- ほぼ日
- 友森さんは以前、
動物がいない職場では働けないかもしれない、と
おっしゃっていましたが。
- 友森
- 会社に犬や猫がいないと、
仕事中にさわったり遊んだりできないから
やっぱり嫌です。
会社員というのは、そんなことしないで
ずっとなにか、やってるんでしょ?
- ほぼ日
- そうです、そうですよ(笑)。
- 友森
- 無理です。たぶん、おかしくなっちゃう。
町田さんも、犬や猫がいないところに
閉じ込められて
「小説書け」って言われたらどうです?
- 町田
- いや‥‥、
猫はぼくが小説を書くのが嫌いなんです。
- 友森
-
え?
- 町田
- 「小説などという
バカなものを書くことは
許さない」
と言うんです。
- 友森
- 猫が?
- 町田
- 猫が(笑)。
- 友森
- 「バカなことを、またやって」と。
- 町田
- 「いい加減にしなさいよ」という感じです。
でも、犬は基本的に
人といっしょにいたいものだろうから、
あまり気にしていませんでした。
ただ、いちど、
すごく差し迫ったときがありまして‥‥
「これはちょっと集中して仕事やらなあかんな」
「途中でワーとか、なでたりできへんな」
「よし、自分を追い込もう」
ということで、みんなに
「私は文学の鬼になるからね」
と宣言して、
犬も猫もシャットアウトし
部屋にこもって原稿を書いたことがあります。
そんなとき、ふと、
この部屋に火鉢があったらいいかな、と
思いはじめました。
- ほぼ日
- 火鉢?
- 町田
- 炭に火をつけるという
かなりめんどうくさいことまでして、
「うーん、いい感じだ」‥‥。
- 友森
- そんな時間があったんですか(笑)。
- 町田
- しかもそこに鉄瓶とか
あったほうがいいんじゃないかなと思いはじめて、
「ちょっと行ってくる」
と言い残して出かけました。
「俺は文学の鬼だ」と言いながら
かなり離れた隣町まで鉄瓶を買いに行きました。
- 友森
- むちゃくちゃですね。
- 町田
- それで、羊羹とか切って、
鉄瓶で茶淹れて飲んで、
文学の鬼、幸せだなと思いました。
まぁ、犬の思い出はそれぐらいです、だいたい。
- ほぼ日
- は、はい‥‥。
- 町田
- いままであまり選択的に
「犬飼おかな」「猫飼おかな」と
思ったことがないんですよ。
犬のいる生活ってなんだろうと想像したり、
猫と暮らすことがどういうことかを
考えたりしたこともありません。
事後に「まぁ、そうなっちゃった」という感じです。
まあ、犬や猫がいなきゃいないで
もちろん死ぬわけにいかんから
自分は生きていくんでしょうけど、
ふだんから生活設計をあまり考えておらず、
犬や猫に関してもわりとそうで、
「ま、来たらしょうがないか」
というところがあるんですよ。
- 友森
- そうですね、私も受け身です。
拾ったのしか飼ってないし。
- 町田
- 猫は特にねぇ。
ここに引っ越す前、家を下見に来たとき、
強い雨の日でね、
道に子猫がいたんですよ。
あちゃー、と思いました。
まず妻に
「どうすんの?」と聞かれました。
「どうすんのって、君はどうしたいんだ」
「あなたが決めればいいでしょう」
「そうなの?」
車を運転しながらそんな会話をして、
どうしようかなと思いながら、
いちどは見捨てて通り過ぎました。
ですけど、すごい雨で、
このままだと死ぬだろう、という状況でした。
帰り道、車でブーンと走りました。
右折レーンがあって、信号を右に行ったら
その子猫のおるとこでした。
まっすぐ行ったら
その日に泊まる予定のホテルがありました。
そこでまた妻が
「どうすんの?」と言うから、
「うーん」「ああ、ホテル△#$%&!」
と叫んで、ウィンカーをカッと出して
右に曲がってもうたんです。
- 町田
- 「もう、どっか行って
おれへんかったらええな」
「おんなよ、おんなよ、おんなよ」
と思いながら行ったら、おったんです(笑)。
それで、しょうがないから
連れて帰ってきました。
あとになって、妻に
「あのとき、俺がまっすぐ行ったら
どうするつもりやった?」
と訊きました。
「離婚しようと思ってた」
と言われて。
- 友森
- 曲がってよかったですね。
- 町田
- そんな状況なんで、
「猫のいる生活っていいよね」とか、
あまり思わないです。
- 友森
- 道にいるのを見ちゃうとねぇ。
- 町田
- そうですね。
自分で生きていきそうなやつだったら
いいんですけど、
子猫はまず無理でしょう。
- 友森
- 弱ってたりすると、もう。
- ほぼ日
- おふたりは、ちいさな頃から
動物が身のまわりにいたんですか。
- 町田
- ぼくは子どものとき
ずっと団地暮らしやったんで、
犬も猫もいなかったです。
- 友森
- なのに、いきなりあんなでかい犬と(笑)。
- 町田
- そうですね。
‥‥スピンクが来るとき、
最初、3か月の子犬って聞いてたんです。
▲最初にやってきたのはスピンクです。
- 町田
- 3か月の犬ってこのくらいかな、と
イメージしていたんですが、
はるかに超える大きさで
「えー? これで3か月ですか」
- 友森
- スタンプー(スタンダードプードル)の男の子だと、
3か月だったら、すでに足がとても長いですね。
- 町田
- そうですね。声も大きいし。
ぼくはそれまで猫しか知らなかったんで、
スピンクを家に連れて帰ってきて
耳元で「ワン」と大声で言われたとき、
てっきり「怒ってんねや」と思って、
泣きました。
- 友森
- 怒ってないですよ(笑)。
- 町田
- ただ「遊べ」と言ってるだけでした。
(つづきます)
2015-03-13-FRI