舞台って、本当に舞台にいる全員が、 主役も脇役もちゃんと動いて、 ちゃんと芝居をしていることが、 こうして映像になったときに とてもよくわかりますよね。 主人公がアップになっている後ろで 映っている人たちまでもが、 すごくイキイキしているんですよね。 どんなにアップになっても大丈夫、 気を抜いてないの。 それが観られてうれしかった。 逆に言うとね、 ストレスが1個だけあったのは、 芝居とかを見ていると、 舞台全体というよりもその人だけを見たいという、 そういうミーハー心があるんだけど、 贔屓の人だけを見ていられるわけじゃないのね、 って(笑)。 |
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「そのとき染さまはどうなってるのよ」 ってこと? |
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そうそうそう(笑)! そこがちょっと舞台との違いなのかな。 これまで舞台は舞台だけしか 見たことがなかったし、 映画は映画でしか見たことがないから、 舞台を見るときと映画を見るときの自分の違いって 認識したことがなかったんです。 でもこれ見たときに、 「あ、私は舞台をこうやって見ていて、 映画をこう見てるんだ」ってすごいわかって、 それがすごく面白かった。 |
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私、ほとんど演劇的なものは あまり見たことなくて、友達に誘われれば、 よくわかんないけど行くっていうのを 1回とか2回とかそんなぐらいなんです。 で、今回「朧」をゲキ×シネで観て 一番ビックリしたのは、 市川染五郎さんのこういうの(見得を切る) あるじゃないですか(笑)。 |
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花道でね。 |
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そうそうそうそう。 見得ってこんなに勢いがあるんだっていうことを、 生じゃないんだけれどもリアリティをもって 感じたのはこれが初めてだった。 |
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おう。 |
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で、そういうのを、演劇を知ってる人がいて 話してくれることももちろんあるんだけれども、 いきなりやっぱり歌舞伎に連れていくとかって、 ちょっとハードルが高いじゃないですか。 |
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高い高い。 |
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そのときに、 「こういう面白いのがあるんだよ。 まずこれ見てみる?」っていうのには、 自分がそういうのに興味持つほうかどうかを 測るうえでも、すごくいいなと思って。 それこそお芝居観たことがあまりない人は、 1回ちょっと見てみるぐらいの気持ちで観たら すごく楽しめると思う。 |
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お芝居を見慣れてる側から言うと、 映画なのに、花道が映ったり、 お客さんが映ったり、 照明が映ったりするのは平気だった? |
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あ、全然平気! ていうか逆に、 すごいそれこそテレビの劇場中継だと、 淡々としてるじゃないですか。 熱気とか緊張感がないですよね。 でもこれはすごい熱気と緊張感で、 映像で熱気と緊張感と一体感が 保たれてることがすごくて。 だから客席にいる感じがしてよかった。 |
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この「ゲキ×シネ 朧の森に棲む鬼」は 確か15台のカメラを使ってるんですよね。 |
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そう! デジタルシネマカメラ15台なんですよ。 これ、とんでもないことなんですよ。 で、上映もデジタルなんです。 こういうの日本にあまりないんですってね。 編集も8か月ぐらいかかってるんだって。 |
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けど、けど、撮影や編集の大変さを 感じさせないですよね。 それがすごいなと思って。 |
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多分、賛否両論あると思うんです。 お芝居は定点で観るべし、 という美学って多分あると思うんで。 でもね、私はもう全然、今回の演出、 ものすごいカット割りだとか、 やっぱりすごくいい。自然に入ってくるし。 |
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定点カメラがいけないってことじゃないんだよね。 昔、オンシアター自由劇場が 吉田日出子さん主演の「上海バンスキング」を 串田和美さん監督で 映画にしたことがあるんだけど。 |
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深作欣二監督で松坂慶子主演のじゃなくて? |
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ちがうんだよ、吉田日出子さんのがあってね、 これが、あえて、定点カメラだったんだよ。 それは舞台を映像で撮ったんじゃなくて、 定点の映画をつくったってこと。 舞台を見るように映画を見る。 それはそれでね、とってもよくって、 名作だと僕は思っているんだ。 で、「朧の森に棲む鬼」は真逆なんだけど、 でも、どちらもいいんだ。 そもそも、物語がものすごく面白い、 というのが重要なのかもしれないよ。 |
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劇団☆新感線のお芝居は、そうなの、 とっても面白いの。 お芝居って、あとで考えさせられたりとか、 ちょっと暗めだったりしたりとか、 いろいろあるけれど、 劇団☆新感線は明るいお芝居というかね、 たとえ暗い話であっても、 見終わったあとに、「あー、面白かった!」 っていう感想が残るっていうかね、 重いものを引きずらないで済むのね。 「朧」もコメディではないし、 ストーリーはけっして明るくはないわけじゃない。 |
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暗い話だよね(笑)。 |
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怖いよね、最後ね。 |
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人いっぱい死ぬしね(笑)。 |
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そうそうそうそう。でも、感想は 「面白かった〜!」なのね。 その、何て言うの、 活劇感みたいなのがあって。 ちゃんちゃんばらばら、な。 |
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ああ、あった、あった。 |
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多分、なんだけど、 今、古典の歌舞伎になっちゃってるものって あまり自分にアピールしないなと思うんだけど、 もし私が江戸時代に生きていたら、 違ったと思うのね。 「朧」を観た感じが、江戸庶民にとっての 歌舞伎だったのかもしれないなあと思って。 「いのうえ歌舞伎」って呼ばれているしね。 |
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そう、歌舞伎なんだよね。 |
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現代歌舞伎。 殺陣(たて)のときに すごい音がするとかっていうのとかも 多分そういうことなんだろうなと。 |
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殺陣、すごいうまかったですね! |
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あれね、舞台でも、殺陣と効果音が 合ってるの。すごいんだよ。 「ヒュイン!」「カチン!」 「キンコンカン!」「バサッ!」 ぜんぶ、完璧に合ってる。 |
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でも、音効の人、2人しかいないみたいよ! クレジットをよむと。 |
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どうやってるんだろう! |
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わからない! |
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わかんないんだよ〜。 |
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言えるのは、役者もスタッフも 「みんながものすごい努力をしている」 ってことですよね。 |
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うん。それに、役者さんが、 もちろん染五郎さんは別格だけれど、 若手の役者さんたちまでもがみんな 殺陣がうまいっていうのはすごいことですよね。 |
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(つづきます!) |
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2007-09-18-TUE |