
- ──
- では、石川県のほうで、
「地域コミュニティの再建事業」をやろうと決め、
災害中間支援組織のJVOADさんに委託し、
実行部隊の日本エージェンシーさんに入ってもらって、
さまざまなイベントをやりはじめた。
- 嘉門
- はい。で、ある程度軌道に乗りはじめたら
メニューを冊子にしたものを各市町の担当者に配って、
どんどん申し込んでもらえるようにしました。 - 受注できるように、事務局もつくりまして。
- ──
- ああ、そういう部分も重要ですもんね。
- 嘉門
- 各自治体の方々から
「この場所で、この日にお願いします」と依頼を受けたら、
松本さんチームが派遣する。
そのあたりの段取りも、相当がんばってやりました。 - 実際、松本さんたちのスピード感もすごかったんです。
たとえば能登町の役場の方から
「料理教室をやりたい」と声があったと伝えたら、
1週間後には
「コンニャクつくれます」「中華まんつくれます」
とかのメニューにしてくださって。 - そこで「料理教室やりたい!」
という注文が、30件集まったり。
- ──
- すごい。
- 松本
- 求めてくれることがもう嬉しいことなので、
なるべくどんどん実現できたらいいなと
動いてきた感じです。
- 嘉門
- メニューが10個、20個と増えていくにつれ、
みなさん「これは使える!」と思ってくれたらしく、
注文もどんどん増えていったんです。 - たとえばある仮設住宅で
「木曜日は集まって、みんなでお茶会」
という定例行事があるとき、
そこに落語家さんが来れば、固定メンバー以外の方が
来るきっかけにもなる。
そういうかたちで使っていただいたりして。
- ──
- 回数としては‥‥月100回?
- 嘉門
- そうですね。
令和6年は半年で749回、
令和7年度は9か月で1200回とか。
だから、月100回以上はやってます。 - 発注側が「やりたい!」と思うことがきっかけなので、
季節ごとに数は変わるんですけど。 - 生活が少しずつ戻ってくるにつれ、
現地の方々も元気になってこられて、
同時多発的にもおこなわれるようになって。
- 中﨑
- イベントの季節というのがあって、
10、11月の週末は大変な数だったんです。
10月頭は敬老会シーズンで、すごかったときは
1日に16件ちかくの予約が入ったり。
- ──
- つまり、その全部に対応を。
- 嘉門
- だからもう「よくぞやり切っていただいた」って感じですよ。
- やるうちに、みなさんからの希望も増えてくるんです。
それって「やりたい!」という気持ちが、
すごく一歩を踏み出されてるじゃないですか。
それは応援したいですから。
とにかく「コミュニティを育てる」という趣旨と
合っていれば、できるだけ積極的に
やっていこうという意識でやってます。
- ──
- 地域としては、特に被害の大きかった
奥能登とかですか?
- 嘉門
- いえ、被災者の方は県南にもいらっしゃるので、
幅広く提供できる体制にしてますね。 - 震災の被害は奥能登だけでなく
いたるところにありまして、
それぞれ仮設住宅があるんです。 - だけど、話題になりにくい場所は
支援の手があまり行ってないのもあって。
支援団体の行く先が偏りがちなところを均す役割も、
この事業で果たせたらと思ってますね。
- やすな(ほぼ日)
- わたしが聞いてびっくりしたのが、
みなさん、本当に丁寧に、できるだけ多くの方を
すくい上げるように動かれていて。 - Google Mapでも見つけられないような
本当にちいさな集会所とかでも、
イベントをされてたりするんです。 - 参加者が8人とかの落語家さんの会があったりもする。
だけど「1人1人のみなさんを笑顔にする」って、
単に大きい場所でやればいいわけでもないですから。
車に乗るのが難しい方もいらっしゃるから、
ちいさい場所でもやっていく必要があるんですよね。
- 嘉門
- 全部できているとは思わないですけど、
なるべく網羅しようとは思ってますね。 - 能登半島地震、被害が大きすぎて、
あちこちに仮設住宅があるんですが、
幅広いエリアで開催しています。 - もちろんそれも、行ってくださる方々が
いてこそなんですけど。
何十回と繰り返し訪れてくださる方もいて、
本当にありがたいなと思うんです。
- ──
- 人気のイベントは、どういったものですか?
