むかしの暦で、いまを楽しむ。 旧暦と暮らす「ほぼ日」の12か月。
2006-08-29-TUE
旧暦:閏七月六日
暦のなかの言葉、誤解がいっぱい!
近松先生
近松
二十四節気のなかの「立春」とか「立秋」って、
どんな日のことを指すと思いますか?

ハイ、「立春」は、今日から春だという日、
「立秋」は、今日から秋だよ、という日です!

近松先生
近松
ううむ、では、ことしは2月4日に立春、
8月8日に、立秋だったのですが、
2月4日って、もう温かかったですか?
8月8日って、もう涼しかったでしょうか?

いえ‥‥2月ってすごく寒い日続きでしたよね‥‥
それからこないだの8月8日なんて、
むしろ、ものすごく暑い日で
「なにが立秋じゃい!」と思いました。
テレビでは「暦の上ではもう秋です」なんて
言っていましたけれど、どうも実感がありませんでした。

近松先生
近松
そうでしょう?
二十四節気はもともと中国の華北省の気候に
もとづいてネーミングされたもので、
日本の気候とは多少ずれていました。
またその、 意味を、とりちがえている人が、
多いんですよ。

ええっ?!
‥‥というわけで今回は
「旧暦のなかに記されていることばいろいろ」についてです!


じつは「立春」は、「寒さのピークあたりの日」、
「立秋」は「暑さのピークあたりの日」
ということなんだそうです。
‥‥文字にある季節より、ひとつ前の季節の盛り、
ということになります。
その日を境に、季節が、立春なら春へと、
立秋なら秋へと向かっていきますよ、
という意味なんだそうです。
立春は「もうこれ以上、寒くなることはないから、
がんばろう!」、
立秋は「まだまだひどく暑いけど、
だんだん涼しい風がふいてくるよ〜」
の日だと思ったらいいのですね。

同じように「立夏」は
「きょうあたりがいちばん春らしい日。
 これからどんどん暑くなるぞ〜!」の日。
「立冬」は「秋もたけなわ、いい季節! でもこれから
どんどん寒くなっていくから、気を付けてね」
の日だと考えれば合点が行くでしょうか。

二十四節気 「ほぼ日」的なかいせつ。

このあとの1年間の「二十四節気」について、
日付とともに「ほぼ日」的にかいせつをしてみましょう!

