
パリで28年以上暮らしながら、
食をテーマに執筆活動を続けている
川村明子さん。
取材で使っているスケッチブックには、
繊細なスケッチとメモがびっしり。
ノート自体が作品のようで、魅了されます。
川村さんが紹介するお店は、
「行ってみたい」と思わせる
不思議な魅力があります。
どうやってお店を見つけているのでしょうか。
川村さんに「おいしいものとの出会い方」について、
パリ・サンマルタン運河近くの、
静かで心地よいカフェ「Perlant(ペルラン)」で
お話を聞きました。
聞き手はパリ在住のライター冨田ユウリさん。
川村 明子(かわむら あきこ)
1998年より、フランス在住。
パリで料理学校を卒業後、
食を軸に活動。
雑誌『&Premium』の連載「サンドイッチ調査隊」
「真似をしたくなる、サンドイッチ」をはじめ、
雑誌やウェブを中心に、
食や暮らしにまつわるエッセイ、
取材記事の執筆や、イラスト制作を行う。
現地の日常に根ざした視点で、
カフェやレストラン、街角の風景、
人々の営みを観察し、食事を楽しみ続ける。
[川村明子さんInstagram]
冨田ユウリ(とみた・ゆうり)
ライター。1995年生まれ。オペラ歌手の母の影響で、幼少期よりヨーロッパを度々訪れる。京都大学卒業後、テレビ局勤務を経てフリーランスに。2024年よりパリへ在住。ライフスタイルを中心に取材・執筆を行う。
- ──
- (川村さんの取材メモであるスケッチブックを見ながら)
すごく繊細なメモですね。
絵の勉強をしたことはあるんですか?
- 川村
- いえ、絵の勉強したことはないです。
(雑誌マガジンハウス『&Premium』の)
サンドイッチの連載が始まって、
必要に迫られて描きはじめたんですよ。
自分が後から見てわかりやすいように、
情報の漏れがなく、
見返したときにおいしそうなほうがいいなと思って、
スケッチを描いたのがきっかけです。
- ──
- ずっと見ていたくなるほど素敵です。
今までどれくらいの数の
スケッチを描いてきたんですか?
- 川村
- どれくらいだろう‥‥。
数え切れないですね(笑)。
- ──
- ここのカフェ「Perlant(ペルラン)」もそうですが、
川村さんが紹介するお店は
食べ物がおいしいうえに
あたたかみがあって、
空間自体も心地よい場所ばかりだと感じます。
紹介するお店は、
どうやって見つけているんですか?
- 川村
- 街中を歩いて、目についたお店をとにかく回っています。
人から紹介してもらうこともあるんですけど、
基本的には歩き回っていますね。 - 歩いて、気になったら片っ端から食べてみる。
その繰り返しです。
- ──
- 移動するときは、
基本的に徒歩ですか?
- 川村
- そうですね。
コロナ禍の頃は
自転車で移動をしていた時期もあったんですよ。
レンタル自転車を年間契約して。
でも、やめちゃいました。
- ──
- やめちゃったんですね。
パリは自転車の道路が整備されているし、
便利ですよね。
- 川村
- そう、自転車って便利なんです。
時間も短縮できる。
でもあるとき、
「移動しかしてない」と気づいたんです。
歩いていると、
「あれ、今のなんだろう?」って
すぐに立ち止まれる。
気になったものに、すぐ反応できる。
でも自転車だと、
その立ち止まりができない。
だから、偶然の出会いもなくなるんです。
- ──
- そうか。
移動している中にある
偶然の出会い、が大切なんですね。
- 川村
- そうです。
私は偶然の出会いや
不意打ちみたいなことが好きです。
予定調和じゃないことが、
すごく好き。
たとえば、人気商品で予約ができる場合でも、
予約せずにお店に行きたいです。
目当てのものが買えたらもちろんうれしいけど、
目当てのものが買えなかったとしても
別のものを買って試してみる。
予約をしてそれを受け取りに行くだけなのは
偶然の出会いがないような気がして。
自分の想像できる以上のこと、
その枠の外にあることが起こったときに、
心が動くんです。
△カフェ「Perlant(ペルラン)」にて
- ──
- 偶然にいいものに出会う前の
「あ、いいかも!」という
嗅覚のようなものはありますか?
- 川村
- ありますね。
それは、体感というか。
歩いて、養われていったものがあります。 - 雑誌の仕事を始めて、最初の仕事が、
特定のエリアの地図を作る仕事だったんです。
そのときそのエリアを
とにかく自分の足で隅から隅まで歩き回った。
細かい路地まで、一つ一つのお店をチェックしていく。
それがよかったと思っています。 - あるエリアを片っ端から回ることで、
だんだんと自分の好みがわかってくる。
自分が惹かれるお店がどういうものなのか、
感覚的に養われていく。
それが、いわゆる嗅覚のようなものに
近いんじゃないかな。
- ──
- 自分の惹かれるお店の場所が
わかるようになるんですね。
お店のどこに反応しているんでしょうか。
- 川村
- うーん‥‥どこだろう。
私の場合は、食べものを作っている人を
知りたいです。
作っている人に話を聞きたい。
だから、作り手との距離が近いお店、
というのは大事かもしれません。 - でも結局は、不思議なことに、
本当に感覚的なんですよね。
今ではGoogleマップを見て、
そこにあるお店を見ているだけで、
なんとなく「あ、このあたりに好きなお店がありそう」
ってわかるくらいになりました(笑)。
(つづきます)
2026-09-15-TUE
