昨年(2023年)の6月、
渋谷PARCOの「ほぼ日曜日」で、
コマ撮りアニメ「こまねこ」最新作を、
25日間にわたって
公開撮影していただいたのですが‥‥。
そのとき撮っていたあの作品が、
このたび! うれしいことに!
全国ロードショーの旅に出るのです!
そこで、こまちゃんの生みの親である
合田経郎さんと、
こまちゃんを動かしつづけて20年、
アニメーターの峰岸裕和さんに、
いろいろお話をうかがってきました。
担当は「ほぼ日」奥野です。
峰岸裕和(みねぎしひろかず)
ストップモーション・アニメーター。1955年栃木県生まれ。
合田経郎(ごうだつねお)
アニメーション作家。CMディレクターとして演出家のキャリアをスタート。NHKキャ
- ──
- 渋谷PARCO8階の「ほぼ日曜日」で
『こまねこ』の最新作を
公開制作していただいたのが、
なんとなんと、
去年(2023年)の6月なんですよね。
- 合田
- そうなんですよ。
- ──
- ときの流れが信じられません。
- その後の今年4月、試写会で完成作品
『こまねこのかいがいりょこう』を
拝見しました。
最後のエンドロールのところで
「協力:ほぼ日」という文字を目にして
めちゃくちゃ感動しました。
- 合田
- 今回の作品をつくる
きっかけをつくってくださったのが、
ほぼ日さんですから。
- ──
- みんな、よろこんでいると思います。
こちらこそ、
本当にいい機会をいただきました。 - 自分のドワーフさんとのおつきあいを
振り返ると、2013年に、
峰岸さんに、
取材させていただいたのが最初なんです。
で、そのときまで自分は、
「コマ撮り」そのものに対しては、
そこまで興味がなかったと思うんです。
- 合田
- あ、そうなんですか。
- ──
- ただ、1日8時間くらい撮影して
たった「4秒半」くらいしか撮れない、
みたいな作業だと知って、
うわー、それはぜひとも
お話を聞かせていただきたい‥‥って。 - ある意味野次馬的根性でうかがったら、
峰岸さんのお話に引き込まれ、
さらには
「人間が人形を動かす」ということに、
得も言われぬ興味を抱いて‥‥。
- 峰岸
- ええ。
- ──
- 直後、文楽にどハマりしたんですよ。
- 峰岸
- あ、あのあとに?
- ──
- そうなんです。
いまでは公演があるたびに行ってます。
扉を開いてくださったんです。 - つまり、峰岸さんのお話がきっかけで、
人形劇、人形アニメ、
人間が人形を動かすことのふしぎさや、
その魅力に気づいたんです。
- 峰岸
- 本当ですか。
- ──
- その後、また別のジャンルなんですが、
いま日本の人形操演の第一人者である
山田はるかさんに、
お話をうかがいに行ったりもしました。 - 文楽でも人形操演でもコマ撮りでも、
人形を動かす、
通常動かない人形が動くということが、
マジカルで、不思議で。
そして何より、やっている人たちが
人形が大好きというのが伝わってきて、
みなさん、楽しそうにされていて‥‥。
- 峰岸
- 人形を動かすの、楽しいですよ(笑)。
- ──
- ですよね、きっと!