  よみかた 日付
(新暦)
「ほぼ日」的なかいせつ
    2006年  
白露 はくろ 9月8日 朝夕に露が見え始める時期です。
大気も冷えてきたんですね〜。
秋分 しゅうぶん 9月23日 天文学的に言うと、
太陽が秋分点を通過する日です。
昼と夜の長さがほぼ同じになる日。
この日は祝日の「秋分の日」です。
寒露 かんろ 10月8日 寒くなってきました。
露が冷たくかんじるようになります。
霜降 そうこう 10月23日 さあじっさいに霜がおり始める! 
ほんとに寒くなってきたなあ。
立冬 りっとう 11月7日 もう秋まっさかり。
でも、気の早い人は
「冬の気配がした」宣言をしましょう。
小雪 しょうせつ 11月22日 ほんのすこしだけれど、
雪がちらついてもおかしくない時期です。
大雪 たいせつ 12月7日 いよいよ雪も本格的に降るようになりました。
動物なんか冬眠しちゃいます。
冬至 とうじ 12月22日 天文学的に言うと
「太陽黄経が270度のとき」です。
夜がとっても長い日です。
柚子湯に入ってあたたまりましょう。
    2007年  
小寒 しょうかん 1月6日 さあ、これからもっともっと寒くなるぞ〜! 
の時期。
寒の入り(かんのいり)です。
寒中見舞いを書く人はこの日からどうぞ。
大寒 だいかん 1月20日 天文学的に言うと
「太陽黄経が300度のとき」です。
ものすごく寒い時期です。
寒稽古をしたい人はこの日にどうぞ。
立春 りっしゅん 2月4日 寒さもピーク。もうこれ以上は寒くなりません。
気の早い人は「おっ、春の気配がしたぞ!」
と言ってください。
ちなみに、二十四節気の基準日です。
雨水 うすい 2月19日 もう雪は降りません。
降るなら雨です、という時期。
積もった雪も溶けはじめます。
啓蟄 けいちつ 3月6日 虫たちが冬眠からさめて
モゾモゾと出てきます!
春分 しゅんぶん 2月21日 天文学的に、太陽が春分点を通過する日です。
つまりは、
昼と夜の長さがほぼ同じになる日です。
この日は祝日の「春分の日」です。
清明 せいめい 4月5日 草木が芽ぶきます! 
すがすがしくて明るいので
こういう名前がつきました。
穀雨 こくう 4月20日 この時期、雨がよく降ります。
その雨が穀物を育てるのです。
立夏 りっか 5月6日 春たけなわ、
ここから先はどんどん夏に向かって
気温が上がっていきます。
気の早い人は「今日から夏だぜ!」
と言ってもいいでしょう。
小満 しょうまん 5月21日 草木がぐんぐん伸びていきます。
芒種 ぼうしゅ 6月6日 芒とは「のぎ」というイネ科の植物です。
その種をまく時期だそうです。
だいたい梅雨入りくらいの時期です。
夏至 げし 6月22日 天文学的に言うと
「太陽黄経が90度のとき」です。
昼の長さが一番長い日。でも梅雨真っ盛り。
小暑 しょうしょ 7月7日 だんだん暑さが増してくる! 
梅雨明けももうすぐ! 
ここから次の大暑までが「暑中」になるので、
暑中見舞いを書きはじめてください。
大暑 たいしょ 7月23日 天文学的に言うと
「太陽黄経が120度のとき」です。
もう暑くて暑くて! な時期。
立秋 りっしゅう 8月8日 さあこの日あたりで暑さはピーク! 
つまりいちばん暑い日! 
これからだんだん涼しくなりますから、
気の早い人は「秋の気配を感じちゃう」
なんて言ってもよいのです。
処暑 しょしょ 8月23日 天文学的に言うと
「太陽黄経が150度のとき」です。
暑さが峠をこえていきました。
※2006年の「二十四節気」の日付は、日本神社暦編纂会のデータを、
 2007年の「二十四節気」の日付は、凸版印刷のデータを参照しています。


じつは、この「二十四節気」の間隔、約15日間を、
さらに約5日ごとに「初候」「次候」「末候」と
3つの期間に区切る、
「七十二候」という季節の目安もありますが、
これについては、また別の機会にご説明しますね!


毎日見る月と、人々のたのしみ。

さて、話題はかわって、
空に浮かぶ月の名前についてのおはなしです。

月の名前、というと「三日月」(みかづき)や
「十五夜」などが知られていますよね。
「三日月」は新月から3日目、
満月である「十五夜」は15日目です。
その「十五夜」をすぎて、「十六夜」(いざよい)からは、
だんだんと月の出がおそくなっていきます。
そのため、17日目を「立待月」(たちまちづき)、
18日目を「居待月」(いまちづき)、
19日目を「寝待月」(ねまちづき)、
20日目を「臥待月」(ふしまちづき)と言います。
立って待っているどころか、そのうち横になって、
眠りながら月の出を待っていようということになります。

江戸時代には「二十六夜待」(にじゅうろくやまち)
という行事が、旧暦正月と七月の二十六日にありました。
(主に七月を指すことが多いようです。)
この日、月の出を待っていると、
阿弥陀如来・観世音菩薩・勢至菩薩を拝むことができるので、
そのありがたいお姿を夜通し待っていましょうね、
という行事なんですが‥‥じつはこれ、
夜おそくまで起きていてもいいよ! という
口実でもあったのではないか、と、
近松先生は考えています。

【東京名所高輪二十六夜待遊興之図】
江戸では高輪などの小高い場所や品川の海辺などに繰り出す。
(画像をクリックすると拡大します)

暗い夜には眠るしかなかった時代、
それでも夜遅くまで起きて
たのしみたいよなあという気持ちが、
人々にはあったはずで、
後付けで、宗教行事ということにして、
「たのしみやすく」したのではないかと。
(お伊勢参りが旅行の口実で、
 おかみの許可をもらいやすくしたというのと、
 近い感覚なのではないかということです。)


──というところで、今回はここまで。
次回は「新春ってなんだ?」というお話です。
お楽しみに!




近松先生のプロフィール
イラストレーター:玉井升一
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