
秋山具義さんは、
ほぼ日が初期からお世話になっている
アートディレクターです。
「アッキィさん」と呼ばせてもらって
みんなで親しくしています。
ほぼ日のおサルのマークも
アッキィさんの作品です。
手掛ける広告デザインは、ビビッドで、
元気になれる作品が多い印象。
いっぽう、アッキィさんの陶芸は、
ちょっぴりちがう雰囲気が?
新しい一面を陶芸が引き出したのでしょうか。
ご本人に訊いてみました。
インタビュアーはほぼ日のおかっぱコンビ、
菅野と山川です。
秋山具義(あきやま ぐぎ)
1966年東京生まれ。
クリエイティブディレクター、アートディレクター。
DAIRY FRESH株式会社代表。
日本大学芸術学部デザイン学科客員教授。
iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。
広告、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど
幅広い分野でアートディレクションを行う。
おもな仕事に、
東洋水産「マルちゃん正麺」広告および
パッケージデザイン、
日本フェンシング協会「新国章」デザイン、
松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、
立命館大学 コミュニケーションマークデザイン、
AKB48「ヘビーローテーション」
CDジャケットデザインなど。
2016年より「食べログ」グルメ著名人として活動、
食べログマガジンで
「秋山具義の今月のNEW麺」連載中。
テレビ朝日『キッチンカー大作戦!』に
グルメ賢者として出演中。
また、J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』に
ランチの達人として出演中。
著書に『世界はデザインでできている』など。
- 秋山
- 友人の細川博史さんから工房の「北陶」を
紹介してもらって、
やってみたら、ほんとうにおもしろくてね。
ぼくは飯田雪峰(いいだ せっぽう)さんという
先生に教わりながらやっています。
先生は1941年の能登生まれだから、
いま83歳なのかな。
北陶のサイトに先生の顔も載っています。
ああ、この方です。
- ──
- これが、アッキィさんの先生。かっこいいです!
- 秋山
- お話もおもしろくて、すてきな方です。
- ──
- 陶芸って、
粘土をろくろで成形してから、
窯で焼くんですよね。
- 秋山
- ろくろでやったり、手びねりでやったりしてます。
ぼくは色つけが好きなんだけど、
色つけをするには、
成形して素焼きしてもらったあと、
また金沢へ行って色つけして、
もういちど焼いてもらいます。
そんなふうにくり返し行って完成させています。
- ──
- この2年半、金沢に通いつづけているんですね。
まずは形をつくるのがむずかしそう‥‥。
- 秋山
- 陶芸の世界って厳しいイメージがあるでしょ?
でも、ぼくが教わっている雪峰先生は、
基本は教えてくれるし
アドバイスももらえるんですけど、
教えすぎるとつまらなくなると
思ってらっしゃるのか、
ぼくに対してはけっこう自由にやらせてくれるんです。
それがほんとうに楽しい。
そんなふうに自由にやっているせいか、
自分と似た手法をやっている人は
あんまりいないみたいで、
みなさんがおもしろがってくれるんです。
工房にぼくの作品が置いてあると、
金沢のお茶の先生が
「これは大人がつくったのか、
子どもがつくったものなのか、どっちですか?」
と聞いてこられて、
「この皿に桃を置いてみたらどうだろう」などと
想像をふくらませてくれたりしたみたい。
- ──
- へぇえ。
- 秋山
- そんなふうにみなさんが
何かを感じてくれたこともうれしい。
最近作ったものを見た子どもさんが
「お花畑みたい」と言ってくれたようで、
それを聞いた雪峰先生がまた喜んでくれたり。
- ──
- なんだかかたくるしくなさそうですね。
- 秋山
- ほら、これ見て。
焼き上がった作品を送ってくれるときに
先生の手紙がついてくるんですよ。
- ──
- 雪峰先生の講評というか‥‥わぁあ、
上手な字ですね。
「雪峰は最高にいいと感じてます」と
書いてありますよ。
こんなこと言われたらうれしいですね。
- 秋山
- そう、すごくいいことを書いてくれるんです。
- ──
- こうやってファイルしてる
アッキィさんもステキです。
- 秋山
- うれしいからね。
- ──
- わりと‥‥私にとってはアッキィさんが
ウキウキしている感じが、新鮮です。
- 秋山
- そう?
