だれもが着られ、だれひとり同じにならない。
服が、着る人に寄り添い、その人そのものになる。
2014年にスタートしたMITTANは、
そんな思いでよい生地を探し、あるいはつくり、
アジア圏の民族服に倣って、
ゆったりと軽く、着心地のよい服を
つくりつづけてきました。

流行の服とちがい、MITTANはシーズンごとに
デザインのテーマを打ちだしていません。
ゆえに2014年の服と、2025年の服を合わせても
なんの違和感もない。
そして修繕を積極的に引き受けていますから、
古くなった服を修繕することで、
自分だけの服に育っていくたのしみもあります。

このコンテンツでは、
MITTANの3人の愛用者に話を聞きました。
みなさんに共通していたのは、
服を「信頼できる道具、相棒」のようにとらえていること。
東京と京都できいたお話、3回にわけてお届けします。

>01 小林和人さんのプロフィール

小林和人(こばやし・かずと)

小林和人(こばやし・かずと)
手仕事の味わいや背景を感じられる品揃えの
吉祥寺「OUTBOUND(アウトバウンド)」と、
機能的で美しい生活雑貨をそろえた
東京・代々木上原の
「Roundabout(ラウンダバウト)」の店主。
自店の運営以外にも、富ヶ谷の日用品店
「LOST AND FOUND」(ニッコー株式会社)を
はじめとした商品選定業務、
各種媒体での執筆やスタイリング、
商品企画監修なども手掛ける。

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>02 谷中友さんのプロフィール

谷中友(たになか・とも)

料理人。
京都市内の堀川商店街にあるワンオペレーションの
ワインバー&レストラン「TOMO」店主。
京都生まれ。
高校卒業後、京都市内のイタリアンに就職、
シェフとオーナーと3人で50席を切り盛りする店で、
1年でメインの料理を任されるように。
4年在籍ののち、イタリアのシエナへ渡り1年修業。
いったん帰国し、フランスへ渡り、南仏とパリで1年修業。
イタリアでもフランスでも副料理長を務めるまでに。
独立準備のため帰国し京都のイタリアンに勤務するが、
30歳のとき「ふと思い立って」オーストラリアへ。
メルボルンとパースで1年を過ごし帰国。
大阪の店に勤めながら独立準備をし、
2021年に地元の京都に「TOMO」を開く。
店のある堀川商店街は、戦後の復興事業で建てられた
鉄筋コンクリート造の店舗付き集合住宅で、
その1Fに入る「TOMO」は、
3テーブルで8席という広々とした店。
当時のしつらいをいかしながら、
アンティークと造作家具が混在する、
シンプルながら居心地のよい空間となっている。

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>03 清水香那さんプロフィール

清水香那(しみず・かな)

ギャラリー/カフェ「STARDUST」オーナー。
徳島生まれ、大阪育ち。
オーストラリアのゴールドコースト、パース、
アメリカのバークレー、仙台を経て、
2011年に京都へ移住。
2015年7月、京都市北区に「STARDUST」を開く。

清水さんがSTARDUSTのために選んだアイテムは、
洋服、食器、工芸、アクセサリー、食品など多彩。
洋服ブランドはMITTANのほかにCOSMIC WONDER、
BLACK CRANE、JAN-JAN VAN ESSCHEなど。
食品にはフランス・リヨンの
CHA YUAN(チャ・ユアン)のフレーバーティー、
熊本のアンナプルナ農園の紅茶、
京都の加茂農園の無肥料・無農薬のお茶、
東ティモールのオーガニックコーヒー豆も。

著書に『クリスチャニア 自由の国に生きる
デンマークの奇跡』がある。

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01 小林和人さん

「志ある若者がいます」

MITTANを知ったのは、2013年に
谷由起子さんがラオスの布の展示を
OUTBOUNDでやってくださったときに、
「三谷武さんという志ある若者がいる」と
教えてくださったんです。

「小林さんに服を見てもらいたいとおっしゃってまして、
よかったらちょっと時間をとって差し上げてください」と。

それで三谷さんがスーツケースに服を入れて
ガラガラと運んで、来てくださったんですよ。
それで「こういうものを作ってるんです」っていうのが
ご縁のはじまりです。

その時から三谷さんは、
長く着続けることのできるものをつくる、
とおっしゃっていました。
当時、そういうことを言う服飾の人は
珍しかったんです。
その頃感じていたのは、
多くのアパレルって、1シーズンが終わったら、
次のシーズンのコレクションを発表し、
そのことで前のシーズンの製品が
自動的に陳腐化するというか、
ちょっと古臭く見えてしまうような
産業のつくりになっているということ。
そんな中、最初から定番志向で、
ずっと着ていける服をつくるって、
とても画期的なことに思えました。

MITTANが開拓した生地。

そして服を扱っている者として新鮮だなと思ったのは、
使っていた生地のことです。
リネンとラミー、
つまり亜麻(あま)と苧麻(ちょま)ですね、
半々で紡績した糸で織った生地を使っていたり、
今、私の着ているこの大麻素材のシャツもそうですが、
それまであんまり身に着ける機会のなかった素材を
積極的に採用していました。
私にとっても、MITTANがそういうものに触れる
きっかけとなったんです。

苧麻も大麻も、日本の庶民のものとして
作られてきたけれど、もうすでに
柳田國男の書く『木綿以前の事』の世界として
あまり使われなくなっていた素材ですが、
ぼくはあまり詳しくないのですけれど、
もしかしたら日本に昔からあった苧麻や大麻のほうが
環境に与える負荷が大きくないのかもしれないし、
実際に大麻シャツを着て実感したのが、
薄手の素材なのに、かなり丈夫ですから、
そういうところを三谷さんは評価したのかな、と。
大麻は引っ張りと摩擦に対して非常に強く、
肌と接触したときにちょっとヒンヤリして、
夏でも涼しいんですよ。

リペアと再販というこころみ。

そして、MITTANの体制ですごいなと思うのが、
自社工房でリペア(修繕・染め直し)と
再販のシステムをつくったことですね。
どんなに破れても修繕・染め直しができるし、
ぼろぼろになっていても定価から算出した規定価格で
買い取ってくれるしくみです。
ともすれば新しい製品が売れるチャンスを
逃してしまうことになり得るかもしれない提案ですよね。
でもそれをちゃんと持続できるような設計にして、
じっさいに継続している。
すごいなと思うんです。

私のこのシャツもかなりリペアしてもらっていて、
新しいものと比べると、こんな感じです。

最初は、こんなふうに微光沢があるんですが、
着ていくうちに馴染んでくる。
何回か染め直しているんですが、
そうすると、素材の違う糸でステッチを入れたところが
生地と一体化していったり、
全体の質感も変わるのがおもしろい。
このシャツの場合は、
光沢が抑えられてマットな表情へと変わり、
とろみも増していきました。

話が戻るんですけれど、
三谷さんが門を叩いてくれたのがご縁で、
これはもう、ぜったいに、
OUTBOUNDらしいスタンスのものだと感じ、
扱わせてもらうことになりました。

MITTANが世の中に出る最初のコレクションでしたが、
最初からOUTBOUNDの空間に馴染みました。
そのときメインだったのはカディシャツ(*)です。

(*)カディとはインドの西ベンガルで、
経糸・緯糸共に手紡ぎ、手織りで作られた綿生地。
マハトマ・ガンディーがインド人の自立をうながす
運動の象徴として広めたもの。
MITTANでは初期からの定番商品のひとつ。

そして来てくださるお客さまの目にも留まり、
「これ、いいね」と、
じわじわ、売れていくようになりました。
自分ももちろん着るようになり、
徐々に徐々に、自分の着る服の割合の中で
MITTANの占めるウェイトが
どんどん増えていったんです。

私の好きなパンツ。

パンツは、初期のものは丈が短めだったので、
最初は穿いていなかったんですよ。
自分はあんまりくるぶしを出して
穿くってことがなかったものですから。
でもそのうち「亜麻苧麻ロング」が登場して、
そこから穿きだして、
より、ググググッと、MITTANの比率が高くなって。

このパンツ、何度修繕をしたことでしょう。
4回かなあ、5回‥‥それ以上かもしれません。
「穿き倒している」というくらい
ずっと穿いているパンツで、
「たたく」というんでしょうか、
破れたところに裏から布をあてて、
生地に近い色の糸で破れた部分を覆い隠すように
ミシンを往復させて縫い重ねているんです。

 

この個体は、亜麻苧麻ロングが登場した
最初の年から穿いてます。
たしか、2018年かな。
だからもう7年穿いているわけですね。

これはもう、「店主の死活パンツ」でして、
もうこれがないと回らないっていう、
そういう位置づけになっているんです。
どこに行くにも穿いています。

なぜ「死活」かというと、
素材の安心感ですね。
頼りがいのある厚みと、
自分にとって大事なフルレングス(長さ)、
そしてちょうどいいテーパード(裾のすぼまり)
具合なんですよね。
今でこそ、お客さまの嗜好として
ワイドパンツを好まれる傾向があるんですけども、
自分はテーパードのほうが落ち着く。
これはもはや昭和生まれの、
世代的な好みかもしれないです。

そのうち、OUTBOUND用に、
MITTANに別注をさせてもらうようになりました。
たとえばこの亜麻苧麻ロングって生地が厚手で、
最近の夏は暑すぎて穿けないんです。
だからこのシルエットで、薄手の大麻素材で
作ってもらったパンツがあるんです。
それは翌年からMITTANのレギュラーになったことにより、
色のバリエーションが広がったので
提案してよかったな、って。

ウエストがゴムというのも‥‥じつは私、
昔は「ゴムの入ってるパンツを穿いたら終わりだ」
って思ってたんですよ(笑)。
だけど1回穿いちゃうともう、戻れない。
ただMITTANのパンツのいいところって、
ゴムと紐、あとベルトループもついてるので、
ちゃんとベルトをしてシャツをインしてもいい。
私はポケットに携帯や鍵とか
いろいろ入れてると重くなるので、
たとえば夕陽に向かって駆け出したりするとき、
ベルトがないとずれてきちゃったりする。
だから基本はゴムなんですが、
ベルトはするようにしているんです。

ただの洋服ブランドではない。

MITTANも最近は、
それまで三谷さんがひとりでデザインをされてた体制から、
若いデザイナーの方を入れて、
チーム制になったんですよね。
三谷さんは俯瞰して方向性を決めていく、
っていうスタンスだと思うんですけど、
それによって、亜麻苧麻素材のものも
それまでテーパードの「亜麻苧麻ロング」しか
なかったところから、
「亜麻苧麻ワイド」っていうタイプが出たり、
どんどん、いい意味での柔軟性も出てきて、
取り扱いされるお店の幅も広がりましたよね。
結構若い方がよそのお店や、
YouTubeで紹介しているのを見て、
MITTANを知ってOUTBOUNDに来てくださったり、
もちろん「ほぼ日効果」もあると感じますよ。
みんなが全体でMITTANを盛り上げていくという、
そんな感じになっているように思います。

それを考えると、MITTANにとって服は
単なる商材ではなくって、
これから服はこんなふうにあるべきだよ、
私たちはどんなふうに付き合っていくべきだろうか、
ということを
私たちに教えてくれるような存在なのかもしれません。

OUTBOUNDは自分が品物を選んでいるので、
どうしても男目線になるんですけれど、
最近はワンピースや巻きスカートも充実してきましたので、
展示会のときはなるべくそういうのも、
積極的に自分で着用してみるんですよ。

そうそう、先日、やっと京都のMITTANをたずねました。
三谷さんたちに工房ツアーをしていただいて、
ほんとにちゃんとしてるなと思ったのが、
働く環境がすごおくちゃんと整えられいるってことでした。
作業するスペースも広々としてますし、
お直し工房もかなり光が入ってきますし。
オフィスの壁一面に棚があって、ちゃんと整理されていて。
これ、OUTBOUNDの真逆だなと思って(笑)。
うちは、売り場に全神経を集中してるんで、
反動じゃないですけど、バックヤードが永遠に片付かず、
皆んなに「けもの道」と呼ばれてますから。

そうそう、京都のMITTANを訪ねたとき、
スタッフに見覚えのあるお顔の男性の方がいらして、
そのかた、OUTBOUNDのお客さんだったんですよ。
なんとMITTANに就職していたんです。
もしかしたらうちがきっかけになったのかな、
と思って、うれしいなと思って。
そんなふうに人生に影響を与える服ってすごいですよ。

考えてみれば、着るものっていちばん肌に近いですし、
もちろん外界からの情報で大きいのは
視覚だったり聴覚、嗅覚だったりすると思うんですけれど、
触覚ってそんなに意識の上にはのぼることがない。
けれども無意識に強く作用してるんじゃないかのかな?
と思うんですよ。
何に触れてるかって非常におっきいことなんじゃないか。
普段はMITTANを着て
そういうことを考えることってないですけれども、
ここ10年ぐらいでいちばん触れてるのが
MITTANの衣服だと思うと、結構無意識、
MITTANの服が自分に与えてる影響って、
もしかしたらおっきいのかもしれないなって思います。

三谷さんにつくってほしいもの。

最後に、三谷さんに
復刻をお願いしたいアイテムの話をしてもいいですか。
綿の、切りっぱなしっぽい感じのTシャツです。
半袖と長袖とがあって、素材が超長綿なので、
どっちかっていうと秋冬寄りなんですけれども、
上に着るシャツの第一ボタン開けたときに、
下に着たTシャツのリブが見えることがなくて、
とてもいいんですよ。
それが廃番になって久しいので、
MITTANのインナーウェアが充実していくと
いいなって思ってます。

MITTANって、「らしいシルエット」もあるんですが、
いまや、リペアしながら、時には買い取って再販して、
そういうブランドの仕組みそのものが
MITTANにおけるもっとも強い独自性だと思います。
なのでもしかしたら今後、
その中でいろんなテイストの服があるという、
そんな感じになっていくのも面白いかもしれません。

2025-12-01-MON

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  • 販売時期 2025年12月4日(木)午前11時販売開始 販売方法 数量限定販売 ※なくなり次第、販売を終了します。 出荷時期 お申込み後、1~3営業日以内に出荷。

    販売時期 2025年12月4日(木)午前11時販売開始 販売方法 数量限定販売 ※なくなり次第、販売を終了します。 出荷時期 お申込み後、1~3営業日以内に出荷。