糸井 |
こうして聴いてますと、1940年代くらいまでで
ジャズというものは
すっかりできあがったかのように思えるのですが、
まださらに、次の展開があるんですよね。 |
タモリ |
飽き足らないものが、あったんでしょう。 |
糸井 |
それは、何なんですか? |
タモリ |
ひとつには、
あまりにも「コード化」されちゃったという。 |
山下 |
コードの追求、つまり
その分解が、極限まできちゃったんですよ。 |
タモリ |
もう‥‥掘るなよと。 |
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山下 |
‥‥ってことで、
こんどは「ならしちまおう」と。 |
タモリ |
もう「埋めてしまえ」。 |
糸井 |
そいつは、誰ですか? |
山下 |
マイルス。 |
タモリ |
マイルス。 |
山下 |
つまり、コードをやめちゃったんですよ、
マイルス・デイビスって人が。
コードっていうのは
追っかけていかないと「間違い」になるんですけど、
マイルスは、それをいっさいやめちゃって、
音階だけをぽーんと置いて、
そのうえで、何かしましょうや、とやったんです。 |
糸井 |
他の人も、みんなそれに倣ったんですか? |
山下 |
ま、リーダーですから、マイルスは。 |
タモリ |
でも、マイルスが「こうやんだよ!」っつっても、
まだ、戸惑いがあったんですよ、他の人に。 |
糸井 |
ほう‥‥。 |
タモリ |
たとえば『Kind of Blue』っていう
アルバムがあるんですけどね、
これ、リーダーのマイルスだけが
きちんと把握してやってんですけども、
他のメンバーは、
「こんなもんかな、こんなふうに終わっちゃって
いいんだろうか‥‥」って、戸惑ってるんですよ。
ま、その緊張感がまた、いいんですけど。 |
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山下 |
サックス奏者のキャノンボール・アダレイも
完全に誤解してますよね。
『Somethin' Else』っていう
マイルスといっしょにやったアルバムのなかで。 |
タモリ |
コード進行がないのを不満に思ってんですよ。
で、コード進行しちゃおうとしてんです。 |
糸井 |
ほお‥‥。 |
タモリ |
呼ばなきゃいいのにキャノンボール。 |
糸井 |
わざわざ、マイルスもねぇ(笑) |
山下 |
でも、その「戸惑い」のおかげでね、
逆に名盤として、現代に残ってるんですよね。 |
タモリ |
でも、山下さん自身も経験したと思いますよ。
「オレはフリーをやるんだ!」っつっても
まわりがあんまり理解してなかったって状況は。 |
山下 |
そうですね、うん。 |
糸井 |
そういう「マイルスの時代」に、
もう、山下さんは
ミュージシャンとして活動なさってたんですか? |
山下 |
ミュージシャンになるまえから、
今のようなマイルスのアルバムは出てましたから、
聴きくらべてはいましたね。
僕は、あんまりモードは好きじゃないですけど。 |
糸井 |
ああ、そうですか。 |
山下 |
単調になるばかりだな、と。
ただ、そういう雰囲気がいいんですけどね。 |
糸井 |
じゃ、そのマイルスの曲を、そろそろ? |
山下 |
ええ、マイルスの代表曲で「So What」。 |
タモリ |
これも「コール・アンド・レスポンス」ですね。 |
山下 |
そう、ベースが問いかけると
ピアノが「So What?」、つまり「だからどうした!」って
答えてるんだと思うんです。 |
タモリ |
問いかけてんのに、拒絶してんですよ。
‥‥つまり
「コール・アンド・リフューズ」。 |
山下 |
あっはは(笑)。 |
タモリ |
なんつうんですか、レスポンスになってない。 |
糸井 |
聴きたいですねぇ(笑)。 |
タモリ |
ジャンルでいうと、「モード」です。 |
糸井 |
でも、それを山下さんが演奏なさるってことは、
たぶん、別の解釈も加わっちゃうわけですよね? |
山下 |
もう勝手にやると思いますけど(笑)。 |
糸井 |
おもしろそうだなぁ。 |
山下 |
でも「モードジャズ」の雰囲気は
なるべくお伝えしたいと思います。 |
糸井 |
それじゃ、さっそく、お願いします。 |
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♪「So What」
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<つづきます> |