- 小林
- ツリーハウスというものには、
いろんな要素がまじりこんでいると思うんですが、
いまこの世界にはあまり存在しないような、
リスクも含めたワクワク、ドキドキがある。
それはとても必要とされているんじゃないかと
思っています。 - 糸井
- もろさとかもね。
- 小林
- 楽しいもののなかに
ちょっとドキッとするものがあるから
ワクワクできるんで、
そこを全部削っていっちゃうと
また別な世界になっちゃうんだろうと思います。
体感でしかわからないものを
少しでも残しておきたい。
リスクのある、しかもむだなものを作る、
ということを恐れるあまりに
ぼくがツリーハウスを作ることをやめてしまったら
ダメだと思っています。
リスクより楽しいことがひとつでも多いのであれば
やっぱりぼくは日本のパイオニアとしては
ツリーハウスを建てつづけていくべきだし、
次の世代がもっとすてきな、
もっとスマートな考え方で、
問題をクリアしていってくれればいいのかなと
思っています。 - 糸井
- スマートになるかどうかは
ぼくにもわからないですが、
もっと「いろいろ」にはなりますよね。
そのいろいろさが、これからは大切だと思います。
さきほど、小林さんが
旅をしていたとおっしゃったとき、
周囲を困らせる人がいなくなった、と言いましたが、
やっぱりいま、そんな人はめったにいない。
みんな、横を見ては
おんなじようなことしているように思えます。
そこからポンと抜け出す、ひとつの方法として、
木の上にあがるのはどう?
やってごらん、と言いたいです。 - 小林
- そうそう、そうですね。
写真を見たりするだけではなかなか表現できない‥‥
なーんでしょうね、あの、
木の上にのぼっていって、
少し揺れる足場の上で
景色を見たときに感じるもの。
DNAの中に、
二足歩行して地上に降りてくる前のものが
あるんだなとわかるぐらい、
ちょっとハイになるんですよ。
北海道滝川市 そらぷちキッズキャンプのツリーハウス
難病の子供達とそれを支えるご家族が安心して遊べる、医療設備を完備した
日本初のキャンプ場に、ストレッチャーでアクセスできるバリアフリーのツリーハウスを制作。
- 糸井
- なりますねぇ。
ビルの3階や4階から外を見ても、
ぜんぜんおもしろくない。
だけど、木の高さで見たら、
それだけでおもしろいんですよ。 - 小林
- 会社のミーティングも、
木の上でやるといいと思います。
公民館も、木の上に作る。
きっとビルの部屋からは出ないなにかが
現れると思います。
音楽スタジオとかも、
ツリーハウスに向いてると思います。 - 糸井
- 緊迫感を背にして
みんなでミーティングをすると、
新しいアイデアが出てくるかもしれないなぁ。 - 小林
- FM局も、
ツリーハウスから放送したいって
この前言ってました。 - 糸井
- あ、いいですね、それ。
おぼえておこう(笑)。
しかし‥‥小林さんは、就職したのちに海外に行って、
自分で住んでるうちを
ツリーハウスにして‥‥思ってみれば
すごく運のいい人生だと思う。
運命の出会いでしたね。
- 小林
- そうですね。もう、ラッキーとしか言えないです。
- 糸井
- おもしろいですよね。
放送学科出身ということは、
建築はほんとうに、それまでぜんぜん
やらなかったんですか? - 小林
- やったことないです。
不器用だし図面も描けないです。 - 糸井
- いまも図面はないんですか?
- 小林
- いまも図面はないです。
頭の中にあるラフなものを
現場で調整しながら作っていくうちに、
「こっちから登るんであれば
ここに窓も欲しいね」
などということになります。
図面があると、それに引っ張られちゃうので
予定調和の直しができなくなります。
ツリーハウスは、木の上で作ったほうが
自由なんですよ。
しかもそのほうが、作りながら好きになる。
譜面がないオーケストラの指揮をしている
というような感じですね。
宮城県東松島野蒜地区 東松島市・C.W.ニコルアファンの森財団による
「復興の森づくりと森の学校」プロジェクト
- 糸井
- その作り方の転換は、
まさしくいまの世の中の
ポイントになることだと思います。
つまり
「ビジョンがあって目的があって
そこにたどりつくためにいま我慢しろ」
ということがいまは通ってるけど、
ほんとうはそうじゃなくしたいですよね。
ここはわかんないけどいい方向にしたいね、
という姿勢さえあれば
どこかにはたどりつくと思います。 - 小林
- そうですね。
- 糸井
- ぼくは、100作るって
最初に看板に掲げていますけれども、
100作るのはたくさんの人の力によるものです。
ひとつ作るだけでも大変なことを
100作るっていうのは、
みなさんが「作りたい」と思って
責任を持ってなんらかの参加をしてくれなければ
できないことです。
でも、参加をすることで、
きっと木の上からの
新しい景色が見えると思います。
何年かかるかわかりませんけど
こんな余計なものが
みんなの豊かさを作るような計画を
手伝っていただけたらうれしいです。
お金のある人はお金を、知恵のある人は知恵を、
暇のある人は暇をみんなで出しあって‥‥。 - 小林
- そうですね。
そうなれたらいいなと思います。
- 糸井
- いま、会場で話を聞いてくださっているみなさんの、
顔が笑ってるんですよ。
ツリーハウスの話するときって、取材でも会議でも、
誰もがちょっと笑うんだよね。
そういうことが、ほんとに、鍵だなと思います。
ツリーハウスを日本の国内に
いくつも持てるということになると、
国の印象も違ってくるんじゃないかな。 - 小林
- 「これは豊かな国だ」ということになると思います。
海外にいると、日本にそんなに木があるのか、と
よく言われますが
国土の69%は森なんだよと言うと、
みんなにびっくりされます。 - 糸井
- あ、時間だ。
今日は、ありがとうございました。
お会いできてうれしかったです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。 - 小林
- こちらこそ、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
(おしまいです)
2014-04-21-MON
この対談は、1月に福岡のヤフオク!ドームで開催された
リユース!ジャパンプロジェクトのイベントで
行われました。
このイベントに来場されたみなさまが
お持ちくださった古着と
チャリティオークションの費用で建設されているのが、
石巻のはまぐり浜のツリーハウスです。
古着を寄付してくださった福岡のみなさまのメッセージは
はまぐり浜のツリーハウスの開始式で披露されました。
いま、ヤフー石巻復興ベースをはじめ
たくさんの方々の力を借りながら
はまぐり浜のツリーハウスを作っています。
いつか、小林崇さんともいっしょに
ツリーハウスを作れればうれしいなぁ、と思います。