土屋 |
『ひょうきん族』は、
漫才ブームの流れの生き残り組ですよね。
ツービートや、紳助竜助がいたりという、
すでに「演芸」という分野で
エネルギーがたまっていたものを、
ポーンとテレビに映してみたら
「おもしろい!」ということで、
ブームが、やってきたんだと思うんです。
ぼくは、いまのテレビのお笑いは、
それとは、ちょっと違うと考えています。 |
三宅 |
お笑いブームと言うよりは、
「お笑いネタブーム」なんですよね。 |
土屋 |
ええ。
子どもたちが、
中学生なり高校生なりになったときには、
やっぱり、それぞれ、
自分の年に近い笑いを
要求するじゃないですか。
だから、
「新しいお笑い」というのは、
たぶんこれからも、
どんどん出てくると思います。
だけど、それが、
さんまさん、たけしさん、
紳助さん、ダウンタウン……
というように生き残るためには、きっと、
売れはじめたときのものとは違うものが、
まちがいなく必要になるのでしょう。
もちろん、誰かは
間違いなく生きのこるんでしょうけど、
そういう別の戦いかたが
あるだろうということは、想像しています。
ダウンタウンと
一緒の時代に育ったテレビマンが
「漫才ブームの世代を張り倒そう!」
という気持ちを持っていたように、
今の若手と組んでいるテレビマンは、
ぼくらの世代を張り倒そうぜと思って、
深夜になにかを
やりはじめているのかもしれない。
それが最終的に
どういうかたちになるんだろう?
とは思うんです。
たとえば、
日テレのネタ番組で言うと、
『エンタの神様』は、
お笑いのジャンルの番組をやっていた
人間からすると、ものすごく
抵抗のある作り方をしているわけです。
人気のないヤツは
どんどん替えていくという
演出があって成立している上に、
ネタを、ありえない長さに編集する……。
あれは、もともと、
お笑い番組ではない、
『クイズ世界は SHOW by ショーバイ!!』
なんかをやっていた
五味というヤツが作っているから
そうなるんだけど、だからこそ、
ふつうのお笑い番組とは
違うものとして成立させているんですね。 |
三宅 |
でも、それで、
番組として成立していますからね。
ああいうところに
落ち着いたというところは、
それはそれで、やっぱりすごいと思います。 |
土屋 |
『エンタの神様』を作っている
五味とぼくとは、番組の作り方が真逆なんです。
だから、理解し合えたりするんですよね。
「あんなにネタを切ってどうするんだ?」
みたいな気持ちはあるし、
方向性は正反対なんだけど、
持っている熱の大きさは一緒なんです。
どんな種類であれ、とにかく
熱を持ってるヤツがたくさんいるほうが、
テレビ局はおもしろいぞと思っていますので。 |
三宅 |
かつてのフジテレビの
『ボキャブラ天国』も、
お笑いの好きな人が
作っていた番組ではないんですね。
『エンタの神様』も、
いま聞いてわかりましたけど、
どちらも、だからこそ
成立するのかもしれないですよね。 |
糸井 |
なるほど。
お笑いを職業にする人は増えたけど、
より「消費財」に近いものにも
なっているということですよね。 |
土屋 |
今は、それぞれのお笑いの事務所が、
学校みたいなことをやっていて、
これだけ芸人さんがたくさんいるから
「オレも入れるかな?」と思って、
クラスのなかのおもしろいヤツらが、
どんどんそこに入ってくる……。 |
糸井 |
よく言うことだけど、
テレビに出て笑わせている人って、
クラスにいたら、
もう、天才中の天才で……。
学校だの、ある地域だので、
いちばんおもしろい人が
集まってるわけですよね。
ジャニーズ事務所の
出身者のようなものだから。 |
土屋 |
だから、いま、お笑いの層が、
めちゃめちゃ厚いわけですよね。
しかも、これからも増えてくるから、
若手はほんとにたいへんだと思います。
この前、たまたま
ダウンタウンと久しぶりに会って
「そういえば、
『ガキの使い』がはじまったとき、
いくつだった?」
という話をしたら、
二六歳だったということになるんですよ。
いま、『ガキの使い』の前説をしている
ライセンスという若手が、
ちょうど二六歳で……
「あのふたりは、おまえらの年に
『ガキの使い』をはじめてるんだぞ」
と言ったら、ライセンスも
「いやぁ、すみません」と言うんだけど……。
いまはもう、
その頃とは、同期の数が違うわけです。
それから、ダウンタウンと
20代の若手たちの間にさえ、
宮迫たちがいるような時代ですから。
そんな中から抜けていくのは、
たいへんだろうなぁということを、
前に松本たちと話しました。
ほんとに、若手って、すごい数ですよ?
どうするんだろうなぁ、とは思います。 |
糸井 |
ただ、ぼくは、
お客さんとしては、
チャンネルを替えて見ています。
落語の奥深さも、
たまらなくおもしろいと思いますし、
若手が笑わすために
一生懸命ジタバタしているものも、
やっぱり「違う種類のもの」として
たのしみたいんです。 |
三宅 |
なるほど。 |
糸井 |
『ロバートホール』なんかで、
できあがってないような
ネタがありますよね。
それはそれで、
見ているこちら側のほうで
「こういうことだ」
と、足して見ちゃうんです。 |
三宅 |
……ぼくは、
腹が立ってきちゃいますけどね。
『ロバートホール』は、
根本的に、できてないんです。
だからやっぱり、
「成立してないものを出しちゃうと、
逆に、出る芸人さんたちが
かわいそうだろう?」
という気持ちになっちゃいます。 |
糸井 |
ぼくは
「成立しているかどうか」に
ついては、
忘れようと思って見ているんです。
「そのまま、死ぬなら死ね」
というふうに見ていたほうが、
残酷だし優しいかなと思っていて……。
もちろん、『ロバートホール』は
明らかに成立してないんだけど、
拾いもんだっていうか。
ぼくがあの番組でいちばん笑うのは、
おぎやはぎが、いつまでも
投げ飛ばしているネタなんです。
あとは、有田のプロレスのマネ。
ああいうものも、
成立してないとは思うんです。
だけど、あれだけの数、
投げ飛ばすということ自体で、
オッケーになっちゃうんですし、
プロレスにしても、
なにがおもしろいのかがわからない、
というところで、
つられて笑っちゃうというか……。
そういうのって、他の、
もうちょっと
よくできている人たちに比べても、
点が甘くなっちゃうんです。
だから、成立しないままに
なっているようなものも、
拾いまくって見ているんです。
ただ、そういう見方って、
結局のところ、
つぶす人の数も増やしちゃうんですよね。
本職になると、三宅さんのように
「何をやったっていいけど、
少なくとも着地はしろよ」
と言わないといけないのかもしれません。 |
三宅 |
もちろん、いま
糸井さんがおっしゃったように、
見る側は、それでいいんだと思います。
いろいろな「好き」を、
それぞれ見る側が
見つければいいのでしょうから。
ただ、どれがおもしろいかを
競うような番組って、
ぼくはあんまり好きじゃないんです。 |
|
(次回に、つづきます) |