すごく楽しいからさ。
- ──
- 先生は、アッキィさんの作品について
実際にはどんなふうに
アドバイスされるのですか?
- 秋山
- 「これはカタチがいいね」などと、
ほめてくれることもあるし、
「これは風とか、動きを感じるように
色つけしたらいいんじゃないかな」
と教えてくださることもあります。
「風かぁ‥‥それだったら
どうしてみようかな」とか考える。
- ──
- その先の答えをさぐれるような、
アドバイスを。
- 秋山
- カタチがきれいな器って、世の中に
たくさんあるじゃないですか。
自分がそんな完璧な作品をめざしても、
魅力的なものはたぶんできないと思っています。
だから、先生のアドバイスを意識しながら、
自分なりのものをつくろうとしている気がします。
雪峰先生は、金沢の金石海岸で
年に1回、9月に「野焼き」をしています。
- ──
- 野焼き‥‥?
- 秋山
- 自分の作ったうつわを
海辺で24時間かけて焼くんです。
ほんとに昔ながらの方法でね。
先生はこれを50年続けてるんですって。
▲撮影:秋山具義さん
- ──
- うつわを海岸で焼くんですか。
窯じゃなくて?
- 秋山
- きっと昔の人たちは
そんなふうに土器を焼いてたんだと思う。
先生たちはそれをできるだけ再現してて。
YouTubeにもそのようすが上がってるので、
見てみてください。
- ──
- おがくずとかを敷いて、
海岸で焼くんですね。
- 秋山
- 手で火をおこすところから、やるんです。
着火剤とか使わないの。
摩擦を使った原始的な火おこしで、
それをかがり火にして。
- ──
- タイムスリップしたような気持ちになりますね。
- 秋山
- 夕暮れどきとか、
朝日が昇るときとか、すごくきれいなんですよ。
焼いている時間、
先生は一日じゅうずっと見守っているんです。
- ──
- うそっ。83歳なのに!
それを年に1回。
- 秋山
- 9月に毎年やります。
ぼくはこれまで2回だけ参加しました。
風の方向によって火の温度が変わるみたいで、
焼き上がりが、
どういう色にしあがってくるかわからないの。
- ──
- 野焼きの器は、
一度窯で素焼きしたものを
野焼きするんですね。
- 秋山
- そうそう。
この黒がきれいで、おもしろいでしょう。
- ──
- こんなにも陶芸を楽しんでいる
アッキィさんですが、どのあたりに
「おもしろさ」がひそんでいると思われますか?
- 秋山
- まずは、うつわをつくることって、
完全には思うようにならないんですよ。
- ──
- はい。
- 秋山
- ぼくの仕事はアートディレクションだけど、
AIの時代ってデザインって
実際はもう、ほぼなんでもできちゃうんです。
だから、そういうことと逆のことをしたい、
という気分がやっぱりありました。
陶芸はまちがいなくデジタルデトックスになります。
手の感覚を使うし‥‥手で見る、というか。
- ──
- 手で見る。
- 秋山
- 手で探って、形をつくっていく。
思い通りにはならないし、
色の上がりだって、想像つく場合と、
「こんな色になるんだ!」と
びっくりすることもあります。
ぼくは、ほんとに色つけが好き。
- ──
- グレーぽい色が、青に変化したり。
- 秋山
- そう。でもだんだんと経験を積んで、
想像に近い色が出てくるようにもなりました。
でもそれがいままた、楽しい。
(明日につづきます)
2025-03-27-THU