」という意味では、
記念撮影シリーズにも似てるね。
石川 あ、そうですね。
カメラで撮る、あるいは撮られるということに対して、
やっぱり意識的になっちゃうんですよね。
ぼくたちはこの世界を見てるんだけど、
世界にも見られてるというか。
あとは、これですね。上野の街。
糸井 あー、これもちょっと、いいね。
あの界隈の色だよね。
さっきのホームレスの家の写真と同じで、
「オレの好きな色はこれだ」って
言わないというか、言えないというか。
この街自体にそういうとこあるよね。
石川 上野の色っていうか、
街のいろもそれぞれですよね。
糸井 そうそうそう。
趣味がないんだよね。
石川 趣味がない?
糸井 うん。つまり、
「オレは、この色が好きだ」って、
上野という街は言わないんですよ。
石川 ああー、そうですね、たしかに。
糸井 自分の趣味で選んでたら、
この色になんないよ。
要するに、目立ちたいっていう一心で
積み上げていったら
こういう色になるわけでしょ。
この赤とかさぁ。
石川 独特ですよね、上野って。
アメ横とかもあって、
バイク屋が多くて、宝石屋があってみたいな。
糸井 そうですね。
今回、場所を上野にしてよかったかもしれない。
いや、成り立つかどうか
わかんない企画だったけど、
成り立っちゃったし、
思った以上に、すごい収穫があったなぁ。
石川 はい。
  (続きます)
2007-12-07-FRI