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読者のみなさんから届いたお便り #06

 
親戚のおじさんから聞いた話です。
おじさんの父親が死期をさとり、
亡くなる前に
「話しておきたいことがある」と
語りはじめたそうです。
じつは原爆が投下された数日後の広島に
行ったことがある。
自分が放射能に汚染されただろうことが
怖かったが、それ以上に周囲の人から
差別されるのが怖くて
家族にも言えなかったと。
当時、呉の軍需工場で働いていたが、
広島が大変なことになったからと
手伝いに駆り出された。
そこで広島の街がなくなっているのを見て
信じられなかった。
ぜんぶが真っ黒焦げで‥‥と言葉に詰まり、
俯いて涙を流し、
それ以上は話せなかったそうです。
話してくれたおじさんも、
父親が見たであろう景色を
「語れない」ことによって、
その凄惨さを感じ取ったようでした。
本当に恐ろしいことは語れない。
言葉にならない、その背後にある思い、
ほぼ日さんにだったら伝わるかもと思い
書きました。
おじさんの父親は、
原爆の大きな影響はなかったようで、
長生きされて90歳以上だったはずです。
それでも長年、あの日の恐ろしい記憶を
胸にしまっていたようです。
戦争の背後にある語られない思い、
想像力が必要ですが、
次世代に知ってもらいたいです。
(匿名さん)

2025-08-16-SAT

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  • ヴェトナム戦争/太平洋戦争にまつわる
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    「50/80 ヴェトナム戦争と太平洋戦争の記憶」
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    特集 50/80 ヴェトナム戦争と太平洋戦争の記憶