糸井 |
このあとは、
どういう仕事をやる予定なんですか? |
赤坂 |
とりあえずいまは各球団の
二軍監督のインタビューをやっています。
それを週刊現代で連載して。 |
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糸井 |
へーー。
いいメディアになったなぁ、週刊現代。 |
赤坂 |
(笑) |
糸井 |
そういう企画はいいですねぇ。
二軍監督というと、巨人は岡崎。 |
赤坂 |
そうです。まだ会ってないんですけど。 |
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糸井 |
岡崎っていう人はおもしろそうですよね。
なんでも、聞いた話によると、
「すごくケンカが強い」という。 |
赤坂 |
そうです、そうです(笑)。 |
糸井 |
なんだか有名なんですよね。
でも、そうは見えないじゃないですか。 |
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赤坂 |
見えないんですよね、
テレビで野球を観ているかぎりは。
でも、当時、寮に入った若手は
必ずその強さを垣間見た、という。
なんていうか、タイプとして、
ちょっと前田的なところがある人で(笑)。 |
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糸井 |
ああ、そうかもしれない。
やっぱり、目つきが鋭くてね(笑)。
でも、いまは二軍監督。 |
赤坂 |
そうです。
前任者の吉村もコワモテでしたが、
選手に声をかけるときは
意外に優しいんですよね。
一軍の原監督が
積極的に若手を使ってくれるので、
おもしろいし、やりがいもあるそうです。
いま、一軍打撃コーチの村田も、
「いつか二軍で
キャッチャーを育ててみたいな。
おれと同じ高卒で無名の選手を
一から教えてね。
これはもう、おれの夢やなあ」
という話をしていました。 |
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糸井 |
あぁ、それは、いいなぁ。
いい話ですねー。 |
赤坂 |
はい(笑)。 |
糸井 |
あの、いまって、二軍の監督やコーチが
すごく重要な時代だとぼくは思ってるんです。
そこで手をかけたこと、育てたものが、
やがては一軍の試合をつくっていくというか。 |
赤坂 |
そうですね。
去年、日本一になった西武の渡辺久信も、
二軍監督の経験がすごく活きてる人ですから。 |
糸井 |
いい意味での若さがあるんですよね。
西武のエースとして一時代を築いたあと、
台湾でやったりして
そうとう苦労は積んだんでしょうけど。
やっぱり、見たまんまの、ああいう人なんですか? |
赤坂 |
そうです。
でも、怒ったらけっこう怖いらしいです。
デーブに聞いた話ですけど。 |
糸井 |
うん、わかる気がする(笑)。 |
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赤坂 |
渡辺監督の話でいうと、
去年の日本シリーズの第7戦。
片岡がデッドボールで出て、走って、送って、
中島裕之の内野ゴロで
同点に追いついた場面がありましたよね。 |
糸井 |
もちろん覚えてます。
強烈でした、あれは。 |
赤坂 |
デーブと会ったとき、
あの場面についての話になったんです。
渡辺監督や片岡、栗山、中島たちと、
どんな話をしていたのかと。 |
糸井 |
ほぅ、ほぅ。 |
赤坂 |
まず、片岡がデッドボールで出ます。
巨人のマウンドにいたのは
あのシリーズで絶好調だった越智で、
正直、片岡は手も足も出ない。
そこでデーブと渡辺久信は
「当たってください。
当たってでも出てください」
と選手たちに言ってたらしい。
そしたらインコースに来て、
片岡はヒジに来たところを
後ろによけずにゴーンと当たった。
で、その瞬間に、
「よっしゃ!」ってガッツポーズ。 |
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糸井 |
そうそう(笑)。 |
赤坂 |
で、つぎは2番の栗山。
回も詰まってるし、セオリーなら、
そこで送りバントだと思うんです。
でも、デーブはこう言うんです。
「監督が送りバントのサイン、
出さないんですよね」って。
かといって「打て」のサインも
「走れ」のサインも出さない。
どうしたかというと、
片岡が走るのを待ったんです。 |
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糸井 |
走らせたわけじゃなく? |
赤坂 |
じゃないんです。
というのも、あの年の西武って、
「好きなときに走れ」っていう野球なんですよ。
攻守全体にわたってそういう感じで、
チームバッティングで右打ちさせたりもしない。
「思い切って引っ張れ!」っていう野球で
それまで勝ってきたチームなんです。
だから、片岡に「任せちゃおう」と。
で、実際、片岡は初球に盗塁決めちゃうんです。 |
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糸井 |
迷いなく行きましたよね。
あれで球場のムードが変わった。 |
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赤坂 |
ただ、それは、
監督が動かしたわけじゃないんです。
「どうせ走るから、任せちゃおう。
ほら、走った」という流れなんですね。
あとで渡辺監督がデーブに言ったのは、
「いやぁ、送りバントも当然考えたけど、
片岡のガッツポーズを観た途端、
おれの頭の中から
そのサインが消えたんだよ」と。
あえて言いますけど、これって、
名采配でもなんでもないですよ。 |
糸井 |
はははははは。 |
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赤坂 |
でも、片岡は二塁まで行った。
で、栗山が送って一死三塁。
この場面は、渡辺監督のサインです。
バッターは3番の中島裕之ですが、
じつはあの時点で手首と脇腹を痛めてて、
外野フライも期待しづらい状態だった。
だからもう、片岡の足に期待して、
内野ゴロ打たせて本塁に突っ込ませるしかない。 |
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糸井 |
はーーー。 |
赤坂 |
最悪ライナーでゲッツー、
ホームゲッツーもある。空振りもある。
でも、ここはサインを出して
中島が叩きつけるのに期待して、
片岡を走らせる。 |
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糸井 |
それは、采配としては‥‥。 |
赤坂 |
いや、ふつうに考えたら、
リスクが高すぎると思いますよ。
でも、渡辺監督はそういうことを
やっちゃえる監督なんですよね。
先発の岸をリリーフで投入したのも、
そういう意表を突く采配の一つでしょう。
デーブにも選手にも、
「失敗したら責任取るのはおれだから」
と言ってるそうだし。
ただ、それが、いわゆる名監督の
やることかと言われたら、
違うような気もするけど、やっぱり(笑) |
糸井 |
(笑) |
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赤坂 |
でも、それで勝って日本一になった。
だから、もう、いよいよ、
名監督とはなんぞや、ということが
よくわからなくなっちゃった。 |
糸井 |
そうですね。
事実から組み立てていくしか
ないんだろうなぁ。
理屈で固めて勝てるかというと
そうじゃないわけだから。
いや、でも、やっぱり
おもしろいなぁ、そういうのは。 |
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赤坂 |
そうなんです。
いま、そういうところも含めて、
野球がおもしろいんですよ。 |
糸井 |
そうですね。 |
赤坂 |
魅力的で、ステキなんです。 |
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糸井 |
うん(笑)。 |
赤坂 |
すいません、なんだか長くなりました。 |
糸井 |
いえいえ、最後に
いいドキュメント作品まで
1本、披露していただいて。 |
赤坂 |
(笑) |
糸井 |
ありがとうございました。 |
赤坂 |
こちらこそ、ありがとうございました。
(赤坂さんと糸井の対談は
これで終了です。
お読みいただき、
どうもありがとうございました) |
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