宮本 |
これは、うちの山内からも、
あるいは糸井さんからも学んだことなんですが、
自分のやった結果を
「謙虚に受け止める」というのと
「必要以上に卑下しない」という
両方ができてないとダメですよね。
自分がやった結果に対しての距離感というのかな。
そういうのってすごく大事で、若い人を見てると、
できてないんですよ、やっぱり。
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糸井 |
なんでしょう、
自己認識っていちばん難しいですね。 |
宮本 |
難しいですねぇ。
自分でも、完全にはできてへんし。
だから、若い人を見ると、つい、
つついてみたくなりますよね。
うまくいってる子にも、そうでない子にも。 |
糸井 |
そうですね。むつかしいんだけどね。
どれだけつついても響かない子もいるし、
触っただけでパンクしちゃう子もいるし。 |
宮本 |
そう。手伝うしかない人もいるし。 |
糸井 |
そうそうそう(笑)。
やっぱり、よくない循環でいうと、
お利口な子どうしがチームになって、
「1のつぎは2で、2のつぎは3で‥‥」
という順番でものをつくるときですね。
知らず知らずにお客さんが
見えなくなってしまうから。
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宮本 |
そうですね。
だから、ぼくはよく若いスタッフに、
自分のやり方をこう解説するんです。
まず、ネガティブな問題をぜんぶ挙げて、
理屈で固めてつくる。
でも、最後は、理屈を度外視して決める。 |
糸井 |
あ、なるほど。 |
宮本 |
どうしてそういう解説をするかというと、
ぼくが理屈でしゃべっているところ
ばっかり聞いていると、勘違いするんですよ。
最後に「度外視して決める」があるから、
最初に理屈でつくるわけで。 |
糸井 |
そうか。2回あるんだね。
建前でつくって、本音で決めるというか。 |
宮本 |
そうなんですよ。
だからね、ほんとうに、
「そのくり返しで
いままで来てると思わへんか?」
とまで言うんですけどね。
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糸井 |
その都度、その都度の、真剣さで
理屈でつくったり、度外視して決めたり。 |
宮本 |
ええ。だから、理論は一貫はしないし、
ぎりぎりのところでなにかが生まれたりするけど、
そういうふうに進める以外になくて。 |
糸井 |
うん、うん。 |
宮本 |
たとえばWiiのコントローラは
最初、ポインター(ある地点を指し示すもの)の
機能を軸にしてつくったんです。
でも、ゲームを新しくしているのは
じつは加速度センサーの役割が大きいわけです。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。 |
宮本 |
加速度センサーというのは
ポインティングデバイスをつくっていくうえで
「こういうのもいいな、入れてみようか」
というふうに派生的に出てきたわけですけど、
そこでそれを取り入れる判断ができたというのは
ものすごく大事なことだったわけですよね。 |
糸井 |
そうですね、そうですね。
「いや、これはポインターだから」って
理屈で進めてたら、ないわけだからね。 |
宮本 |
そういうことのくり返しなんですよ。
かといって、最初から加速度センサーを
メインにしてつくっていたら、
いまのWiiになってないんです。
加速度センサーを入れたことで、
ボタンを減らした意義や効果も
相乗的に現れてきたわけですし。 |
糸井 |
まったくそうだ。
だから、サドンデスのゲームを
ずっとやっているわけだよね。
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宮本 |
うん。そう。毎回、そうなんです。 |
糸井 |
最初のルールとは、平気で変わっていく。 |
宮本 |
だからね、今回の『Wii Fit』でいうと、
「このゲーム、バランスWiiボードという
アイデアがもしも出なかったら、
どうするつもりやったん?」
ということを内部で訊かれることがあるんです。 |
糸井 |
つまり、結果的には、
あのバランスWiiボードが
いろんなむつかしい要素を
うまくまとめてくれてるから。 |
宮本 |
そうなんです。だから、
「これがなかったらどうなってた?」と。
でもね、
「出なかったら、
出なかったなりのものになってるのと違う?」
というのがぼくの答えなんです。 |
糸井 |
ああ、そうだね。そうなりますね。
なにかべつなことを思いつくだろうし、
極端にいえば、それを思いつかなければ、
『Wii Fit』は出ない。 |
宮本 |
そうなんですよ。
そこは、理屈だけでは説明できへんし、
偶然といえば偶然、出会いといえば出会い、
不思議だなあと自分でも思うんですよ。
「ご先祖さんがついてはるから」って言われたら
「そうかもしれん」と思うくらい(笑)。
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糸井 |
逆にいうと、思いつくまで考えるということだね。
つまり、負けたっていうまでは
負けてないという話ですね。 |
宮本 |
そうそう(笑)。 |
糸井 |
卑怯だろうとなんだろうと、
9回表に53点くらい入れられても
「9回裏に54点入れればいいじゃないか」
って言い続ければ、いいんだよね。 |
宮本 |
そうです。
だから、ほんとうに重要なのは、
18回までやる根性があるかどうか、
ということなので。 |
糸井 |
そういうことだよね。 |
宮本 |
ほかではマネできないかもしれない、
と感じるのは、むしろそこですね。 |
糸井 |
なるほどね。
(続きます)
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