メールを読みます。その7

ほぼ日
次のメールにまいりましょう。

小学生時代から高校生時代まで、
ランという名前の犬を飼っていました。
自分が「ほしい」と親にねだって飼ってもらいました。
なのにすぐに面倒を見なくなり、
散歩に連れて行くよりも友達と遊ぶことを優先して。
自分がむしゃくしゃしたときには、犬にあたり。
なのに、それでもいつも私が家に帰ると、
尻尾を振って玄関まで出迎えてくれて。
病気になってしまって、
もうダメかもしれない、となってから、
その子のほんとうの大切さを知りました。
なんでもっとかわいがってあげられなかったんだろ。
いまでもその子にすごく、すごく、謝りたい。
ゴメンね。
後悔しています。
動物はすごく好きですが、
まだ、次の子を飼う自信がありません。

(ランのお姉ちゃんより)

町田
ううーん。
子どもがほしがるから犬を飼う、というのは、
どうなのでしょうか。
友森
そうですね、正直言いまして、
それはありえないです。
町田

しかもこの方は小学生でした。
「ちゃんと面倒みるよ」といっても、
小学生にはみられないのです。

友森
子どもがなにかを
育てられるわけないですもんね。
町田
ランは信じてて、
一緒に遊んでほしいなと思ってるわけですよ。
でも、「文学の鬼」とか言って
自己都合を優先しているわけですよ。
友森
羊羹切って(笑)。
でも実際、世話しない人のほうが飼いたがるものです。
子どももそうです。
悩むのは、めんどうをみる方、
ほとんどがお母さんです。

多頭飼いのおうちで、
さらに犬をもらおうとする人が
ミグノンにも来ます。
先日も、すでに犬が5頭おうちにいる方が
譲渡会にいらっしゃいました。
「預かりボランティアじゃなくて、
 譲渡希望でよろしいしょうか」
と訊いたら
「もうあと2~3頭、飼えそうなんで」
とおっしゃいました。
心配だったので、
「先住犬ちゃんと、相性を見ましょうか」
とお願いして、ご自宅に行くことにしました。
相性は、実は1度見ただけではわかりません。
でも、それを口実に
ほかの犬たちに会うことにしました。

やっぱり先住犬たちはぼっそんぼっそんで、
手入れもしていない状態でした。
保護犬のほうがきれいにしてました。
手入れしないからいっぱい飼えるんですね。
ちょうど保護犬と吠え合っていたので、
お断りすることにしました。
闇雲に犬をほしがる人がいたら、
そのあたりに気をつけたほうがいいと思います。
ほぼ日
子どもさんを譲渡の
申込者にする方もいますね。
友森
はい。
「この子の犬なので」といって
書類を子どもに書かせて、
譲渡のやりとりのメールも
子どもに打たせる人がいます。
教育の一環だと思ってらっしゃるんですね。
町田
すっごく急いでるときに、
スーパーマーケットのセルフレジを
子どもにやらせてる人がいるんですが、
ごっつ、腹たつんです(笑)。
ほぼ日
それはまた、別の話‥‥。
友森
でも「教育の一環」という考えは共通ですね。
そういう人、けっこういるかも。
周りは迷惑してるんだけど、
その状況が見えなくて。
町田
まあ、別にそんな、私のスーパーの話なんて、
自分は大人ですし言えばいい話なんですけども、
犬は選択できないから、かわいそうですね。
ほぼ日
子どもに子どもが持てないのと一緒で、
やっぱり子どもに動物は面倒みられないですね。
町田
犬は教育などの道具ではない。
生きものとして生命として、
もうちょっと尊重すべきでしょうな。
友森
盲導犬などの使役犬をみて、
犬は子どものよき友達になるとか癒しになるとか、
勘違いしてる人も多いと思います。
犬は、人間の道具ではない。
使役犬は特別な訓練を受けている犬です。
犬になにも教えてないのに
高度なことを求めるとかわいそうです。
でも、この犬は、すごくいい子だったんだね。
町田
うん。まあ、かわいそうなことをした。
後悔先に立たず、
ということもいえるでしょう。
友森
はい。
町田
ぼくだって若いとき、猫とかいたけど、
もっとちゃんとしたらよかったな、と
思うこと、あります。
ぼくの医療の判断ミスで
亡くなっちゃった子もいます。
だいぶ前の話ですけど、
かわいそうだったと自分は思うしかないです。
そういうことがあったら、これからは自分で
ちゃんと勉強するなりして。
友森
そう。ちゃんと勉強するしかない。
町田
あるいは、この方のように
もう飼わないというのも
ひとつの選択肢かもしれません。
飼う自信がないというよりも、
「無理だから飼わない」とはっきり表明するのがいい。
それこそが自分にとってできることだ、というのも
ちゃんとした態度だと思います。
友森
なんだか万人が
動物を飼うという雰囲気がおかしいと思います。
種族が違うもの同士が
ひとつの生活空間に収まるのは大変なことだし、
いっぱい人が住んでる町なかで動物が暮らすのは、
けっこう特別なことです。
町田
うん、大変。大変だ。
友森
みんなわりと気軽に飼うから
わかりづらいんですけど、
「うちはいまの生活では
 きちんとできないから飼いません」
ということは、いちばんの
動物愛護かもしれないと私は思っています。
町田
私が子どものときなんか、
犬を飼いたかったけど、
「うちはそんなん飼えません」
と、親はきっぱり言ってました。
飼わないのがひとつの動物愛護というのは、
確かにそのとおりですね。
ほぼ日
こういう
「過去につらいことがあって、いまは飼えない」
という方のメールが
今回、とても多かったです。
友森
後悔してる人が多いし、
それを自分でわかって受けとめている人が
たくさんいらっしゃるんですね。
でも、特に子どもの頃のことってそうですよ。
ほぼ日
昔は知識もなかったし、医療のことも
知れ渡ってなかったですもんね。
町田
いまは飛躍的にフードもよくなってるし、
さっきのフィラリアの飲み薬も
ノミのフロントラインも、昔はなかった。
友森
ノミはノミ取り櫛で取るもの、という感じでした。

(つづきます)

2015-03-23-MON