糸井 |
平均すると、1年アルバム1枚のペースですか。 |
中島 |
そんなもんです。 |
糸井 |
楽曲提供もあるでしょ。
それが年に2曲か3曲? |
中島 |
いや、1曲あるかないか‥‥。 |
糸井 |
アルバムが10曲入りだとしたら、
毎月1曲の割合ですね。 |
中島 |
形になるのはね。 |
糸井 |
そうか。漫画家に比べたら仕事してないですね。 |
中島 |
あちらは週刊ですものね。 |
糸井 |
ということは、
ぼくの勝手な印象なのかなあ、
中島みゆき多産系説は。
でも、そう思ってしまった理由は説明できるんです。
それはね、全曲どれもしっかり聴いてて
頭に残ってるから。
飛ばし聴きはしてませんから。 |
中島 |
光栄です。 |
糸井 |
鼻歌でもみゆきさんの歌をくちずさむし。
♪縦の糸はあ〜なた〜♪
(「糸」という歌です)とか。 |
中島 |
わたしの歌はブレス(息継ぎ)の場所が
ないと言われがちだから、
歌うの大変じゃないですか。
もしかして肺活量が多いのでは?
素潜りが20分とかできたりして? |
糸井 |
ぼくのは、鼻歌ですからね。
誰に聴かせるわけでもないし‥‥。
ブレスがないんですか。 |
中島 |
自分じゃ、
そんなこと思わないんですけれどもね、
歌い手さんに渡したときに、
「どこで息するんですか?」
って。いやどこでって、
好きなとこでどうぞって言うんですけれども、
大抵もっとブレスの場所が
休符としていっぱい入ってることが多いんだそうです。 |
糸井 |
カラオケでみゆきさんと同じように
歌おうと思うとつらいでしょうね。 |
中島 |
酔ってたらよけいつらいでしょうね。
「宙船(そらふね)」なんか歌えないかも(笑)。 |
糸井 |
あ、でも、一般の曲よりも
息継ぎもしないで歌い切るってことは、
1曲にかける体力も多くなるわけだから、
1曲のありがたみが増すのかな(笑)。
ニューアルバムの
『I Love You, 答えてくれ』にしても、
どの曲も濃かったし。
暴れん坊の子分どもを
大勢連れてきたというか。 |
中島 |
そうですか(笑)。 |
糸井 |
そう。だから、今回のアルバムは
中国の兵馬俑みたいなものですよ。 |
中島 |
あら、失礼ね(笑)。 |
糸井 |
「お前たち行くよ!」みたいなさ。 |
中島 |
ははは、まあ、ある意味そうかもね。 |
糸井 |
襲撃されたかのような迫力が。 |
中島 |
たまにゃお雛様も混じってたでしょ。
よくよく見ると、こんなところに
こんな可愛らしいのもいた、みたいな。 |
糸井 |
そうですね、ちっちゃくて可愛らしいものも。
同じ人が作ったとは思えないくらい。 |
中島 |
いろんな子がいるんですよねー。 |
|
糸井 |
そうそう、お会いしたら、
聞いてみたいことがいくつかあって。 |
中島 |
へえ。なんなりと。 |
糸井 |
「地上の星」の歌詞の
♪草原のペガサス、街角のヴィーナス♪、
ぼくが詩人なら、あの一行を書けたら
大笑いしてると思うんです(笑)。 |
中島 |
笑うんですか? へっ? 何ちゅうって? |
糸井 |
ある種の快感というか。 |
中島 |
はあ! |
糸井 |
人はそれをわたしと一緒に、
楽しくだまされてくれるんじゃないかな、
っていう喜びを、
わーっと感じると思うんですよ。
ぼくなら。 |
中島 |
はいはい。 |
糸井 |
で、みゆき様は? |
中島 |
ははは、何ですかいきなり様って(笑)。怖いわ。 |
糸井 |
空と地面をね、ひっくり返しにしたところで
できてるといえばできてるんだけど、
ああいう立て続けの比喩、
やったー! みたいな、
ニンマリだか、
高笑いだかっていうのはないですか? |
中島 |
‥‥‥‥(熟考)。 |
糸井 |
街角のヴィーナスって、
ヴィーナスは天にいるものだから
街角にはいないじゃないですか。 |
中島 |
あら、そうですか? |
糸井 |
本人に言ったら、
あ、わたしかもって言う人はいるかもしませんが。 |
中島 |
いや、ヴィーナスに見えるときってあるんですよ。
やっぱりね、惚れて見ればヴィーナスですよ。 |
糸井 |
ってことは、みゆき様にとってヴィーナスって、
やっぱり天上じゃなくて地上にあるものなんですね。 |
中島 |
そうそう。だからそこを通りかかってる
お姉さんが素敵だなって惚れちゃえば、
ヴィーナスに見えるでしょ。 |
糸井 |
そうかあ。ヴィーナスっていうのは、
この世にいないようなすばらしいもの、
っていう理念ですよね。
でもそれはお互いにヴィーナスと
認め合っての関係があったり、
ヴィーナスかもしれないという
瞬間があったりするってことで、
それに対してみゆきさんが、
それでいいじゃないって言ってる感じ。 |
中島 |
はいはい。 |
糸井 |
だからそれを書けたときには、
うれしいんだろうなあって思うんですよ。 |
|
(つづきます!) |