糸井 |
さっきのお話を聞いたあとで聴くと
ほんとにおもしろいですね。
ずいぶん、レスポンスしてたというか。 |
タモリ |
ずいぶん、リフューズしてたというか。 |
山下 |
あのベースは難しいんですよ。 |
タモリ |
ベーシストのポール・チェンバースも
けっこう音を外してんですよね、アルバムでは。 |
糸井 |
ああいう話を知っていたうえでなら、
当時のジャズ喫茶なんかも
もうちょっと楽しめたかもしれないなぁ。 |
タモリ |
ああ、そうでしょうね。 |
糸井 |
だって、誰もしゃべらないじゃないですか。
当時のそういう喫茶店って。 |
タモリ |
しゃべってると怒られます。 |
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糸井 |
なんだか辛かったんですよね、ジャズの時代って。
その、自分を取り繕うのに(笑)。
とくに僕なんて、田舎から出てきてますから。 |
タモリ |
そうじゃないところもあったんですけどね。 |
糸井 |
だから、今みたいなお話を知っていたら、
「オレ、マイルスの気持ちわかるわ!」って
自分なりに、思えたかもしれない。 |
タモリ |
うん、うん。 |
糸井 |
でも、このあと、ジャズはどういうふうに‥‥。 |
山下 |
ジャズシーンが、
ぜんぶ「モード」になったわけじゃないんですよ。
それぞれに
モードの「捉えかた」がちがってきたりしてね。
こういう音楽だけじゃ退屈だってやつらは
やっぱり、出てくるんです。 |
タモリ |
今みたいに、山下さんの演奏を聴いたりすると、
「いいじゃん」とかって思えますけど、
モードって、ふつうに聴いてたら、
「締めにラーメンでも食いてえな」みたいな、
なんつうか、中途半端な‥‥ねえ。 |
糸井 |
なるほど。 |
タモリ |
どうも煮えきらないような‥‥残尿感。 |
糸井 |
ありますか!(笑) |
山下 |
僕も、個人的にはあります(笑)。
いや、だから、ぜんぶをモードでやるんじゃなくて、
コードで進める部分もあったうえで、
とつぜん、8小節モードでやってみたりとかね。 |
糸井 |
じゃあ、このころのジャズから聴こうと思うと、
ちょっと混乱しちゃいそうですね。 |
タモリ |
その人は不幸です。 |
糸井 |
そこまで言いますか(笑)。 |
山下 |
まぁ、ジョン・コルトレーンって人のモードも
ちょっと異質ですしね。 |
糸井 |
コルトレーンという名前については、
みんな別格あつかいで語りますよね。 |
タモリ |
「すべてのサックスは、コルトレーンに流れて、
コルトレーンから出ていく」と言われますね。 |
糸井 |
マイルスとやってたこともありますよね? |
山下 |
やってます、やってます。 |
糸井 |
やっぱり、影響を与えあったりしたんですか? |
タモリ |
うーん‥‥。 |
山下 |
マイルスもコルトレーンも、かなり独特だからね。 |
タモリ |
ジャズの人はみんな変わり者です。 |
糸井 |
ああ、そうですか(笑)。 |
タモリ |
ジャズを聴く人も変わり者です。 |
山下 |
あっはは(笑)。 |
タモリ |
だって、もともとブルースの「繰り言」から
はじまってるわけですから。
労働がキツいだとか、なんだとかっていう。 |
糸井 |
なるほど。 |
タモリ |
楽器を使って、自分のことをしゃべってるわけです。 |
糸井 |
オレの話を聞け、と。 |
タモリ |
でも、その「オレの話」に対して、
ひとことも反論もせずに
「うん、うん」ってうなずきながら聴いてる人だって
やっぱり変人なんですよ。 |
糸井 |
ある部分、「宗教」に似てくるんですね。 |
タモリ |
表現というのは、基本的にそうなりますよね。 |
糸井 |
ライブハウスの「縦ノリ」ってやつも‥‥。
「そうだ! そうだ!」っつってるわけですよね。
こぶしかなんか、振り上げて。 |
タモリ |
ロックフェスかなんかで、何万人もで
「そうだ! そうだ!」ってやってるようなやつらはね、
発電に利用すればいいんですよ。 |
山下 |
ああ、できそうだね、発電(笑)。 |
タモリ |
ムダでしょ、あれ。人力の。 |
山下 |
どっちにしても、宗教的ですよね。 |
糸井 |
レコードというお札を買ってね。 |
山下 |
公会堂に集まってね。 |
タモリ |
うん、音楽ってやっぱり、どこか宗教です。 |
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<つづきます> |