宮部 |
ゲームのシナリオを書かれる方っていうのは、
イベントとイベントの緩急、
バランスというものを
すごく工夫されるんだと思うんですけど、
通常は何人かシナリオライターの方が集まって
大勢で作られることが多いんでしょうか? |
坂本 |
どうなんでしょう。
やはり作っている人とか、
作っている作品によって
やり方は違うとは思いますけれどもね。
僕なんかは、ホントにもう、ひとりで、
とにかくこうするんだっていうのをまず決めて、
それをきちんとわかったうえで
ほかのスタッフに伝えていかないと、
うまく仕事が運べないんですよ。
だから、自分にはそれしかわからない。
で、そうやってやっていくと、
「こんなイベントがあると楽しいね」っていう
アイデアが出てくるんで、
それをしかるべきところに、
うまく当てはめて取り入れていく。 |
宮部 |
ああ、なるほど。 |
坂本 |
当初考えた設定とは少し違っていく部分とかも、
やっぱり出てきますし。
作っていくうえで変えたほうがいいところは
積極的に変えていこうと。
とくに自分が迷ったりした部分なんかは
スタッフの意見やアイデアが参考になりますね。
これじゃダメだ、っていうことなんかも
正直に言ってくれるんで。
だから、
ひとりで全部決めてるわけではないですね。 |
宮部 |
坂本さんのゲームのお仕事と、
私の小説の仕事では
かかわる人数や規模がもちろん違いますけど、
いまおっしゃったやりかたは、
小説家の仕事のやりかたと似てると思いますね。 |
坂本 |
あ、そうなんですか。 |
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宮部 |
ええ。私の場合も、まずひとりで決める。
で、担当の編集者と相談して、
「これだとちょっと
印象が薄くないですかね」とか
「もうちょっとここは盛り上がりがほしい」とか
キャッチボールをしていって、
変えられるところは変えていくっていう。
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坂本 |
ああ、宮部さんもそうなんですか。
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宮部 |
はい。まあ、それは、
私がそうやっているというだけのことで、
小説家の方の中には、
ほかからの意見を求めない方も
きっといらっしゃると思うんですけども。
私はわりと、聞かないとダメなので。
だから、連載してるときなんか、
「おもしろくなかったら
おもしろくないって言ってね!」って
よく編集者に頼むんですよ(笑)。
「おもしろくないって言わずに、
おもしろくないものができたら
あなたの責任よ!」って(笑)。 |
坂本 |
(笑) |
宮部 |
やっぱり、自分ひとりでは難しいです。
きっとそれは坂本さん
同じかなと思うんですけど、
ひとりで一生懸命考えて作っているだけだと
見えなくなる部分ってありますよね。 |
坂本 |
あります、あります。ホント、そうですよね。 |
宮部 |
「これでおもしろいのかな?
これで楽しんでもらえるかな?
これで理解してもらえるかな?
わかりにくくないかな?」
ってことを、
つねに考えてるつもりなんだけど、
どこかでやっぱり、自分ではわかってるから、
「きっとコレでいいはずだ!」
っていうふうに思っちゃう。
すると、もう、目の前に紗が掛かったみたいに
見えなくなってしまって。
だから、坂本さんの場合はスタッフの方に、
私の場合は担当者とかに、ちょっと冷静に、
違う方向から見てもらって。
「これもうちょっと説明がいりませんか」
とかって
言ってもらわないと、やっぱり不安だな、って。 |
坂本 |
わかります。 |
宮部 |
そうですよね。 |
坂本 |
あの、『メトロイド フュージョン』のときも、
最後のほうの物語の背景みたいな部分を書いていて、
まあ、それはゲームには入らなかったんですけど、
最初に書いたものを横にいたスタッフが読んで、
「坂本さん、これ、何を言うてはるの?」って(笑)。
「わからへん」って言われて、
はじめて「なにっ!?」ってなったりとか。
なんかね、自分ではこう、語ってるつもりで、
ぜんぜん言葉が足りてなかったんですよね。 |
宮部 |
はいはいはいはい。
やっぱり周囲の力がすごく大切なんですよね。
私なんかも本当に、それがないと、
思いがけない大きなところを見逃してしまって、
「ああ、説明が足りなかったんだなー」なんて
思うことがよくあって。 |
坂本 |
どうしてもね、自分ではわかってて、理解してて、
「こうあるべきだ」っていう部分と、
人がそれを理解する部分っていうのは、
けっこうズレてる部分とかもあったり。 |
宮部 |
はい。 |
── |
いっぽうで、
「わかるヤツにわかればいいんだ!」
っていう提示の方法もあると思うんですけど、
おふたりとも、やっぱり、それよりは……。 |
坂本 |
いや、やっぱり、わからないのはダメでしょう。
それが答えだと思うんですよ。
伝えたいことが伝わらないっていうことに、
メリットなんてないですよね。 |
宮部 |
ええ。私の場合は、やっぱり、
「よく読んだけどわからなかった」って
言われちゃうと、悲しいんですよ(笑)。
だから、とりあえず、伝わることを、旨に。
娯楽小説だからなぁ、っていうのが、ありますね。 |