ほぼ日乗組員、向江夢(むかえ ゆう)は、
「喫茶店のマッチ」を集めています。
その数、現在300個以上。
世の中にはもっとすごいマッチ収集家がいるのでしょうが、
彼女(現在22歳)はこれを4年で集めています。
コレクションの3分の2は、
じぶんが実際に行った喫茶店でもらったものだとか。
しかも、「行ったお店にマッチが無い」
というケースがほとんどなのだそうです。
なのに、約200個を手に入れている。
いったい彼女は何軒の喫茶店の扉をくぐったのか‥‥。

そこまで本気な向江夢が、
好奇心ひとつをひっさげて、
「喫茶店マッチ」にまつわるあれこれをめぐります。
最終的には、オリジナルマッチをつくっちゃうんですよ?

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第10回 マッチ工場レポート#5 ブックマッチの痕跡を追って。

こんにちは、「喫茶店マッチ」のなかでも
とりわけブックマッチに惹かれている
ほぼ日乗組員のです。

「日東社」さんのマッチ工場見学も、
今回がラストです。

大西潤さんに最後にうかがいたいのは‥‥
そう、やっぱり、ブックマッチのお話です。

日本でブックマッチを最後まで作り続けた
「日東社」さんは2022年にその製造を終了されました。
もう、ほんとうに今後、
ブックマッチは作られないのでしょうか‥‥。

大西さん
ざっと見ていただきましたが、
ほぼ日さんからご注文いただいたマッチの
製造工程は以上のような感じです。
むかえ
ありがとうございました。
それで、あの、大西さん‥‥。
大西さん
なんでしょう? 
むかえ
さっき見つけてしまったんですけど、
あちら‥‥。
大西さん
どれですか? 
むかえ
天井からさげられているパネルのような。
大西さん
ああ、あれですか‥‥。

大西さん
以前、ブックマッチを作っていて、
もう機械はないんですが、
そのままになっていましたね。
むかえ
機械は、もうない‥‥。
大西さん
いまは製造していませんので。
むかえ
そうですか‥‥。
実は、「日東社」さんのことを
はじめて知ったのは、
「ブックマッチ」がきっかけだったんです。

ブックマッチ(第6回 マッチ工場レポート#1より) ▲ブックマッチ(第6回 マッチ工場レポート#1より)

大西さん
ああ、そうだったんですか。
むかえ
はい。
「日東社」さんは、
2022年に製造を終了されるまで、
日本でブックマッチを
作りつづけた最後の会社ですよね。
大西さん
そうですね。
むかえ
製造終了を知ったとき、
さみしい気持ちはもちろんあったのですが、
それまで製造していたのが
「日東社」さんだけだったことに驚きました。
製造を終了する理由はやはり‥‥。
大西さん
ええ、大きな要因としては、
受注数がすくなくなったことですね。
たばこを吸う人も減ってきてますし。

むかえ
それでもぎりぎりまで続けてこられたのは、
やはり最後の一社だったから‥‥。
大西さん
そうですね‥‥。
受注数は年々減ってきつつも、
作っているのがうちだけだったので、
作り続けてたんですけど、
2022年に終了しようということになりました。
むかえ
わたしの中では、ブックマッチといえば、
「日東社」さんというイメージですが、
創業当時から作られてきたんですか? 
大西さん
いえ、ブックマッチの製造を始めたのは、
1973年なんです。
むかえ
え‥‥意外です。
けっこう最近なんですね。
期間としては、50年くらい。
大西さん
ですから作りはじめたのは、
マッチの需要がだんだんと
すくなくなってきた時期なんですよ。
むかえ
なるほど。
ブックマッチは、喫茶店などのお店でもらえる
昔からの広告マッチだと思っていたのですが、
需要がすこしずつ減ってきた中で、
新しく作られたマッチだったんですね。
大西さん
そうですね。
広告マッチとして配りやすいし、
サイズも持ち運びやすいですしね。

ホームセンターなどで販売される並型箱のマッチたち。 ▲ホームセンターなどで販売される並型箱のマッチたち。

むかえ
‥‥ブックマッチを作っていた機械は、
どのあたりにあったんでしょう? 
大西さん
向こうのほうに。
ご案内します。

大西さん
このあたりでブックマッチを作っていて、
奥に機械がありました。

むかえ
ここで‥‥。
これ、機械が置かれていた場所ですか。

大西さん
そうです。
ブックマッチ製造機の、跡地ですね。

むかえ
跡地‥‥。

むかえ
‥‥気のせいだと思うんですけど、
なんだか、ブックマッチの気配を感じます。

むかえ
ブックマッチの機械があった場所に、
いま立っていること、噛みしめます‥‥。
大西さん
存分に噛みしめてください。
むかえ
はい‥‥。

跡地に落ちていた、1本のマッチ棒。 ▲跡地に落ちていた、1本のマッチ棒。

むかえ
‥‥すみません、もうすこしだけ
ブックマッチに思いを馳せたら、
帰りますので‥‥。
大西さん
大丈夫です。
むかえ
‥‥‥‥‥‥。
大西さん
‥‥‥‥‥‥。
むかえ
‥‥‥‥‥ありがとうございました。
大西さん、
本日は工場を見学させていただいて、
ほんとうにありがとうございました。
大西さん
こちらこそ、ありがとうございました。
こんなふうにマッチのことを思ってくれて
わたしたちもうれしいです。

ブックマッチ製造機、跡地にて。 ▲ブックマッチ製造機、跡地にて。

(最終回へつづきます)

2024-12-22-SUN

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