ほぼ日では、10月23日からTOBICHI東京にて、
esoratetora(エソラテトラ)さんの
原画展『esoragoto』がはじまります。
色えんぴつで描かれた色あざやかな風景に、
どこかアニメ的なタッチで描かれた女の子の姿が
美しく混じり合い、見る人の感傷を誘います。
今回ぜひ、いろんな方に見に来ていただきたくて、
絵の背景についてくわしくお聞きしました。
色えんぴつという画材のこと、どう作品が生まれたか、
精神面での不調や坂口恭平さんとの
「いのっちの電話」でのつながり、支えてくれた人のこと。
絵にこめられた思い、感じてみてください。

インタビュー:山下哲(ほぼ日)
記事構成:田中正紘(ほぼ日)

*会場では、作品集『esoragoto esoratetora art book』や
尾道散策のための冊子『esora go to 尾道』も販売します。

>esoratetoraさんプロフィール

esoratetora プロフィール画像

esoratetora(エソラテトラ)

画家。
1991年生まれ。
静岡県三島市出身。神奈川県在住。
心打たれた街や情景を色鉛筆で描いている。
歌を歌うのも好き。
〈受賞歴〉
国際イラストコンテスト
「Next ILLUST Award 2024」金賞

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episode 01 色えんぴつの可能性。

──
こうやって見ると、圧巻ですね。
ついにこの絵が、ほぼ日のTOBICHIで
展示されるという。
さらにいま、同時に画集も作っているところですね。
esoratetora(以下esora)
はい、いろいろとありがとうございます。
──
このすべてを描かれて。
esora
こうやって集まると、自分でも
「けっこう描いたな」って気持ちになりましたね(笑)。
──
初めての方のために言うと、
色鮮やかな、迫力のある絵ですけれども、
すべて色えんぴつで描かれていて。
さらに、実物を見るとわかるんですけど、
実はわりと大きいですよね。
観に来た方にはそこも感じていただきたいなと。
esora
そうですね。わりと大きいかもしれません。
ウェブだと小さいイメージかもしれないですけど。

──
実は僕(ほぼ日の山下)は
esoratetoraさんのことを、2年前とかに、
糸井重里から教えてもらって知ったんです。
そこで「わあ、すごいなあ」と思って。
まずは絵がおもしろいなとすごく思いました。
いわば日本の、本当に当たり前だったりする、
ちょっと古い土地だったり、原風景のようなところ。
その超リアルな場面に、アニメのようなタッチの
いまの女の子たちが佇んでいるのが、
なんだか非常に不思議な気持ちになって。
しかも、どんどん見ていくなかで
「ええっ? これを色えんぴつで描いてるのか」
と気づいて、さらに驚いて。
esora
ありがとうございます。
──
そのとき、糸井さんからすぐに
「動け!」と後押しがあって
「たしかに!」と思って(笑)。
ほぼ日にはTOBICHIもあるし、
原画展などもできるんじゃないかということで、
ご連絡させていただいた次第です。
esora
声をかけていただいて、嬉しかったです。
──
で、ようやくここまで来たわけですけど。
esora
来ました(笑)。

──
今日はいろいろお聞きできたらと思ってて、
まずは、絵のことから伺いたいんですけど、
こういう描き方はいつごろからなんですか?
esora
このかたちで描きはじめたのは、
2014年の7月くらいですね。12年前。
──
どういう思いつきで?
esora
そのときは会社員をしてたんですけど、
会社勤めが合わなくて、
適応障害みたいな感じになってしまったんです。
で、絵は昔から好きだったので、心療内科の先生に
「やってた趣味とかありますか?」と聞かれて
「あ、絵を描くのは好きでした」と言ったら、
「じゃあそれ、ちょっとやってみましょうよ」
みたいな感じになって。
そのとき、「pixiv(ピクシブ)」という絵のサイトが
あるんですけど、ランキングを見ていたら、
1位とか2位に風景画が入ってたんです。
やっぱりキャラクターの絵とかが人気なんで
「風景画でランキングに入るってすごいな」と思って
ページを見に行ったら、コメントに
「色えんぴつで描いてる」ってあったんです。
──
へえーっ。
esora
林亮太先生という方なんですけど、
「この絵、実際に見たいな」と思って
ホームページとかいろんなところを調べてたら
「絵画教室をやります」という告知が出てたので、
「ちょっと行ってみよう」って出かけてみて。

──
ええ。
esora
そこで基礎的なところを教わったんですけど、
その日も原画をお持ちくださってて、
「pixivで見たあの絵が目の前にある!」って。
それがまず、でかかったんですよ。絵が。
──
あ、絵自体のサイズが?
esora
はい。A2とかはあったかな。
(※A2:42cm × 59.4cm、A4用紙4枚ぶん)
思ってたよりも大きくて。
で、なにより、濃かったんですよね。
色が思ったよりずっと濃くて、そこに衝撃を受けて。
──
はぁー。
esora
しかもその教室のときに林先生が
「色えんぴつって、あなたが思っているよりも
濃く塗れるんですよ」と教えてくれたんです。
まず「強く塗ってください」って言われて。
それでほかの受講者よりも濃く塗って
自信有りげにしていたら、その後に、
「じゃあもっと、もう極限まで強く塗ってみてください」
みたいに言われたんです。
それでまた塗ると、たしかに、
さっき強く塗ったつもりだったときよりも
ぜんぜん濃く塗れるんです。
「実は色えんぴつって、こんなに濃く塗れる画材なんですよ」
という話があって
「あ、そうなんだ!」って。
それでまた原画を見て「おおっ」と思って。
──
そうか、色えんぴつって、サラサラサラって
淡く色をつけるようなイメージがあるけれど。
esora
そう。ホワっとした感じっていうか。
──
じゃなくて、もうグッと塗り込む感じなんですね。
esora
そうなんですよ。