- 松本
- 初年度の人気は観賞系でした。
タレントの方、マジックショーとか、見て心の癒し。
それでまず家から出て笑顔になって、という。 - でも2年目になると「自分たちで作業をしたい」とかで、
ワークショップ系が増えてきたんです。
レザークラフトとか、瓶の中にお花を入れて
飾り付けをするハーバリウムとか。
なにかしながらおしゃべりするものとか。 - だからこちらも、そういった参加型のものも
軸として用意していくようになりました。
- ──
- たしかに実際に手を動かしたいって、ありますね。
- 嘉門
- あとは今回、被害の規模が大きすぎて、
本当にいろんな被災者の方がいらっしゃるので、
多様なメニューを用意することも
すごく大事だと思ってて。 - たとえば男性ってそういう場になかなか
出てきてくれないんです。
自分自身に明確な役割や目的がないと
集まりにくいような感じがありますね。 - だからトンカチ系の大工仕事とか、
重いものを持つプログラム、将棋、麻雀とかを用意して、
お誘いしています。
まだまだやり切れてるとは思いませんけど。
- 松本
- 実際「みんなで共同作業をしよう」みたいなときって
男性の力が必要な場合もありますから。
男性が参加されると、ほかのみなさんが
喜ぶところもあるんです。 - あとはゲームをやりたい男性もいますし、
さまざまな方向からのプログラムを用意して
より対応していけたらと思っていますね。
- ──
- このイベントはうまくいかなかったな、
みたいなこともありましたか?
- 嘉門
- アンケートはけっこうまめにとって参考にしてますけど、
基本的にはどれも喜ばれている気はしますね。 - ただ、メニューとして作ったけど
発注が来ないものもあって、
そういうのは自然と減っていくんです。 - たとえば「スマホ教室」とかも作りましたけど、
そこはキャリアさんが自分たちでやってるから
発注が少なくて、ここで用意しなくていいかなとか。
やりながらわかることも多いです。
- ──
- 子ども向けのメニューなどもありますか。
- 中﨑
- 夏祭り用の「縁日キット」とかはそうですね。
イベントは基本的には高齢の方が多いんですけど、
縁日はお子さんの参加率が非常に高くて
「子どもが喜ぶわ」とかよく言っていただきますね。 - 射的もあれば、あてくじもあれば、
スーパーボールすくいもあれば、
ヨーヨーすくいもあるというキットをお渡しして、
みなさんに活用してもらうんですけど。 - ぼく自身よく持って行くんですけど、
みなさんとても喜ばれて、回収に行くと
「すごくよかった、ありがとう」と
お伝えくださることが多いです。
- 神元
- あとは「耕すベンチ」。
農作業で役立つようなベンチづくりを
高校生たちとやったりもしましたね。
- ──
- 耕すベンチ。
- 嘉門
- 東京大学でも教えていらっしゃる(2026年3月退任)
建築家の千葉学さんが、
畑仕事などの土いじりに役立つ日よけつきベンチを
つくるワークショップをしてくださったんです。 - ベンチづくりって意外と大変で、
「風で飛ばない」「自立する」「基礎がいらない」
「持ち運べる」とか、けっこうポイントがあるんですね。
だからプロフェッショナルの力が必要で。 - しかもこれ、震災後の公費解体で出た
住宅の柱や梁、建具を再利用してるんですけど、
能登の住宅の建材って、めちゃくちゃ立派なんですよ。
だからもうビシッと、
すごくかっこいいベンチができました。
- ──
- おおー、気になります。
- 嘉門
- 実を言うと千葉先生は、
ぼくの大学時代の恩師なんです(笑)。 - 震災のあとですぐ連絡をくださって
「何でもするよ」って言ってくれたので、
「みなさんが土いじりしたいと言ってまして」
と伝えたら、
「それはベンチとかいるよね」と、
古材を活用した、みんなで簡単につくれる
組み立て式のベンチを考えてくださったんです。 - だから恩師にいっぱい動いてもらって。
そういうのも経て、このベンチはできてます。
(つづきます)
2026-07-09-THU
-
「石川ひとつなぎ」の活動紹介動画、
ぜひごらんください。
みなさんがつくった冊子の
デジタル版はこちら。
