糸井 |
結局、フジテレビのDNAだとか、
日本テレビのDNAと言われてるものって、
「最低限の約束ごと」が、局ごとに
違うからあるものなのかもしれないね。
次の代とか、前の代とかさえ関係なく、
「やっちゃいけないことリスト」と
「やるべきことのリスト」が、
無意識で、あるんじゃないでしょうか? |
三宅 |
あると思います。
それを守ってほしいなとも思っています。 |
糸井 |
そのぜんぶを
伝えている覚えはないとしても、
きっと、「リスト」はありますよね? |
三宅 |
ぼくにはやっぱり、
ぼくが入社当時の編成方針だった
「母と子のフジテレビ」
という意識があるんです。 |
糸井 |
あぁ、なるほど!
すごいなぁ、その言葉は……
最近思うんですけど
「どうして会社が作られたか」
ってものすごく大事なんです。
「母と子のフジテレビ」で、
みんながひとつになった時代が
あったんでしょうねぇ。 |
三宅 |
やっぱり、カリスマ的な方々が、
いらしたんですよ。
いくつかの制作会社のかたちを
取っていたときには、仲が悪くて
おたがいに資料を貸さなかったり、
バカバカしいことをやっていたんです。
そういうことを一切やめて、
フジテレビとして
制作部門を統一してはじめて、
日テレやTBSといった、外に
エネルギーを向けられるようになったんです。 |
糸井 |
若い会社という意識が、
すっごく強かったということですね。 |
三宅 |
はい。 |
糸井 |
日テレは若い会社っていう
意識ではないですよね?
いちばん古いけど、
寄りきりで勝つんだ、
みたいなところがあるんでしょうね。 |
土屋 |
どうなんでしょうか。
だけどやっぱり、読売であり、
巨人であるというところは、
背負っていくべきだと思うんです。 |
三宅 |
たとえ数字が下がったからといっても、
巨人戦の数字をあげようとする日テレよりも、
「数字が下がっても、
うちはずっとアレでいくんだから」
と決意している日テレのほうがコワイですよね。
「巨人戦のかわりに、こちらで取ってやる!」
という考え方をされたほうが、
たぶん、他局はおそれる……。 |
糸井 |
ケンカしてる最中に、ヘラヘラと
「ケンカ止めましょう」と言われたら、
もっと殴りますよね。それと同じだ。 |
三宅 |
(笑) |
糸井 |
相手が「オレに被害はない」って、
自信を持っちゃうんですよ。
会社どうしがみんな、
そのパターンにハマッてますよね。
……なんか、おもしろいなぁ、
こういう話をしているの。
また、三人でこういうふうに話しませんか? |
三宅 |
また、ぜひ。 |
土屋 |
ぜひ。 |
三宅 |
ぼく、お話をするの、好きなんです。 |
糸井 |
そうですか。
じゃあ、今度は、それぞれが、
いろいろ会ってきた人について話したいなぁ。
例えば、三宅さんや土屋さんが、
それぞれの会社の歴代の
経営陣や名物ディレクターたちを、
どう見てきたのか。
その視点は、ぼくも知りたいなと思うし、
見ている人としての気持ちも聞きたい。
さらに、出会った芸人さんについても
うかがいたいですから。
三宅さんならさんまさんだし、
土屋さんならダウンタウンかな?
その人たちにかこつけて、また、
自分たちの話をしてもいいですし。
こういうことって、
どこの本にも
出ていない話だから、おもしろいね。
なんだか、テレビ局の人たちに
読んでもらいたい話というか。 |
三宅 |
ほんとは、そうだね。 |
糸井 |
そうしたら、言わなくて済むもんね。 |
三宅 |
今度、二七時間テレビをやるので、
久しぶりにスタッフたちと話をしたんだけど、
いいんです。
よきフジテレビみたいなものを、
取り戻そうという雰囲気がある。
去年は、ひどいものだったんですけどね。
そもそも日テレさんが
二四時間テレビをやっているから、
パロディとしてやっていたはずなのに、
大マジでやってしまったから……。
それをさんまさんが
「フジテレビで
それをやらなくたっていいじゃない」
と怒っていて。
だから、
『大反省会』という番組が生まれたんです。 |
糸井 |
さんまさんのすごいのは、
それをちゃんと引き受けて、
番組の司会者もちゃんとやるところですよね。 |
三宅 |
それをおもしろがるから、
やっていただけるんですよね。 |
糸井 |
明石家サンタも、
ずっとやりつづけるじゃないですか。
あれ、ご本人は絶対に
幸せになっちゃいけないということですよね。
やっぱりそういうところがすごい。 |
土屋 |
そういう意味では、
テレビマンたちが
守りきれていないテレビを、
さんまさんが守ってくれていると
言いますか……。
どうしてもぼくたちが
「一円でもたくさん稼ぐ」
と言わなければならないところを、
「さんまさんが言うんだから
しょうがないじゃん」
という言葉で守ってくれている。 |
糸井 |
そのとおりですね。 |
三宅 |
フジもそうです。
さんまさんは、昼間のさんま大先生しか
レギュラーはないんです。それなのに、
『大反省会』のようなところでは、
いろいろやっていただいて。 |
糸井 |
ぼくが、三宅さんが関わった
仕事のなかでいちばん感心しているのは、
『ひょうきん族』ではなくて
『さんま大先生』なんです。
つまり、あの番組って
「じょうずに引きだす人さえいれば、
生きてる人は全員おもしろい」
というコンセプトじゃないですか。
画期的だと思うんです。 |
三宅 |
さんまさんがすごいのは、
こないだの土日に宮古島へ行ったんですが、
小学生たちと、すぐに同化するんですよ。
向こうに「パニパニ」という方言があって
「元気だ」という意味なんですが、
知ってすぐに「パニパニ」と踊るわけです。
そうするともう、一年生が
キャッキャ言って笑うわけですよ。
その「パニパニ」を、
延々、二十何回もやりましたから……
すばらしいんです。
こちらは、土壌を作ればいいだけの話なんです。 |
糸井 |
そう簡単に言うけど、ディレクターとして
場所を作ることも、すごい仕事なわけですから。
今度は、こういう話を、たっぷりしましょうか。
どうも、ありがとうございました。 |