──
じゃあ、そこで習いはじめる前までは、
普通に絵が好きなだけの青年だったというか。
esora
そうですね。美大に行ってたとかでもなく、
小さいころから絵が好きで。
──
でも、そのとき習っただけで、
みるみるこうはならないでしょう?
esora
ああ、どうなんでしょう。
でも小学校のころからよく
遊戯王カードとかデジモンとかの絵を模写してて、
色えんぴつは使ったりしてました。
そんなに濃くは塗ってないですけど(笑)。
あと中学3年生までは『ジャンプ』のマンガが大好きで、
小畑健先生とか、鳥山明先生とか、
村田雄介先生とかの絵を模写してたんです。
また、その後も高専でアニメ・ゲーム文化にどっぷり浸かって、
今度は「ばらスィー」先生や
「いとうのいぢ」先生の作品にハマり、
いわゆる「萌え」みたいな絵を描きまくったり。
まあ、そういうので、
ある程度の基礎はあったかなと思います。
──
なるほどね。
じゃあ、もともと絵をたくさん描いてきてた人が、
きっかけがあって久しぶりに描くようになって、
さらに色えんぴつの新しい使い方として
「濃く」という方法に出合った。
esora
そうですね。
あと、画用紙もですね。
それまではコピー用紙に描いてたんですけど、
ちゃんと画用紙使うと、摩擦もあるし、
より色えんぴつが乗って、絵が強くなるんで、
そこで自分の絵が変わった気がします。
画用紙は何種類か使ってて、
「ケント紙」という漫画家が原稿に使うような
ツルツルっとした紙とか、
水彩紙の「細目」(さいめ)って
サラサラした感じの紙も使ってて、
描くお題とか、どういう描き味にしたいかで
使い分けてるんですけど。
──
でも、色えんぴつに画用紙って、
昔からあるアナログな描き方ですけど、
デジタルな道具を使ったりとかの誘惑は
なかったんですか?
esora
学生のころ、パソコンに「Photoshop」とかを入れて
描いていた時期はあるんです。
だけど、なんか使いこなせなかったのもあり(笑)。
あとはこれ、アナログのいい点でもあり
弱点でもあるんですけど、
描いたらもう消せないというか、残るというか。
デジタルっていくらでも修正が効くので、
迷っちゃうんですよね。
「こっちの色のほうがいいかな」
「やっぱりこっちかな」
「乗算レイヤー掛けた方がいいかな」
とかやってると、絵がボヤっとしちゃうんですよ。
思い切りがなくなるというか。
それがちょっと自分に合わなくて。
──
じゃあ、もう完全に画材としてこっちを選んだ。
esora
そうですね。
よく「色えんぴつでこんなのを描けてすごい」
みたいに言われるんですけど、
自分にとってはたぶん色えんぴつが
一番向いてる画材ですね。
絵の具とかも検討したんですけど、
小学校とかのとき、筆がカビちゃったり、
絵の具のフタが完全に閉め切れてなくて
カチカチになったりとかもよく起きてたから、
たぶんうまくいかないなって。
色えんぴつは、適当に何年置いてても
別に木の軸が腐ったりもしないし(笑)、
手に取って、描いて、中断する作業とかが
一番楽なアナログかなと思うんです。
──
でも「濃く」といいながらも、
esoratetoraさんの絵は淡さもあるじゃないですか。
‥‥でも、基本は「濃く」?
esora
そうですね。だいたい濃く描いてると思います。
一方で、この絵は自分のなかの課題として、
いつも濃く描きすぎちゃうから、
「淡い絵を描きたいな」と思って描きましたね。
そういうことをやることもあったり。

──
いま、色えんぴつで描いてる人って
けっこう多くいらっしゃるんですか。
esora
なんというか、精密画に使われますよね。
鳥とか、猫とか、宝石だったり。
あとは超リアルなポテトチップスの袋とかを描いて、
目の錯覚を起こさせたり。
──
ああ、ありますね。そうか。
やってらっしゃる方にとっては、
超絶技法の画材として別に珍しくはないと。
esora
そうですね。
──
だからesoratetoraさんの絵にはっきりと
作家性を感じるのは、組み合わせなのかな。
この風景と、女の子たちという。
esora
そうですね。今回展示する絵は、1枚をのぞいて
すべて女の子の姿があって、それは自分の
ひとつの個性になっているのかなと思います。

(つづきます)

2026-10-23-FRI

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