
この漫画のもとになった投稿
先月、父の60年来の大親友が
一族を引き連れて遊びに来た。
ふたりとももう80だから!
こんなことはもうないから!
と、我が家も集まれるだけ集まって、
2人の妻、子ども、子どものつれあい、孫たちで
大宴会を開催した。
茹でたての蟹をほおばり、
鯨のように飲むものどもに釣られて
下戸の父も飲めぬ酒をうまい!
と飲み、なんとも素敵な夜だった。
今月のはじめ、
両親は信州の高遠へ桜を見に行き、
いたく感激して帰ってきた。
桜という木が好きで、
いろんな桜を訪ね歩いている父が、
「あんなに見応えのある桜は
なかなかないなぁ」
と笑うので、
わたしも昔見にいったよと
思い出話に花が咲いた。
木曜日、
時間ができたので、
実家に帰って
両親と手巻き寿司をした。
「よく食べる子と一緒に食べてると、
たくさん食べれるなぁ!
ここのところ、食が細くって」
と笑う父の横から、
「最近、息切れもするのよ」
と母が顔をしかめる。
年相応なのかもしれないけど、息切れは怖いよ。
連休入る前に病院行きなよ。
と、くどくどお説教したのはわたしなんだけど、
土曜日、ちかくの病院に行った父は
とんでもない検査結果を叩き出し、
月曜日、大きな病院に精密検査に行って、
そのまま大学病院に入院した。
何か起こってもおかしくない値なので、
少しでも違和感があったら
すぐに病院に連絡してくださいと
念を押されていた日曜日、
何かできることはあるかと真剣に考えた。
やってあげたかったこと、
言っておきたいこと、
入院はもう確実で、
点滴も薬もなく一緒に過ごせるのは、
今日が最後になるかもしれない。
父の手が温かいのは、もうあと少しかもしれない。
後悔しないように、
心が残らないように、
一生懸命、本当に真剣に考えて、
考えて、
笑ってしまうくらい何も思い浮かばなかった。
だって。
兄弟の倍、実家に住んで。
「お父さんには何言ってもいいと思ってるだろう!」
と笑われるくらい父に甘えて。
かろうじて独立してはいるけれど、
「〇〇、一緒に食べに行かない?」
「今度、〇〇へ行くけど、行く?」
ってお誘いにホイホイ乗って、
しょっちゅう会っているのだもの。
「お父さんにしてあげたいこと、
何も思いつかない」
「わたし、しあわせな娘だね」
と言ったら、
「一晩考えたけど、
やり残したことが何もないんだよなぁ。
順番だしね」
と父が笑うので、
目の玉がとけるくらい泣いて、
泣いて、
おなかがすいたので、
一緒に蕎麦を食べに行った。
偶然休みをとっていて、
お天気がよくて、
今日、
こうやって過ごせるわたしたちは、
しあわせな親子だなぁと、思った。
涙は止まらないけれど、
お別れに向けて
時間がやさしく過ぎますように。
(北の庄/「雲のうえFM」への投稿より)
2026-10-04-SUN
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エピソード、募集中です。
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「今日の小ネタ劇場」とは
2005年から連載を開始した読者投稿コンテンツです。2022年時点ですでに17年以上、「今日のコドモ」「今日のダンナ」「今日のじーばー」「今日の気になるあいつ」….などの20以上のカテゴリから、日替わりで毎日欠かさず3ネタを更新してきました。アーカイブを残していないため、その日のネタは、その日にしか読めません。2016年には、過去の傑作から選りすぐって書籍化もされました。ほぼ日に来たら、まずはここからという読者も多い、大人気のコーナーです。今日の「今日のコドモ」は、こちらからどうぞ。
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今日マチ子
漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に4度選出。戦争を描いた『cocoon』は「マームとジプシー」によって舞台化。2014年に手塚治虫文化賞新生賞、2015年に日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞受賞。コロナ禍の日常を絵日記のように描いた近著『Distance わたしの#stayhome日記』が、2022年1月『報道ステーション』にて特集された。
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漫画:今日マチ子
編集:奥野武範(ほぼ日)
デザイン:杉本奈穂(ほぼ日)
感謝:「今日の小ネタ劇場」を愛する
すべてのみなさま
