秋山具義さんは、
ほぼ日が初期からお世話になっている
アートディレクターです。
アッキィさん」と呼ばせてもらって
みんなで親しくしています。
ほぼ日のおサルのマークも
アッキィさんの作品です。
手掛ける広告デザインは、ビビッドで、
元気になれる作品が多い印象。
いっぽう、アッキィさんの陶芸は、
ちょっぴりちがう雰囲気が?
新しい一面を陶芸が引き出したのでしょうか。
ご本人に訊いてみました。
インタビュアーはほぼ日のおかっぱコンビ、
菅野と山川です。

>秋山具義さんのプロフィール

秋山具義(あきやま ぐぎ)

1966年東京生まれ。
クリエイティブディレクター、アートディレクター。
DAIRY FRESH株式会社代表。
日本大学芸術学部デザイン学科客員教授。
iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。

広告、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど
幅広い分野でアートディレクションを行う。
おもな仕事に、
東洋水産「マルちゃん正麺」広告および
パッケージデザイン、
日本フェンシング協会「新国章」デザイン、
松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、
立命館大学 コミュニケーションマークデザイン、
AKB48「ヘビーローテーション」
CDジャケットデザインなど。

2016年より「食べログ」グルメ著名人として活動、
食べログマガジンで
秋山具義の今月のNEW麺」連載中。
テレビ朝日『キッチンカー大作戦!』に
グルメ賢者として出演中。
また、J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』に
ランチの達人として出演中。

著書に『世界はデザインでできている』など。

秋山具義の陶芸展 2025年3月28日(金) - 2025年4月3日(木) Hidari Zingaro(東京 中野)

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第2回 陶芸は、手で見る。

秋山
友人の細川博史さんから工房の「北陶」を
紹介してもらって、
やってみたら、ほんとうにおもしろくてね。
ぼくは飯田雪峰(いいだ せっぽう)さんという
先生に教わりながらやっています。
先生は1941年の能登生まれだから、
いま83歳なのかな。
北陶のサイトに先生の顔も載っています。
ああ、この方です
──
これが、アッキィさんの先生。かっこいいです!
秋山
お話もおもしろくて、すてきな方です。
──
陶芸って、
粘土をろくろで成形してから、
窯で焼くんですよね。
秋山
ろくろでやったり、手びねりでやったりしてます。
ぼくは色つけが好きなんだけど、
色つけをするには、
成形して素焼きしてもらったあと、
また金沢へ行って色つけして、
もういちど焼いてもらいます。
そんなふうにくり返し行って完成させています。

──
この2年半、金沢に通いつづけているんですね。
まずは形をつくるのがむずかしそう‥‥。
秋山
陶芸の世界って厳しいイメージがあるでしょ?
でも、ぼくが教わっている雪峰先生は、
基本は教えてくれるし
アドバイスももらえるんですけど、
教えすぎるとつまらなくなると
思ってらっしゃるのか、
ぼくに対してはけっこう自由にやらせてくれるんです。
それがほんとうに楽しい。
そんなふうに自由にやっているせいか、
自分と似た手法をやっている人は
あんまりいないみたいで、
みなさんがおもしろがってくれるんです。
工房にぼくの作品が置いてあると、
金沢のお茶の先生が
これは大人がつくったのか、
子どもがつくったものなのか、どっちですか?」
と聞いてこられて、
この皿に桃を置いてみたらどうだろう」などと
想像をふくらませてくれたりしたみたい。
──
へぇえ。
秋山
そんなふうにみなさんが
何かを感じてくれたこともうれしい。
最近作ったものを見た子どもさんが
お花畑みたい」と言ってくれたようで、
それを聞いた雪峰先生がまた喜んでくれたり。

──
なんだかかたくるしくなさそうですね。
秋山
ほら、これ見て。
焼き上がった作品を送ってくれるときに
先生の手紙がついてくるんですよ。

──
雪峰先生の講評というか‥‥わぁあ、
上手な字ですね。
雪峰は最高にいいと感じてます」と
書いてありますよ。
こんなこと言われたらうれしいですね。
秋山
そう、すごくいいことを書いてくれるんです。

──
こうやってファイルしてる
アッキィさんもステキです。
秋山
うれしいからね。
──
わりと‥‥私にとってはアッキィさんが
ウキウキしている感じが、新鮮です。

秋山
そう?
すごく楽しいからさ。
──
先生は、アッキィさんの作品について
実際にはどんなふうに
アドバイスされるのですか?
秋山
これはカタチがいいね」などと、
ほめてくれることもあるし、
これは風とか、動きを感じるように
色つけしたらいいんじゃないかな」
と教えてくださることもあります。
風かぁ‥‥それだったら
どうしてみようかな」とか考える。
──
その先の答えをさぐれるような、
アドバイスを。
秋山
カタチがきれいな器って、世の中に
たくさんあるじゃないですか。
自分がそんな完璧な作品をめざしても、
魅力的なものはたぶんできないと思っています。
だから、先生のアドバイスを意識しながら、
自分なりのものをつくろうとしている気がします。
雪峰先生は、金沢の金石海岸で
年に1回、9月に「野焼き」をしています。
──
野焼き‥‥?
秋山
自分の作ったうつわを
海辺で24時間かけて焼くんです。
ほんとに昔ながらの方法でね。
先生はこれを50年続けてるんですって。

▲撮影:秋山具義さん ▲撮影:秋山具義さん

──
うつわを海岸で焼くんですか。
窯じゃなくて?
秋山
きっと昔の人たちは
そんなふうに土器を焼いてたんだと思う。
先生たちはそれをできるだけ再現してて。
YouTubeにもそのようすが上がってるので、
見てみてください。
──
おがくずとかを敷いて、
海岸で焼くんですね。
秋山
手で火をおこすところから、やるんです。
着火剤とか使わないの。
摩擦を使った原始的な火おこしで、
それをかがり火にして。
──
タイムスリップしたような気持ちになりますね。
秋山
夕暮れどきとか、
朝日が昇るときとか、すごくきれいなんですよ。
焼いている時間、
先生は一日じゅうずっと見守っているんです。
──
うそっ。83歳なのに!
それを年に1回。
秋山
9月に毎年やります。
ぼくはこれまで2回だけ参加しました。
風の方向によって火の温度が変わるみたいで、
焼き上がりが、
どういう色にしあがってくるかわからないの。

──
野焼きの器は、
一度窯で素焼きしたものを
野焼きするんですね。
秋山
そうそう。
この黒がきれいで、おもしろいでしょう。
──
こんなにも陶芸を楽しんでいる
アッキィさんですが、どのあたりに
おもしろさ」がひそんでいると思われますか?
秋山
まずは、うつわをつくることって、
完全には思うようにならないんですよ。
──
はい。
秋山
ぼくの仕事はアートディレクションだけど、
AIの時代ってデザインって
実際はもう、ほぼなんでもできちゃうんです。
だから、そういうことと逆のことをしたい、
という気分がやっぱりありました。
陶芸はまちがいなくデジタルデトックスになります。
手の感覚を使うし‥‥手で見る、というか。
──
手で見る。
秋山
手で探って、形をつくっていく。
思い通りにはならないし、
色の上がりだって、想像つく場合と、
こんな色になるんだ!」と
びっくりすることもあります。
ぼくは、ほんとに色つけが好き。

──
グレーぽい色が、青に変化したり。
秋山
そう。でもだんだんと経験を積んで、
想像に近い色が出てくるようにもなりました。
でもそれがいままた、楽しい。

明日につづきます)

2025-03-27-THU

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