糸井 |
このところ、タモリさんと
続けてお会いすることがあって、
いままでよりも、
たくさん話したりしているんです。
たとえば、タモリさんは、
アルタで番組が終わって、目黒まで
よく、歩いて帰るらしいんですよね。
「気づかれないですか?」
と言っても、平気な顔をして
「いやいやいや」と笑っている……。
タモリさんの歩いている分量って、
どうも、並大抵じゃないらしいんです。
散歩の途中、カメラを持って、
Y字路を撮っていたり……。
おばあちゃんっぽいところが
ありますよね。
毎日、ちゃんと、
おいしいものをおいしくいただいて、
起きる時間には起きて、寝る時間には寝る。
それで「あぁ、おもしろかった」という暮らし。
朝は朝星、夜は夜星、みたいな、
そのふつうさが、タモリさんなんですよね。 |
三宅 |
だから、『いいとも』は、やっぱり、
ごはんみたいなものというか、主食なんです。
誰も気がつかないんだけど、「ほぉー」と思う。
そういうとこがすごいなぁ、とぼくは思います。 |
糸井 |
しかも、
あんまり栄養過多にしちゃうと、
太っちゃうとか飽きちゃうとかいうことを、
タモリさん自身が、自分の体で
わかっているような感じがするんです。
だから、ノリすぎてるタモリさんって、
見たことないですよね。
確かに、鐘や太鼓叩かれてるうちに、
調子づいてイグアナになったりすることは
あるけれど、化けたあとには、
またすぐに元に戻って……。
あの「元に戻ってる」というところが、
また、すごいですよね。 |
土屋 |
『いいとも』のタモリさんがあって、
『ミュージックステーション』の
タモリさんがあって、
『タモリ倶楽部』のタモリさんがあって、
というバランスも不思議です。
マネージメントなのか、
セルフマネージメントなのかは
わからないのですが、そのへんの
彩りのつけかたみたいなものには
「……目的は何ですか?」
と聞いてみたくなります。 |
糸井 |
よく、さんまさんが、
「スタジオに行かなかったら
ヒマでしょうがないから
仕事をしに来ている」
という言いかたするんですけど、
ほんとうにそれを体現しているのは
タモリさんじゃないでしょうか。
アルタに行けば、誰かがいるし、
『ミュージックステーション』
に行けば誰かいるし……
それを毎日やって、
しかも、やり過ぎていないですよね。 |
三宅 |
やっぱり
『タモリ倶楽部』のタモリさんが、
いちばん好きです。
あれがおおもとの、
タモリさんなんだという。
あれは、ずっとつづけて欲しいです。 |
糸井 |
いちばん、
たのしそうにしてますよね。
あれは、やめないんだ、
というのは決めているんでしょう。 |
土屋 |
かと言って、
『ミュージックステーション』も、
あれもお金のためにやっている、
という感じではないわけです。
それぞれの番組で、
自分の中にあるパーツを、
きちんと出している感じがするんです。 |
糸井 |
思えば、タモリさんは、
学生時代には、バンドの司会者でしょう? |
三宅 |
そうです、そうです。 |
糸井 |
その頃から、
同じことをやっているとも言えるわけです。
川崎徹さん(CMディレクター)は、
タモリさんとおんなじ早稲田大学で、
たしか年齢がひとつかふたつ下なんですが、
タモリさんのことを、
「ジャズバンドの司会者としてうまくて、
お金の計算からなにから、
ものすごくちゃんとできる森田さん」
として尊敬していましたから。
「森田さんは、すごかった」と……。
タモリさんのなかには、
敢えて言えば活弁の徳川夢声だとか、
文化人と芸能人の区別が曖昧な時代の
余韻があるんじゃないかなぁと思うんです。
文人画みたいな……。
「絵描きじゃないけど、
あの人の絵がいいんだよ」
そういうふうな。
三宅さんが、さっきおっしゃった
「タモリさんは、芸人さんではない」
という印象は、ほんとうによくわかるなぁ。
タモリさんには、
まず、弟子とか師匠っていう
イメージがないですよね。
「上」もいないし、「下」もいない。 |
三宅 |
そうなんですよ。ひとりだけ、です。 |
糸井 |
全員に対して、平らに接しているという。 |
三宅 |
そうそう、フラットですよね。 |
糸井 |
そこがやっぱり、あの人の独自性なんですね。
「タモリさんに、さんざんいじめられて」
なんて話は聞いたことがないですよ。
そのかわりに
「タモリさんに良くしてもらったんだ」
ということも、聞いたことがないし……。 |
土屋 |
タモリさんは、いわゆる
「徒党を組む」ということがないですね。 |
糸井 |
あのフラットさっていうのは、
やっぱり一生、ああいうものなんでしょうね。 |
土屋 |
タモリさんみたいな人って、いないですよね。 |
糸井 |
タモリさんみたいに
なりたいっていう人も、聞いたことがないです。 |
土屋 |
「あ、こいつは、将来タモリになるな!」
っていうのも、いないです。 |
糸井 |
(笑)いない。 |
三宅 |
タモリさんみたいに、
ああいう昼間の番組を持ちたいな、
というのはいるかもしれないけど、
タモリさん個人に向かって
「ああなりたい」
と思って進んでいく人は……いないですね。 |
糸井 |
うん。
「ぼくはどっちかっていうとタモリ系です」
なんて人、いないよね。 |
土屋 |
タモリさんの正体って、なんなんでしょうか?
一般的に言えば、それこそ
「タレントさん」というくらいですから、
テレビに出てくる人たちというのは、
「特殊な才能があるということ」
が、前提になるじゃないですか。
ところが、いままで話してきているような、
タモリさんの「ふつうでいること」って、
いわゆる「才能があること」とは違いますよね。
だから、ぼくは、
タモリさんの正体が、わからないんです。
たしかに、正体が見えないからこそ、
見事と言えば見事なんですけれども。 |
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(次回に、つづきます) |