名づけようのないもの。 第2回伊丹十三賞は、タモリさんに。
昨年、糸井重里が、 栄えある第1回目の賞をいただいた 「伊丹十三賞」。 先日、その2回目の贈呈式が行われました。 受賞者は、タモリさん。 贈呈式の様子をおとどけします。
春のよき日に、第1回伊丹十三賞贈呈式。
故・伊丹十三さんの偉業を記念し、
時代を切り拓く斬新かつ本格的な
人や作品に贈られる、「伊丹十三賞」。




昨年、その第1回目の贈呈式が行われ、
栄えある最初の受賞者となったのは、
糸井重里でした。




そして、今年。
第2回伊丹十三賞に輝いたのは
「ほぼ日」でもおなじみの、
タモリさんでした。




「伊丹十三賞」は、
文化活動全般を対象とし、
「言語表現を主軸としたもの」と
「映像表現を主軸としたもの」を
1年ごとに交互に贈られます。




昨年、糸井がいただいた伊丹十三賞は、
「言語表現」を対象としたもの。
そして今年、タモリさんは、
「映像表現」を対象とした伊丹十三賞、
ということになります。




いただいた資料によれば
授賞理由はこのようにまとめられています。
「テレビというメディアに
 『タモリ』としか名づけようのない
 メディアを持ち込み、
 独自の話芸と存在感を発揮する稀な才能に対して。
 なかでも『タモリ倶楽部』や『笑っていいとも!』は
 30年近くその才能を遺憾なく発揮し続ける
 ホームグラウンドとして高く評価したい。」




贈呈式当日、
タモリさんは番組の収録のため、
残念ながら欠席されましたが、
事務所の方を通じてコメントを寄せられました。
選考委員を代表して述べられた
周防正行監督のスピーチとともに、
今年もなごやかにすすんだ
贈呈式の様子をお伝えします。



映画監督、俳優、デザイナー、イラストレーター、
エッセイスト、テレビマン、雑誌編集長‥‥
さまざまな分野で才能を発揮し、つねに斬新で、
時代を切り拓く役割を果たした
伊丹十三の遺業を記念して創設された賞です。




・受賞対象
伊丹十三が才能を発揮した分野において、
優秀な実績をあげた人に贈られます。
○西暦奇数年:言語表現を主軸としたもの
(エッセイ、ノンフィクション、翻訳、編集、料理など)
○西暦偶数年:映像・ビジュアル表現を主軸としたもの
(映画、テレビ番組、CM、俳優、
 イラストレーション、デザインなど)




・選考委員(敬称略)
周防正行 中村好文 平松洋子 南伸坊




・対象期間
贈賞年の前々年1月1日〜前年12月31日までの
期間に発表された作品等の業績。




・賞と賞金
正賞 賞状 と 副賞 100万円。




主催:財団法人ITM伊丹記念財団
協力:株式会社伊丹プロダクション

 
選考委員からの祝辞 「楽しい連鎖が続いていく。  よかった、よかった」 ────南伸坊さん

この世界に入ったばかりで、
テレビにも一、二回しか出ていない頃、
伊丹さんの御自宅にお招きいただき
御夫婦で励まして下さいました。

まだ何もわからない状態でしたので、
大変勇気づけられたことが思い出されます。

かといっていまだに何かをわかったわけでもなく、
ただ迷いつつ手さぐりでやり続けております。

この度はこのような賞をいただき
大変うれしく感謝いたしております。
ありがとうございました。

平成二十二年 四月吉日
森田一義


タモリさんのコメントを読み上げる、
田辺エージェンシー専務取締役、松尾浩介さん。
 
受賞者スピーチ 「名づけようのないものを  楽しんで、おもしろがって」 ────糸井重里

祝辞ですから、
おめでとうございますとはじめたいところなんですが、
まずは、伊丹十三賞を受賞していただき、
ありがとうございます。

今回で2回目となるのですが、
伊丹十三賞とは、いったいどういうものなのか、
今年も手探りの状態で選考していきました。

伊丹さんは類い希な人で、
伊丹さんのような人はなかなかいないと思います。
そのことが伊丹十三賞の肝心なところです。

その意味でいえば、
タモリさんのような人は後にも先にもいない。
これからさきにも現れないのではないかと思います。
そこが、伊丹十三賞に
もっともふさわしいのではないかということで
選ばせていただきました。

個人的なことを申し上げると、
私は、タモリさんがラジオの深夜放送で、
四ヵ国語マージャンを披露しつつ
世の中に出てきたときから
ずっとタモリさんを聞き、観てまいりました。

