中島 |
わたしが大学を卒業するとき、
学長講話があったんですね。
そこでどんなありがたいことを
言ってくれるのかなと期待してたら、
シスターなんですけどね、
「皆様は国文学科をご卒業になりますが、
ご卒業されましたら、
いろんな場面で文字を書くこと、
文章を書くことがおありだと思います。
これはどんな漢字だったろうかと
疑問に思ったときは、
国文学科を出たと思って
漢字を知った振りして使わず、
迷わずひらがなをお使いください
‥‥おわり」、だったんです。 |
糸井 |
それは拍手ものだねぇ! |
中島 |
4年間、文学部で勉強させておいて
卒業するとなったら、
「ひらがな使いなさい。はい、さようなら」
ですよ。
今まで4年間学んだことは捨てろ、みたいな。 |
|
糸井 |
素晴らしい! |
中島 |
はい。あれは肝に命じています、わたし。 |
糸井 |
ぼくもそうしようとしてますね。
できるかぎりダメな方の自分に従おうっていう。 |
中島 |
そうですねー。
知ったかぶりすると痛い目みますよね。 |
糸井 |
疲れているときとか、
知ったかぶりを、
たまにしてしまいますね。 |
中島 |
そりゃ人間ですから。
やっちゃいますよ。 |
糸井 |
あ、やっちゃいますか? |
中島 |
しょっちゅうですよ。
急いでるとき、
頭に血がのぼったとき、
あせったとき、
見栄はったとき。 |
糸井 |
そうですね。
急いでるときは同じですね。 |
中島 |
危ないですね。
体力ないときも危ないですねぇ。 |
糸井 |
体力ないときはだめですねー。 |
中島 |
だめですねぇ。 |
糸井 |
それにしてはたくさん
曲を産み出してるっていう話に
一回戻りましょうか(笑)? |
中島 |
いやいや、少ないですよ。 |
糸井 |
その“少ない”という
言葉の意味がよくわかりました。
これしかできないっていう分だけ
作ってるんですね。
それにしてはいっぱいになりましたという。 |
中島 |
あ、そうなんですかね。 |
糸井 |
うんうん。だってお客さんが
その足取りに付いて来てくれるから、
作る権利があるんですもん。 |
中島 |
うん。 |
糸井 |
作る権利ってやっぱりあるんで。 |
中島 |
そうですね。
書いてもいいよと言ってくれなきゃ
書けないですもんね。 |
糸井 |
そうなんです。
それを頼まれてないのに
書く状況っていうか、
聴いてもらえないかもしれないものを
書くってことが、プロの場合ありうるんですよ。
依頼されてない、
聴いてもらえないかもしれない、
読んでもらえないかもしれない、
けども俺は書けるぞっていう
自負で書いちゃうものが世の中には結構ある。
でも、みゆきさんの場合は、
聴いてくれる人が
ちゃんと見えてるんですよね、ずっと。
その歩みの長さがやっぱり素晴らしいと思う。
聴かれるために作ってるものって、
お客さんが一緒に歩いてきてるなと思わなきゃ
作れないはずなんですもん。 |
中島 |
そうですね。相手あってのことですからね。 |
糸井 |
みゆきさんは、その足取りが
一致している数だけ曲を作ってて、
ずーっとそのペースで歩いてきてらっしゃる。
あ、今急に尊敬語になってしまいました(笑)。 |
中島 |
あははは。 |
糸井 |
今、知らず知らずの敬意が。 |
中島 |
冗談ですか? |
糸井 |
いやいや(笑)。
幸福なことだし、素晴らしいことですね。 |
中島 |
うん、そうですね、ラッキーだと思います。 |
糸井 |
こういう道のりじゃなかったら、
どっかで道を間違うってこともありますしね。
よくぞ、近眼を治さずに‥‥。 |
中島 |
治さずにねっ。 |
糸井 |
うん。よくぞ、そのシスターの教えも守って。 |
中島 |
えへへ。 |
糸井 |
いい教えだなあ。ぼくも覚えとこ。
わかってるつもりだったけど、
改めて言葉になると守りやすくなりますよね。 |
中島 |
ええ、言葉って不思議ですね。 |
糸井 |
何だか歌詞や言葉の話ばかりになっちゃったので、
ここで曲の話も‥‥。 |
中島 |
あ、曲の話はね、
今日はしなくてもいいんですよ? |
糸井 |
曲の話はいいなんて、おもしろいねー。 |
中島 |
あ、でも何かおっしゃりたい? |
糸井 |
うん。 |
|
(つづきます!) |