| 糸井 |
ここで、ちょっと、
話題を変えましょうか。
三宅さんと土屋さんは、
バラエティ番組を作る人間として、
これまでテレビの世界で、
たくさんのすごい人と
一緒に仕事をしてきたと思います。
仕事は一緒にしていないまでも、
活躍を近くで目の当たりに
してきただろうなぁ、
と想像をしているんです。
まずは、代表的な人物について、
あえて改めて、
「どこがすごいんですか？」
ということをうかがいたいんですけど……
はじめには、
タモリさんから行きましょうか。 |
| 土屋 |
タモリさんは、
昔、山下洋輔さんと一緒に
「全日本冷やし中華愛好会」
という会を、
やっていらしたじゃないですか。
「その『冷やし中華愛好会』の祭を、
一橋大学でやっていただきたい」
ということで、大学の学園祭に
来ていただいたことがあるんです。
ともだちが、
山下洋輔トリオの
事務所を知っていたんだと思います。
それは、たぶん、
ぼくが大学二年か三年のころです。
まだ、赤塚不二夫グループというか、
密室芸人と言われていたりというときで、
そのときにやっていただいたことも
「四か国語マージャン」でした。
タモリさんとは、
その後、テレビの仕事では、
ほとんど接触がないですが、
画面で遠くから拝見していると……
「ここまで引き出しがあるんだ？」
ということに、二十何年間、
やりつづけているというすごさがあると、
ぼくは思っています。
はじめは、
山下洋輔さんや赤塚不二夫さんたちの
宴会に出ていたタモリさんが、
テレビ東京（当時、東京12チャンネル）で、
『空飛ぶモンティ・パイソン』の
合間のコントや司会で
活躍するようになってゆく、
という歴史は、知っています。
ただ、実際に
リアルタイムで見ているのは、
『今夜は最高！』ぐらいからなんです。
「タモリは、密室芸人なんだから、
お客さんを迎えるなんて、できないよ」
そう言われているのに、見事に、
『今夜は最高！』の司会役をやってのけた。
それをやってのけた後に、さらに、
『笑っていいとも！』を
やることになったわけですよね。
「いやいや、
タモリは夜の顔なんだから、
昼なんてダメに決まってるじゃない」
だけど、
またまたそこで活躍の場を広げたわけです。
脱いでもだいじょうぶよ、
脱いでもだいじょうぶよ、とやった結果、
現在まで生き続けられている、
ということについては、よく言う
「引き出しの多さ」があると、
こういうことになるんだなぁ、
と思っています。 |
| 糸井 |
いまのお話に、見事に、
タモリさんについての年表が
ぜんぶ入ってましたけども、
三宅さんは、タモリさんを
どう見ていらっしゃいましたか？ |
| 三宅 |
ぼくも、接点はそれほどはなくて……。
かつて、テレビ番組のスタッフが作る
「桜田淳子を守る会」みたいなものに、
タモリさんもぼくも、
ファンなので参加していたことがあって。
その会の三次会で、
四谷の「ホワイト」という飲み屋に
行ったことがあるんです。
ぼくは三次会からの出席なんですが、
着いたときには、もう
みんながヘベレケになっていて、
タモリさんが淳子さんと
カウンターにふたりだけで話していたんです。
悔しいので、
ぼくも淳子さんの隣に座って、
ブロマイドはもちろん、ペンダントに
淳子さんの写真を入れたものだとか、
もういっぱいグッズを出して、
いかに自分が
淳子さんのファンかということを
アピールして、結局、
タモリさんに勝ったという思い出があるんです。 |
| 糸井 |
（笑）あはははは。
タモリさんには、
「勝った思い出」があるんだ！ |
| 三宅 |
もうこっちもヘベレケになって、
夜中の三時ぐらいに
お開きになったんですけど、
その翌日のロケは、
はじめて仕事を休んだ日になりました。
素人さんのロケだったんですけど、
ＡＤに任せて……でも、
自分のなかでは、許しているんです。
二日酔いで会社を休んでしまっても、
淳子さんに、
あれだけちゃんと伝えられたんだから、
よくやった、と……。
タモリさんとお話をしたのは、
それが、はじめてです。
淳子さんの会では、司会をやったときに、
テレフォンカードにサインをしてくれて、
それをいただいたという思い出もあります。 |
| 糸井 |
（笑）結局、
桜田淳子さんの話になってる！
タモリさんとは、
仕事をするよりも、
桜田淳子を取りあった仲なんですね。 |
| 三宅 |
ええ、精神的に取りあったという。
実際の番組では、
それよりもずいぶん後に、
『27時間テレビ』だとか、
『タモリ・たけし・さんま
ＢＩＧ３・世紀のゴルフマッチ』
などで、少しお会いした程度です。
タモリさんのすごいところは
「サラリーマン的であるところ」
だと思っています。
芸人ではないフラットなところがすごい。 |
| 糸井 |
定時に、通ってこられる。 |
| 三宅 |
われわれ制作者の
多くが想定している、
いわゆる「芸人さん」だと、
あれだけ『いいとも』を
長くはできないものです。
だから、そこはすごいですよね。
以前、さんまさんの家で、
もちつき大会をやるからっていうので、
ぼくも子どもを
連れていったことがあるのですが、
タモリさんも近くだったので、
遊びにきてらしたんです。
ほんとうに、ふつうの格好ですから、
タモリさんのことを、ぼくは三〇分、
そばにいるのに気がつかなかったんです。 |
| 糸井 |
あぁ、保護色を使いますね。 |
| 三宅 |
すごい人だと思う。
存在を消せるというのは……。 |
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（次回に、つづきます） |