- 峰岸さんは、最初の『こまねこ』から、
もう20年も動かし続けてこられて、
いまだに、やっぱり「楽しい」ですか。
- 峰岸
- 楽しいですね。
- コマ撮りするねこの「こまちゃん」は、
合田さんが考えたわけですが、
最初の最初は、だいたい何歳くらいで、
こういう育ちで‥‥ってことを聞いて、
まずは「動かしてみた」わけです。
- ──
- ええ。
- 峰岸
- でも、それで動いたこまちゃんが、
合田さんのイメージに合っているのか、
最初は、わからなかった。
だから、どうですかって見てもらって。
- ──
- はい。産みの親の合田さんに。
- 峰岸
- たぶん「あ、こんな感じか」もあれば、
「へえ、そんなふうに動くんだ」
みたいな印象もあったと思うんですよ。 - おそらく、そういうことの積み重ねで、
こまちゃんの動きって、
徐々にでき上がってきたんです。
初期のころに比べたら、
自ら動いてくれるようになってますが。
- ──
- え、すごい。生命が宿るじゃないけど、
20年も動かし続けるって、
何だかもう、そういうことなんですね。
- 峰岸
- おもしろいことに。
- 最初の作品のはじめのシーン、
ワンカットめって、
こまちゃんが、鉛筆で絵を描いたり、
消しゴムで消したりしてるんですね。
- ──
- コマ撮りの絵コンテを、ですよね。
- 峰岸
- あのときの「たどたどしい感じ」を、
どこかに残していながらも、
いまのこまちゃんは、
自分がこう動きたいなというふうに、
自由に動いている感じがします。 - こんな感じがいいと思うよ‥‥って、
実際に言いはしないけど。
- ──
- そんな、かわいすぎる。
- 峰岸
- もちろんね、人形だから、
人間が動かさなかったら動きません。
でも、こまちゃんは
動いているのが自然というか、
写真つまり「静止画」で撮るときが、
いちばん難しいんです。 - ちょっとしたことに違和感を感じる。
写真を撮るときのポージングは、
ものすごーく時間がかかるんですよ。
- ──
- 以前、ドワーフのプロデューサーの
松本紀子さんもおっしゃってました。
峰岸さんのいないときに
「うさじい」の写真を撮ったところ、
どやしつけられましたと(笑)。
- 合田
- ぼくがポージングをしたんですけど、
ぜんぜんダメだったんです(笑)。 - でも、峰岸さんがポーズをつけると、
一気に「いきいきする」。
- ──
- アニメーターとは、生命を吹き込む人。
そんな峰岸さんでも、静止画は難しいんですね。
- 峰岸
- 動きのなかでは、刻々と
こまちゃんの感情も変わっていくから、
ちょっとしたシワなんかも、
まあ、そんなには気にならないんです。 - 写真では、それが「違和感」になる。
- ──
- 合田さんは、いかがですか。
初期のころを、あらためて振り返ると。
- 合田
- 最初は短編1本で終わる予定でしたし、
こんなに続編をつくるなんて、
もう、ぜんぜん考えてなかったんです。 - でも、続編をつくることになって、
ただの「コマ撮りをするねこ」だけでは
いられなくなって‥‥
毎回毎回のストーリーのなかで生きる
こまちゃん、という子になった。
その過程で、
だんだん性格も鮮明になってきました。
- ──
- こまちゃんとして、生きはじめた。
- 合田
- さっき、峰岸さんも言ってましたけど、
いまでは、
こまちゃんだったらこう動くよね、
こう考えるよねって、
ぼくらにもだんだんわかってきました。 - 最初は、そこが確立してなかったので、
「この場面は3歳くらいの子みたいに」
とか
「ここは、は9歳くらいかなあ」って、
年齢をヒントにしていたんです。
でも、いまは
「こまちゃん、いまこう思っているはず」
みたいなことを話し合ったり、
「だったら、こうしたほうが伝わるよ」
みたいに提案していただきながら、
こまちゃんを「動かして」いるんです。
- ──
- おお‥‥。
- 合田
- ただ単に「コマ撮りをするねこ」では、
なくなったんですよ。こまちゃん。
(つづきます)
2024-10-21-MON
-
最新作『こまねこのかいがいりょこう』
10月25日(金)より全国劇場公開!昨年(2023年)の6月、
渋谷PARCOの「ほぼ日曜日」で公開制作されていた
コマ撮りアニメが、10月25日(金)より
新宿バルト9をはじめ順次、全国劇場公開されます。
コマ撮りするねこ・こまちゃんの最新作で、
作品タイトルは『こまねこのかいがいりょこう』。
いいです。完成披露試写をふくめて、
もう何度も見たんですけど、いいです‥‥今回も。
過去作も同時上映されるので、
こまちゃん映画がはじめての方でも楽しめます。
さらには、今回の全国劇場公開を記念した展覧会が、
神保町のTOBICHI東京で開催中。
会期中の会場には
「本物のこまちゃん」がやって来てくれます!
屋根裏部屋のセットや小道具など、いろいろ展示。
「映画を見た」あるいは「これから見る」人には、
こまちゃんを撮影できるチェキを1枚プレゼント。
映画のチケット購入したことがわかるもの
(ムビチケの画面など)などを、ご提示ください。
かわいいグッズも並んでますので、こちらもぜひ。