そのなかで、すごいなと思うのは、
タモリさんって、ずっとタモリさんなんです。
たしかに、初期のころと、
表現するものは変わっているけれども、
本質的なところは、
いい意味で、まったく変わっていない。
ずっと、タモリさんは
タモリさんのままであり続けている。

今回、受賞対象となりました、
『タモリ倶楽部』は、
深夜の、マニアックなおもしろみのある番組です。
もう一方の『笑っていいとも!』は
お昼の、多くの人におもしろさを伝える番組。
そのふたつで、タモリさんは、
まったく同じタモリさんとして、そこにいる。
それ以外の番組でもそうですが、
ずっとタモリさんはタモリさんのままでありながら、
違う種類の番組を成立させている。
そこがタモリさんのすごいところだと思います。

テレビというメディアは
出演する人を消費するような性質を持っています。
そこに登場するモノなどもどんどん消費して、
ついには、視聴者まで消費し尽くしてしまう、
そんな怖さのあるメディアだと思います。

そのなかにあってタモリさんは、
テレビに消費されることなく、
逆にテレビを消費するかのように
自在にテレビとともに存在し続けている。
たぶん、これからもそうした存在として、
テレビを消費しながら、
独自のエンターテインメントを
繰り広げていく人ではないか。

そこがタモリさんのすごいところだと思います。
また、いまだにぼくもファンのひとりです。
このたびはどうも、おめでとうございました。

 
館長挨拶 「いま壇上に立って、  ちょっと胸がいっぱい」 ────宮本信子さん

タモリさんにぜひ、
お伝えいただきたいと思います。

今日はお会いできなくて
とても残念だったんですけど、
タモリさんに賞を
もらっていただけたことは
ほんとうにうれしく思っております。

今度、伊丹十三記念館にいらしていただけたら
どんなに伊丹さんも喜ぶかしらと思っております。

お時間がございましたら、
ぜひ、ご来館ください。
心よりお待ち申しておりますということを
お伝えいただけますように
よろしくお願いいたします。

本当に、このたびは、
おめでとうございました。

 

去年と同じように、
宮本信子さんの乾杯の挨拶のあと、
祝宴はたいへんたのしく進みました。

思えば、「ほぼ日」が長く取り組んできた
「伊丹十三特集」は、
去年、糸井がこの場所で最初の伊丹十三賞を
いただいたことからはじまったのでした。

会場を見渡すと、
「伊丹十三特集」に登場していただいた
みなさんの笑顔があちこちに。

伊丹プロダクションの社長、玉置泰さん。
番組製作会社、
テレビマンユニオンの浦谷年良さん。
新潮社『考える人』編集長の
松家仁之さん。
糸井との雑談コンテンツ
『黄昏』でもおなじみ、
イラストレーターの南伸坊さん。
伊丹十三記念館を設計した、
建築家の中村好文さん。
そして、宮本信子さん。

自分の受賞から1年が経ち、
(去年よりはずいぶん気楽に)
この会場を訪れた糸井重里は
2年目を迎えた伊丹十三賞を、
どんなふうに感じたのでしょうか。

「賞も育つものなんですよね。
 たとえば、最初のノーベル賞が
 どういうものだったか
 ぼくは知りませんけど、
 『こりゃぁ、うれしいのかね?』
 なんていう受賞者だって
 いたかもしれないじゃないですか。
 この伊丹十三賞も、
 だんだん成長していくものだと思うので、
 タモリさんが受賞したことで
 また、成長するんじゃないでしょうか。
 まだはじまったばかりの賞ですけど、
 はじまったばかりなのに
 誰がもらうんだろうという意外性があって
 おもしろいですよね。
 そういうところも含めて、
 クリエイティブな賞だと思います。」

ここだけの話、糸井重里は、
こういうパーティー的な場所に顔を出すと、
関係者の方にご挨拶をして、
しばらく談笑したあと、
しゅっと帰ってしまうことが多いんですけど、
この、伊丹十三賞贈呈式のパーティーは、
おしまいの時間までたのしく居続けました。
あ、そういえば、去年もそうでしたね。

今年はタモリさんが受賞した伊丹十三賞。
来年は、どなたがもらうのでしょうか?
当日のにぎやかな様子を伝える写真を
何枚か掲載しつつ、
贈呈式のレポートをおわります。
それでは。



2009-04-21-WED


いままでの「名づけようのないもの」
2009-03-24 春のよき日に、第1回伊丹十三賞贈呈式。


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN