糸井 |
(部屋に入りながら)
こんにちは〜。
今日はよろしくおねがいします。 |
中島 |
糸井さん!
お暑いなかありがとうございます。
どうぞ、どうぞ。 |
糸井 |
こんな立派なところで。
(対談場所はYAMAHAさんの重厚な会議室。
立派なソファがローテーブルを囲んでいます) |
中島 |
どういうふうに座ったら話しやすいですかね? |
糸井 |
並んで座りますか。ペアシートとか。 |
中島 |
けんか腰になるといけないですね。 |
糸井 |
近すぎると、つい、けんかしちゃう? |
中島 |
なるべく遠くして、
なんか、彼方で怒鳴りあい? |
糸井 |
いやいや(笑)! じゃあぼくがここに。
(長いソファの端に座る中島さんのすぐ近く、
L字になるように、ひとりがけソファに座ります)
これ、おみやげです。わが社の出版物なんです。
(『谷川俊太郎質問箱』をお渡ししました) |
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中島 |
あら、谷川先生の!
ありがとうございます。
うれしいな、本をいただくのって。 |
糸井 |
ちょっと自信のある本ができました。
かわいい本ですよ。 |
中島 |
(本をめくりながら)絵がいろいろ入ってる。
紙質、いいですね。
いきなりそういうことを誉めるか(笑)。 |
糸井 |
意外と元手、かけちゃうんですよ(笑)。 |
中島 |
ねえ。これじゃざっくり
儲かんない会社ですよね(笑)。 |
糸井 |
ええ、まあ、そうかもしんない。 |
中島 |
(大きなかばんから本を出して)
糸井さんのこの『小さいことばを歌う場所』、
読ませていただきました。
本の判型は小さいけど、中身はでっかい。 |
糸井 |
ありがとうございます! |
中島 |
もうちょっと内容を小出しにすれば、
何冊にもなったのに(笑)。
こんなにてんこ盛りぎっしり入れちゃって、
もったいない。
詩だったら、上中下巻になりますよ、これ。 |
糸井 |
そうかあ。
でも、ぼくは詩人じゃないんだ、肩書きが。 |
中島 |
いや、つけりゃつくもんですよ、
肩書きなんつぅもんは。 |
糸井 |
その肩書き、欲しかったぁ(笑)。
この流れだと、ぼくもみゆきさんの
ニューアルバムを褒めなくちゃいけないですね。 |
中島 |
うふふ。お気づかいなく。 |
糸井 |
それにしても(と見回して)、今日はみな
(「ダ・ヴィンチ」と「ほぼ日」の面々のことです)
緊張しまくってて。 |
中島 |
あら、まあ? |
糸井 |
どうしてそういうファンが多いんですか?
あなたには。 |
中島 |
ん? そうなんですか。 |
糸井 |
なんというか、恐れ入る人たちが。 |
中島 |
どうしてでしょうかねぇ。 |
糸井 |
ほんとにすごいね。
“出なさ”ですかね。
出過ぎないのがいいんですかね。 |
中島 |
最近は結構出てますけどね。 |
糸井 |
うーん、出てないかっていうと、
出てるよっていうふうにも言えるしね。
でもみんなと同じように
ぼくもちょっとそういう気持ちがありますよ。
尊敬申し上げてるって意味では。
カチカチにはなりませんけど(笑)。 |
中島 |
先生! 何をおっしゃるんですか。
そんなあ(笑)。 |
糸井 |
いや、やっぱり、あのときに聞いた、
みゆきさんのあの一言は
ずっと残ってる、みたいなのは、
ぼくの中にもありますもん。
例えば、
「旅っていうのは
帰ってくるから旅なんだ」とかさ。 |
中島 |
そんなこと言いました?
わたし、言った端から、
忘れるたちなんです(笑)。 |
糸井 |
ぼくもそうなんですけど。 |
中島 |
ははは。 |
糸井 |
歌詞はどうですか?
ぼくらは、歌詞の中の言葉を
断片的に覚えているけど、
書いた張本人のみゆきさんは、
全歌詞を全編覚えているものですか。 |
中島 |
とんでもない。忘れます。
だから、コンサートのリハーサルは、
まず歌詞を覚えるところから
始めなきゃなんない。 |
糸井 |
素敵ですよ、それは。
だって、フォルムとしてではなく、
その都度、新たに歌い直すってことだから。 |
中島 |
10年前に書いた歌詞でも、
今その言葉を歌うとしたら、
どういう気持ちかな、
ってところから取り組まないと、
歌えませんものね。 |
糸井 |
そうか、“歌手・中島みゆき”はもう一人いて、
その人は曲を作る人の助けになる場合もあるし、
邪魔する場合もあるとさえ言えるんですね。 |
中島 |
そうですね。 |
糸井 |
作り手からすると、
「お前ちゃんと歌えてないじゃないか!」とか? |
中島 |
あ、それはあります! |
糸井 |
あるんですか。 |
中島 |
はい。 |
糸井 |
どっちの自分が勝つんでしょう? |
|
(つづきます!) |